「ラブストーリー豊作年に埋もれてしまいがちな心温まる良作」大きな玉ねぎの下で あおねるさんの映画レビュー(感想・評価)
ラブストーリー豊作年に埋もれてしまいがちな心温まる良作
女優の桜田ひよりさんのお芝居が好きで、映画の公開発表があった時にやや気になっていましたが、ラブストーリー豊作の年で騒がれていたこともあり、個人的に埋もれてしまっていた作品でした。
ふと思い出して、機会があり鑑賞。
音楽には疎く、恥ずかしながらこの作品のあらすじを読んで初めて、爆風スランプさんの名曲であることを知りました。
その後映画鑑賞前にたまたま音楽番組でご披露されており、作品を観るなら先にしっかり聴いておこうという気持ちで拝見しました。
近年ヒット曲を題材にした作品が増えていますが、楽曲というのは不思議なもので、作品を観る前と後で、作品の印象がガラッと変わるんですよね。
鑑賞後の場合、歌詞が物語のあの部分を表現している、という理解が生まれていることが感情に大きな影響を与えます。
初めは気が合わないところからスタートして、いつの間にか誕生するカップルって実際にいますよね。それってちゃんと相手のことを知らないから、見た目とか仕草とか最初に会った時の印象で勝手に「好き」とか「嫌い」とかに分類しちゃってるだけで、興味関心がなく知ろうとしなければ一緒になることはないし、逆に少しでも相手を知ろうと歩み寄ればそれが良い出会いになったり。
相手を知るきっかけがあるかどうかの問題もありますし、第一印象から生理的に受け付けないってパターンも僕の経験上なくはないので一概には言えませんが、それが恋に発展するとかしないとかの問題以前に、もしかしたら知ることができたかもしれないその人の良い部分を知らずに終わってしまうのは寂しいなって、この作品を通して考えさせられました。
好きの自覚は丈流(神尾楓珠)より美優(桜田ひより)のほうが早いって認識ですが、好きだと自分でハッキリ理解した上で嬉しさを隠すことのない美優のバイト先での姿は無邪気で可愛らしいです。
桜田さんって普段ツンツン系や男前系の役柄が圧倒的に多いので、お芝居上たまーに見せるきらきらした笑顔が素敵だなと感じます。
恋する女の子は可愛いとよく言いますが、とても上手く表現されていて素晴らしいです。
そしてこれまた上手く挟んでくるすれ違い模様や、過去と現在の伏線。
丈流の両親が誰なのか、過去のあの人は誰だったのか、現在でそれを察した瞬間から、過去と現在どちらにおいても「すれ違い」がもたらす見えない何かが人の運命を大きく左右することに気付かされました。
配役面でいうと桜田ひよりさんと神尾楓珠さん以外のキャストの方々を知らないまま鑑賞にのぞんだので、個人的に嬉しいことが。
余談にはなりますが、桜田さんの作品で一番好きな作品がドラマ「神様のえこひいき」なんです。
そのメインキャストだった藤原大祐さん、窪塚愛流さんが出演されていて、今回の映画で桜田さんと直接の絡みはなかったとはいえ、御三方がまたひとつの作品に集結していることが、僕にとっては嬉しいサプライズでした。
そうそう、お芝居といえば山本美月さん。僕の中で山本美月さんはお芝居が下手な方のまま時が止まっちゃってたんですけど、自然なお芝居になっていてスッと心地よく見ることができました。
役柄も合っていたと思います。
親や親の身近な人達にとっては過去から現在の、子供にとってはこれから先の。両方の視点から心温まる友情と純愛の物語です。
得るものがたくさんあり、素敵な作品でした。