「同世代の青春を応援しつつ、子ども世代の恋愛にドキドキするのが本作の醍醐味」大きな玉ねぎの下で Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
同世代の青春を応援しつつ、子ども世代の恋愛にドキドキするのが本作の醍醐味
2025.2.9 イオンシネマ久御山
2025年の日本映画(115分、G)
原案は爆風スランプの楽曲『大きな玉ねぎの下で』
文字を通じて絆を深め合う男女を描いたラブロマンス映画
監督は草野翔吾
脚本は高橋泉
物語の舞台は、神奈川県鎌倉市
大学4回生の堤丈流(神尾楓珠)は、いまだに就職先も決まらずに、週末の昼はカフェを営んでいるバー「Double」で働いていた
母(西田尚美)は病気のために入院していて、父(原田泰造)とは疎遠がちになっていた
ある日のこと、丈流は親友の喜一(中川大輔)と小柴(伊藤あさひ)と一緒に居酒屋にて愚痴りあっていた
だが、その丈流たちの会話を聞いていた美優(桜田ひより)は、どうしても言いたいことがあって、丈流に「あなたは何がしたいの?」と聞いてしまう
いきなり知らない女に訳のわからないことを聞かれて驚くものの、不穏な空気を宥めようとした喜一はその場で倒れてしまう
低体温症になりかけているとのことで、素早く美優が応急処置を施し、大事に至ることはなかった
美優は看護学校の実習生で、その知識が活かされることになったのだが、実は彼女の実習先の病院に丈流の母が入院していた
気まずい再会をする二人だったが、どうしても喧嘩腰になってしまい、またもや不穏な空気が流れてしまった
物語は、夜のバーで働いている丈流が、店長(休日課長)から昼のカフェとの業務連絡を取るように言われるところから動き出す
連絡ノートのようなものを用意し、そこに共同備品の発注のことなどを書いていたが、丈流がアーティスト「a-ri(asmi)」の歌詞の一部を引用したことによって、親睦が深まっていく
だが、お互いに相手のことを探ることもなく、誰かを想像しながら、筆を走らせていくのである
映画は、現代パートの奥底に過去パートが存在し、この二つの恋愛は直接的には関連しない
ネタバレはしない方が良いので詳しくは書かないが、あるキャラの両親に付随する物語となっていた
それが丈流と美優が聞いているラジオに登場することによって、思わぬ関連が生まれる、という構成になっていた
個人的には結びつけ過ぎかなと思ったが、これぐらい交友範囲が狭いのもあるあるなのかなと思った
映画における一番の難題は「サンプラザ中野くんを探すこと」だが、本当に一瞬だけ登場していた
ウォーリーを探せレベルに難易度が高いが、それも映画の一興なので、バラさずに伏せておいた方が良いのかもしれません
いずれにせよ、落ち着くところに落ち着くという物語で、勘違いが生むすれ違いも切ない
ナビゲーターのTaijyu(江口洋介)の語りは過去パートの結末が紡ぐ言葉で、それが二人に伝わるのは良かったとおもう
二つのパートの切り替えがうまく、時系列の混同もさせないので見やすい映画となっていた
脚本の質が高く、30年前と今とをうまく繋げているのだが、やはり30年前を知る人向けの映画なのかな、と感じた
同世代の青春を応援しつつ、子ども世代のすれ違いを応援したくなる映画なので、若年層には響きづらいのかもしれません