「『開運!なんでも鑑定団』などに対するアンチテーゼなのか」海の沈黙 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)
『開運!なんでも鑑定団』などに対するアンチテーゼなのか
2024年映画館鑑賞112作品目
11月30日(土)イオンシネマ石巻
通常料金1800円−dポイント300円
監督は『ホワイトアウト』『沈まぬ太陽』『夜明けの街で』『柘榴坂の仇討』『空母いぶき』『Fukushima 50』の若松節朗
脚本は『月曜日のユカ』『ブルークリスマス』『駅/STATION』の倉本聰
粗筋
東京美術館で世界的に評価が高い画家田村修三など有名な日本人画家の展覧会が開催された
文部科学大臣も訪れ田村修三とその妻安奈や美術館関係者迎えるほどのイベントだった
評論家が絶賛するなか修三1人は自分の作品のはずの「落日」をふと見た途端に異変を感じしばらく釈然としなかった
改めてじっくり「落日」を観察した修三は贋作だと断定する
慌てた美術館関係者や主催した大日新聞関係者がどうか御内密にと修三に頼み込んだが画家の両親から別の新聞に事実をバラしてしまった
贋作の「落日」を東京美術館に貸し出した貝塚市は本物と騙され3億円で買い上げてしまった責任を取り貝沢市立美術館館長村岡肇が自殺した
贋作は修三のかつての教え子で破門された津山竜次によるものだった
海外の有名画家の作品も多く贋作を作り竜次はインターポールからもお尋ね者になっていた
TVドラマの脚本の印象の方が強すぎる倉本聰だが映画の脚本もやっている
大きなスクリーンでいきなりドアップの小泉今日子
リアルタイムで『なんてたってアイドル』や『艶姿ナミダ娘』を歌番組などで鑑賞していた世代からすれば見るに耐えられないが「美とはなにか?」というテーマを考慮するとすぐにそれも見慣れてくる
銭天堂の天海祐希も特殊メイクで二重顎だしどうってことはない
石坂浩二の老獪な芝居が良い
本人からしても絵を描くのが趣味のためか役作りに役立っているようだ
主人公はモックン演じる津山竜次だがなかなか出てこない
無名な絵描きだが彫り師として刺青は海外でも高く評価されている
末期の肺癌で余命わずか
役作りでげっそりと頬がこけて痩せている
褒め言葉としては適当じゃないかもしれないが舞台演劇のような激しい大きな表現で熱演している姿はかなり好感が持てる
海難事故で亡くなった漁師でもあった両親に想いを馳せ描かれた「迎え火」は製作途中だけ見れば様々な色の絵の具を叩きつけたリヒターのようなわけのわからん絵の印象を与えたが完成すると見事なものだ
モックンとの共演はもしかしたら周防監督の『シコふんじゃった』以来かもしれないベテラン清水美砂
平凡な男性諸君には嬉しいお知らせだが彼女がうつ伏せに寝そべった状態の全身ヌードが拝見できる
しかし嘘っことはいえ刺青姿なのでドリフのサウナやお礼参りのコントでびびってしまう人は向いていないかもしれない
なぜかあっさり海で自殺してしまうのだがそれは全くの意味不明
その部分は旨いビールを飲みながらほろ酔い気分で脚本を描いてしまったのかもしれない
倉本聰クラスになると誰も文句は言えない
日本テレビの女性脚本家とは格とか立場とか全くレベルが違うことくらい社会的常識が少しでもあるネット民なら理解できるはずだ
市民の血税で入手し自信を持って貸し出した美術品が画家本人に贋作認定され大ピンチで鬼気迫る貝沢市民美術館館長を演じた萩原聖人の芝居も良い
本人が美しいと思えば鑑定者がなんと言おうとホンモノなのかもしれない
自分の部屋に飾って毎日うっとり眺めれば良い
ノープライスなだけだ
小泉今日子にしてもそう
アイドルの時代にはアイドル時代の良さがあり枯れ果てた老婆にもそれなりの叙情があり愛嬌たっぷりの若い頃には出せない人間味溢れた味を出してる
皺の一つ一つまで美しいと高評価する人もいるだろう
飛び降り自殺して早死にしたアイドルを思えば長生きしてるだけファンからすれば有難いことだ
配役
かつての天才画家で今は小樽で父親譲りの彫り師をしつつその傍ら贋作作りをしている津山竜次に本木雅弘
津山竜次の少年期に田村奏多
高校時代の小島佳大
修三の妻で竜次のかつての恋人の田村安奈に小泉今日子
安奈の高校時代に小野晴子
世界的にも高名な画家の田村修三に石坂浩二
美術愛好家または津山先生の番頭を名乗る元料理人の碓井健司に中井貴一
竜次からほぼ全身に刺青を彫ってもらった小料理屋「風花」の女将の牡丹に清水美砂
竜次を慕う「マロース」のバーテンダーのあざみに菅野恵
竜次の主治医で彼のために便宜を図る半沢三郎に村田雄浩
美術鑑定の権威で元中央美術館の館長の清家に仲村トオル
東京美術研究室のスタッフの福原涼子に小早川真由
清家と親しい記者でドガの作品に詳しいなど美術の知識にも精通している伊吹に三浦誠己
大日新聞の局長の丸山に寺泉憲
貝沢市立美術館の館長の村岡肇に萩原聖人
貝沢市の副市長の大井誠に久保隆徳
「落日」を所有していた画商の杉田勝に田中健
文部科学大臣の桐谷春彦に佐野史郎
修三いきつけのスナックのママに三船美佳
安奈の占い師に津嘉山正種
東京美術館の館長の小原に中村育二
修三の秘書の水野に伊藤洋三郎
修三の弟子の木内に舘野将平
会見の記者に森本のぶ
会見の記者に岸端正浩
小樽の漁師の源三に東誠一郎
小樽の漁師の万次にみずと良
小樽「マーロン」のバーテンダーに土居優癒
竜次を追う刑事に川島潤哉
蝋燭職人でもある田村安奈の弟子の佑子に秋里由佳
安奈の担当美容師に名倉七海
諏訪湖で成人男性の死体を発見する少年に柳下晃河
諏訪湖で成人男性の死体を発見する少年に竹内一加
TVリポーターの秋田有紀に堀井美香
竜次の愛犬ゴヤにMar
マルセル・デュシャンの『L.H.O.O.Q.』のように模写した絵葉書のモナリザに鉛筆で髭を書いた代物が芸術作品として高く評価されるわけですからこのジャンルはわからないことが多いです