劇場公開日 2024年11月22日

「数日経っても余韻が残るから良い映画だと思う」海の沈黙 takkongさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5数日経っても余韻が残るから良い映画だと思う

2024年11月27日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

幸せ

セリフも説明も少なく、俳優の表現力にのみ語らせてあとは観客の理解力と想像力に丸投げする映画です。
若くてわかりやすい文芸作品や娯楽映画を楽しむ人にはまったく面白くないと思います。おそらく若者でこの映画に良い評価をつける人はいないのではないか、そもそもキャスト的に見に行かないだろう。

しかし、ある程度人生経験が深まり、人生の終わりを時折意識するようになった人々にとっては、若き青春の日々を共にした俳優らとともに、忘れかけてた傷となって残る人生の後悔ややり残した詫び、悔い、それでも時を経て美しく塗られかけたその思い出全てそのままを同時に受け入れて映像とどこか重なる自分自身の人生のやり残しに思いを馳せる映画表現になっていて、つまらないと思う人はいないのではないかと思わされます。最後まで見てしまうだけのよい緊張感もあるし。

映画としては十分に完成されてるけど評価は分かれるとも思います。倉本聰ならもっと笑える要素を必ず入れてくるはずなのに、これはそうではない。その点、これは倉本聰に私物化された脚本なのかなと思います。彼にとってもやり残した思い残した何かがここに反映されていることは容易に想像できるし、ライターの書くなにかにそう書いてあるし。だが、その文面通りとは限らないさらに何かがあるんだろうなと思いますね。

役者はよかった。高倉健の晩年の映画のように、ほんのわずかなしわやまぶたや口の動きに、肩や足や腕の動作に言葉ではないもっと直接的な複雑な情緒を感じさせます。熟練でもあり、脚本の結果でもあり視聴者の想像力でもあり、それらの合作としての素晴らしさ。ただ一人若い彼女の肌は5歳で触れたい、25歳で触れたい、55歳でもしも若返るならもう一度触れてみたい肌だった。

若者ウケはしないだろうなと思いながら見て、終わりまで見てやはり若者には受けないなと思いながら、3日たってもどこか余韻が残ります。わかりやすく面白いわけじゃなかった。でも残るのだからこれは本物なんだろう。すでにもう一度みてみたい気持ちになっています。

ただ神は細部に宿る。1箇所だけ細部に手抜きがあったから星は削ります。たった1箇所の作り込みの甘さが映像美術への没入を阻害し、現実に引き戻す。あれがなければ緻密に完成された作品として記憶に残せたのに。

takkong
m3333さんのコメント
2024年11月27日

たった1箇所はどこの部分でしょうか?
気になります

m3333