ノーヴィスのレビュー・感想・評価
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まさに“新鋭”監督の登場。尋常でない切れ味に心を刺されるよう
「ノーヴィス」で監督デビューしたローレン・ハダウェイは1989年生まれ。映画の音響編集とミキシングでキャリアを築き、まだ20代半ばの2016年に自ら長編の脚本を書いて監督になると決意し、その5年後の2021年には実現させたという。自身が大学時代ボート競技に没頭した体験に基づくストーリーからもうかがい知れるように、その意志の強靭さは並大抵ではない。
主人公が常軌を逸した自己研鑽で技や芸を極めようとする筋は、大勢が指摘する通り「セッション」や「ブラック・スワン」を想起させる。ただしこれら2作は終盤のハイライトとして晴れの舞台が用意されていたのに比べると、本作の競い合いや勝負はボート部内のレギュラー争いや地域レースにとどまり、従来の定石からすればカタルシスに欠けるように感じるかもしれない。
自身の肉体を徹底的に追い込む割にどこにも行き着けないような、内にこもって視野狭窄になる感じ、生産性や発展性に乏しい生きざまは、しかしだからこそ、旧来の理屈や常識にとらわれない、新しい作り手ならではの先鋭的なセンスなのだろうかとも思わせる。
そしてまた、どんな分野であれ頂点を目指すような人は狂気と紙一重の精神状態で自らを律するのだと思い知らされ、鑑賞しながらもし自身がこんな強迫観念にとらわれてしまったらと想像すると心がグサグサ刺されるように痛み、映画の世界から解放されると安堵して自分は凡庸でよかったなどとしみじみするのも情けないながら正直な心持ちなのだった。
凄まじい執念に見入ってしまう
これはガツンとやられるというか、精神にグイグイ浸透してくる力作だ。初心者や新米を表すノーヴィスという言葉同様、主人公アレックスは女子ボート部に入り、観客と同じ目線でその特殊な競技世界を体に馴染ませていく。かと思いきや、序盤の段階ですでに我々は彼女の異質さに気づかされる。過酷なトレーニングを自ら選び取り、異様な執念で自らを追い込むその姿。ボートだけではない。学業に関してもこだわりは群を抜く。まるで立ち止まると死んでしまうと言わんばかり。本作においてアレックスが心の内を吐露する事はほぼないが、夜明け前の青みがかった映像、研ぎ澄まされたサウンドデザインが精神世界を効果的に投影する(本作で監督デビューしたハダウェイは『セッション』などのサウンドエディターとして知られる)。そして、主演のファーマンといえば誰もが「あ、あの人!」と驚くはず。表情や体が変化していく役作りといい、凄い俳優に成長したものだ。
狂気と執着の果てに
ラストが何か吹っ切れた表情で印象的。
何故、彼女がボート競技を選んだのかはわからないが全てにおいてNo.1にならないと気が済まない性分らしい。だがボート競技は集団競技で個の力よりもチームワークが重要。そんな中、彼女はタイムやレギュラーメンバーに執着するあまりオーバートレーニング狂に。周りの「肩の力を抜いて」がわからないらしい。これってある意味、ホラーだと思う。
努力が実らないスポ根映画として、素晴らしい作品だった。 これだと生...
努力が実らないスポ根映画として、素晴らしい作品だった。
これだと生ぬるいけど、『モンスターズ・ユニバーシティ』を想起した。マイクは努力をするのに自分の限界を悟ったら、諦めて己にできることをするという選択をとった。ただ、この主人公は違う。自分の心身を痛め続けてでも狂気的にボートを漕ぎ続ける。正直共感できない人は全く共感できずに離れていきそうではあるが、それなりに部活動をちゃんとやってきた人間なら何かしら刺さるところがあるだろう。
ラストカットはこの場から離れては行くけど、それでも狂気のループは続くと捉えた。雷で…というパターンも考えられる。爽快さのかけらもない終わり方だけど、余韻はしっかりと胸に刻まれる。
ボートが個人競技の側面もあれば団体競技の側面もあるというのが効いている。
なぜここまで頑張るのかの理由が分かっても分からないところが良い。
演出、音楽も熟練の業を感じる
面倒くさい女の自伝映画にうんざり
映画セッションの音響担当だった若い女性(およそ33歳)がみずからの体験をもとに脚本を書き、エスターのイザベル・ファーマンを主演に据えた初監督作品。大学ボート部の女子チーム。一軍レギュラーの座を巡ってライバルたちとしのぎを削る話というよりも、脅迫的なメモ魔で、テストでも残り一人になっても完ぺき主義なのか毎回最後の最後まで(制限時間2時間半とは長すぎなのに)最後まで粘るので、試験監督にも呆れられる。それでいて、ゴーコンお持ち帰りもちゃんとするし、ゼミの院生とレズの関係にもなるし、なにかと気が多い。アクティブなんだけど、こういうキャラ好きな人いる?自分から早朝練習する。数字ばかり気にする。放課後も当然練習。いつ寝て、いつ勉強するのよと思っていたら、カミソリで腹切りしちゃう。カニ(カザミ)を鍋で茹でるカットが、交互に挟まれる。ダルはガン。たしか、癌 cancer の語源は カニじゃなかったか。
オマエがガンなんだよとあの娘はキレた。そうだ。そうだ。そのとお〜り。
一軍レギュラーであることが条件の奨学金に全てをかけると最初から宣言している体力技能ともに優れているライバル役は CODAあいのうたにも出てた娘。とても素敵。
がんばって(奨学金)もらいまっしょい❗を応援したくなる。
一軍の先輩たちも素敵な娘が多い中、厚塗り特殊メイクのエスター役でボロボロになってしまったのか?イザベルはひと回り以上も老けて見えるせいもあり、ノレなかった。
イタくて、ウザくて、面倒くさいもんだから、ほんとにやんなっちゃう。楽しくない。
25歳で10歳のエスター役やった呪い?自縛?イザベルは悪くない。
ボート倉庫小屋の鍵を管理している女性コーチにも迷惑。彼女が男性コーチと教員宿舎で仲良くするのを邪魔していたとしか思えない。
最初から話の展開がヌルい。プロット次第でもっと魅せられなかったかのかと思うが、こういう自己中にはきっと馬耳東風だろう。
田中麗奈の初映画、がんばっていきまっしょいを観てたから、コックスとか知ってたけど、いきなり下ネタ。
ウケ狙いのジャブは効いてませんよ。
ボートみたいなチーム競技に混じったりしないで、ひとりで陸上とかやりなさいよ💢
相当面倒くさい女の自伝映画にうんざり。
ちょっと今、個人的にストレス溜まってるもので、こういう面倒くさい奴が許せない。こういうの何ハラっていうのか?雷落ちろ〜って思ってました。それが落ちない。大統領奨学生ってなに?ほんとムカつくわ💢自慢かよ❗音響や挿入曲も古くさいよ💢こうゆう女が業界でのしあがるためにヤルことといったら、まぁ想像がつきますわ💢
痛々しいまでの青春
映画『NOVICE ノーヴィス』両極端という言い方あるけど、まさに人生を右か左かどちらかで、生きていこうとする映画。右もあるし左もあるし、上だって下だって、360度OKだということがわからない悲劇。心の自由を獲得する人生に意義があるのですが。
いつの時代もどこにでもいる、完璧主義者
忙しくなりすぎた、現代社会では増えこそすれ、減ることのない一群。
主人公は、大学新入生。
ボート部に入る。
経験はない。
だけど、一番になれないと気がすまない。
自分は、何でもできると、考えている。
そして、それが達成できなかったりすると、自傷行為に。
お決まりのパターンなのですが。
上手く物語として、見るものに理解させてくれる。
水辺の映像は必見
とにかく水辺のシーンが、美しい。
音楽の効果も上手く使っている。
ほぼ完璧。
完璧が主題の映画にふさわしいというか。
それが、かえって主人公の閉塞感との対比がいい。
人間は、何かを目指すものだとは思うのですが。
完璧にと、自分を追い込むのは、いかがなものか。
程度の問題なんでしょうが。
ボート部に入部する、一軍に入れれば、奨学生となる。
そこを目指すものは、必死だ。
それはわかる。
だけど主人公は、すでに特別奨学生。
だけど、一軍入りをめざす。
それはそれでいいと思うのですが。
その求め方、必死さというのが、異常。
その境界を見せているところが、この映画の成功か。
大学スポーツの虚と実。
あるものは、奨学生となるために必死で、一軍入りを目指す。
とにかく、人生の経済的成功を収める、一つの手段なんだけど。
アメリカの名門校、勉強との両立。
並大抵ではない。
クラブ内でも、一軍入をめぐって、仲間といえども競争相手。
このあたりのギスギス感、かの国にもある先輩後輩の序列。
見ていて面白い。
現実は、とても厳しいのだけど。
若さの特権でのチャレンジ。
社会での成功の為の競争が、すでに始まっている。
一つの通過点で、あってほしい。
そう思わずにはいられない、そんな映画。
完璧を求めるのはいいけど。
程度ってものが。
このあたりのホドホド感が、現代人の不得意とするところ。
忙しすぎるんだよね。
だめならあきらめる、他の道をさぐる。
そんな気持ちになってほしいと、つい思ってしまう。
日本だって、少子高齢化。
一人っ子にかける期待と、それに応えようとする子供。
失敗は許されない、なんて思わないでほしい。
それだけ、その子に豊かな教育を受けさせられるだけで、十分。
いまや、格差の広がるこの社会では、その機会が与えられるだけで幸せ。
一億総中流なんて言っていた頃が、なつかしい。
頑張れば必ず報いられる、なんて思わないでほしい。
たとえ、結果が伴わなくても。
神頼みもいかがなものか。
ただ、人間の側にできるのは、ただ自分が努力する。
それだけのことなのですが。
映画の主人公のように、自分を追い込まないでね。
いい加減、良い加減。
このあたりのさじ加減が、現代人は、苦手のようで。
あと、最近気になるのは。
やっても無駄なんだよね、と
最初から白けてる空気。
これも、気になるところではあるのですが。
若者よ、狂気を燃やせ。
大学の女子ボート部に入部した女性が一つだけ空いたレギュラーの座に執着するあまりに狂気をまといローイングの世界へ没入する様を描きだす。若者よ、狂気を燃やせ。執着心の暴走。「セッション」(‘14)に通づる熱量を彷彿。この映画内ではアメリカ合衆国大統領J・F・ケネディの「困難だからこそ挑戦するのだ」という自責の言葉が胸に突き刺さる。非常にダークな手垢が世界観に蔓延して、成功に執着するがあまりに道を踏み外しかける危うさを活写。ありふれた方向性には舵を切らずに、主人公がむしろ狂気の深淵へとみずから突き進むような味わい。イザベル・ファーマンの光と影を純朴に体現する様子はグッド。表層的な成功と挫折以上の角度から人間の心理を描写しているのは良い。
スポ根ホラー風味。
監督がサウンドデザイン出身という事と「エスター」のイザベルファーマンは気になる俳優なんでみに来た。
ノーメイクそばかすがリアリティ凄く、顔立ち美人なんでメイクすると映える映える。
話はただのスポ根物なんだけど、主人公視点で物凄く真剣にストイックで、勝ち抜く事に生きがい?執念?いや何だろうなぁあれは、、どんな生い立ちなのか、ちょっと病的な執着で視野が狭い感じなんだなぁ。
ボートなんてチームプレイなのに周りが敵に見え自分を痛めつけるしか方法を見出せないからホラーっぽく見える。
映像も音もホラーモード。サウンドデザインの複雑さを楽しもう!あの手この手で主人公を追い詰めます。ちょっと新鮮なスポ根である。
発音ノーヴァイスじゃないかな?と思って調べたらノーヴィスで正しかった。
素人というスポーツ用語らしい。
いいね〜〜〜〜〜〜これぞまさにOBSESSION!ザ・執着!!
あそこまでの依存や執着、虚言癖とか経験したこと無いから共感できる部分とできない部分はだいぶ明確にわかれるけど、多感な時期の微妙〜な心の機微がとってもよく描かれていてストーリーに最後まで引き込まれた。
ボート部でのポジション確保のために練習に執着してる主人公。練習への入れ込み方は異常だけど、とゎいぇ、ちゃんと成績キープのためのお勉強もするし、パーリーナイトに参加もするし、自らの欲望を満たすための男子お持ち帰りもするし、クラス担当の院生との逢瀬にも勤しむし、ちゃんとデートもするし、大学生活を謳歌してるだけに見えなくもないんよね……
だからこーゆー人ってどこから、何をトリガーとしておかしくなってしまうのか……
体重制限始めた辺りからサイコパス路線猛進しだしたね😅💦
結局主人公はなんでボート部に入ったの??
ボート小屋の鍵を管理してる先生のカラダが理想的過ぎ(´∀`艸)♡♡
肩の力を抜け
終始、主人公も画も落ち着かない、なんだか疲れる映画。
(手持ちカメラ撮影?)
オリンピックも見ないのに、スポコン映画を観るのも失敗だったか・・・
優雅に見えるボート競技だが、実際にやるとなかなか大変なようで。
試合で優勝!的なカタルシスはなく、身内のレースで終わりというのが、やや拍子抜け。
稲妻は、現実世界に照らし合わせて、非常に危険な状況なのでヤキモキした。
(これで落雷に遭ったら、映画にならないだろうが)
サイコパス的な主人公には、特に共感するところもなかったな。
端から個人競技を目指せばよいのに。
デキる人間は違うのだ、と言いたいのか、さりとて、単に執着心だけが異常に突出しているだけのようにも見えるし。
このヒロインはそんなに異常なの?私にはそうも思えなかったけど。
ノーヴィスって何かのスポーツで聞いたことがあった気がしていた。よく考えたらフィギュアスケートなんですね。シニアクラスの下がジュニアクラスでさらにその下がノーヴィス。
ところでこの映画のモデルだけどプリンストンやハーバードといったアイビーリーグの名門ではないものの全米のレガッタに出場するくらいのそこそこ強豪校なんでしょうね。ヒロインがなぜボート競技を選んだかということですが、それがその大学での花形スポーツだったからでしょう。専攻もわざわざ物理学を選んでいるくらいです。多分、このヒロインは最終的に卒業生総代をやりたいと思うような競争意識がとても強い人なのです。アメリカの学校には一学年に数人いるタイプでして珍しくはない。ただ要領よく立ち回ったり人をおとしめたりというやり方を彼女は取らない。ともかく自分を追い込んで追い込んでというところに終始する。
でも、だからといって映画紹介や他の方のレビューにあるような「異常な執着心」とか「狂気」とかにはあたらないと思う。画像が全般に暗く粒子が荒れている、カット割りが細かく、挿し込み方が乱暴なところがその印象を強くしている。でもカット割りについては多分編集が下手なだけなのですよ。
ヒロインは、ボート競技におけるキャリアアップイメージを自分で絵描いて積上げ、それは上級生を負かすところまで進む。でも非民主的な部内ガバナンスが邪魔をしてレギュラーの位置は手に入れられない。時を同じくして大統領奨学生としての身分が明らかになり同級生との溝が深くなる。追い詰められた彼女が異常行動に出て、というところだが、ここがあまりよく分からず迫力に欠ける。さらにラストでのしぼみ方が半端ない。
つまり、誰もが連想する「セッション」との比較において所詮は優等生の挫折といったレベルの話に過ぎず、そう理解してしまうと全くつまんない映画を観てしまったなという結論になる。
「倒れるまでやる」
今年262本目。
刃牙らへん1巻で倒れるほどやると倒れるまでやるは違う。ジャック・ハンマーが失神を持って一日の鍛錬が終わる。今作も失神のシーンが何か所か。自分だと出掛けると少し走る程度なので走る距離伸ばすは出来そう。
2年に1本位の見ていて「ゾーンに入る」映画。2021年7月「ブラック・ウィドウ」2021年6月「はるヲうるひと」がゾーンに今作3本目。ボートってかなり体力キツそう。ブラックアウトもあるかもしれない。
同じ日に2本見て、それがどちらもたまたまボート映画で、 2本目のこ...
同じ日に2本見て、それがどちらもたまたまボート映画で、
2本目のこれを見始めてから気付いて驚いた
主人公の執念的な感覚とか全然理解できないんだけど、
なぜか引き込まれた
ストーリー(というか心情の流れ含めて)も理解できなところだらけなんだけど、
でも没頭してた
見終わってからもやっぱり理解できてないと思うけど、
悪くなかった
狂気と緊張感を楽しむ映画
奇妙な映画ではある。
主人公はボート競技に必死になるのだが、その「目的」みたいなのが見えない。
スポーツ映画ではありがちの「大会で優勝」とか「ライバルに勝利」みたいな「目標」が冒頭に提示されるのだが、それがなく、
「理由は分からないけど、必死でトレーニングしてます」をひたすら見せつけられる。だからといって、退屈ではなく、主人公の鬼気迫る演技と相まって、狂気と緊張感を味わうことができる。
でも、トップのスポーツ選手ある意味、程度の差はあれ、こんな状態なのかも。他人には見せないけど、必死でトレーニングをしてるワケで。
ストーリーは特にないので、その緊張感を楽しめるかどうか、で好き嫌いが分かれる作品だと思う。
Logic
ボートに狂った少女のお話、そのままの内容だったんですが、その狂いっぷりは共感とはほど遠く、自分の思う価値観とは全然違うものを魅せられて昂るものがありました。
「がんばっていきまっしょい」からキラキラ青春模様を抜いて血と傷をより明確にしたようなスポ根ものでした。
「がんばっていきまっしょい」を先週観ていたのもあってボートの知識はサクサクっと入っていたのでボート用語だったり、この練習がどう活きるのかというのもスッと頭の中に入ってきたのもナイスでした。
コーチと生徒が怒号を撒き散らしながら大会へ突き進んでいくのかと思いきや、コーチすらもドン引きする練習を重ねる生徒がメインで描かれるので1本取られました。
宣伝文に用いられているボート版「セッション」の文言ですが、あちらはハゲジジイと生徒が2人揃って狂っていく模様でしたが、今作ではダルのみが狂いに狂っていくという誰かと高め合うでなく、自分の限界を超えるというのを目標にしているのが狂気を宿していて凄まじかったです。
主人公のダルが何故ボート部に執着するのかというのは言葉に出して表現されることはありませんでしたが、他の人を蹴落としたい、自分こそがNo.1だと鼓舞して無茶無謀をやってのけていく様は凄いとかを超えて恐怖に近いものがありました。
イザベル・ファーマンの怪演も手伝って、ぶっ倒れるまで練習をして、休む間もなく練習しては勉強もして、その勉強すらも何度も何度も見直しては直しての繰り返しを教師に呆れられてと側から見たらとんでもない狂人でしか無いんですが、当人からするとこれぞ快感、私は凄い!となっていってるのは自分の中には無い努力の形なので驚かされっぱなしでした。
要領が悪くても足掻きに足掻きまくればてっぺんは取れるという心意気で挑んでいる姿は痛々しくもあり、達成した際は清々しさもありと不思議なシーンが続きました。
雨がじゃんじゃんぶりだろうと、雷が鳴り響こうと一切合切関係なくボートを漕ぎ続ける姿はここで死んでも構わない姿勢で"必死"という言葉がとにかく似合う姿はエグさ全開でした。
勉強に用いるロジックはボートには当てはまらないよって言われたのは正論だと思いますし、なぜチーム競技を選んでしまったのかというところはありましたが、入学してからそこしか目に入らず、他の競技なんてどうでもいいってのがそこかしこから伝わってきてテーマが一貫してるなぁと感心するばかりです。
ラストもプツッと何かが切れたように澄ました顔で歩きだしたのもストイックさの裏返しのようで圧巻されっぱなしでした。
状況説明の文章や単語がスクリーンにドン!と映されはするんですが、書き殴りしたような感じの文字が全面的に出てくるのでテンションが上がりました。
ローレン監督は「セッション」で音響を担当していたのもあって、昂るシーンはとことん掻き鳴らしてくれて、落ちるところはとことんドス黒い音楽をかましてくるのでその点でも感情がぐちゃぐちゃになるのもとても良かったです。
自分とはまるで違う世界を堪能できて痺れまくりでした。
好みは分かれると思いますが、これくらい尖っている作品はやっぱ好きだなぁとなれたので良かったです。
鑑賞日 11/6
鑑賞時間 17:50〜19:35
座席 G-10
思えば、「巨人の星」だってホラーだった
大学の女子ボート部に入った新入生が偏執狂的な熱意で部内一の漕ぎ手を目指す、ほぼホラー映画です。
今にして思えば、子供の頃観ていた「巨人の星」だって「アタックNo.1」だって「エースをねらえ」だって、みんなサディストとマゾヒストのホラー物語に見えます。この映画では、それを非常にクールな眼差しで描いています。
ただし、本作にはとんでもない鬼コーチがいる訳ではありません。彼女は、「困難だから挑戦するのだ」というケネディの言葉に引きずられる様に自ら困難を目指します。だから、最も苦手だった物理を苦手であるからこそ専攻し、努力で勉学でも前進を目指すという捻じれっぷりなのです。努力の尊さと狂気の境い目がぼやけて来る展開に身震いしました。新人監督がこれだけ尖った作品を仕上げたのは見事です。ただ欲を言えば、もう少しリズムの強弱をつけて欲しかったかな。
個人競技ではなく、チーム競技に来ちゃうところに底意地の悪さが滲み出ていますね
2024.11.7 字幕 アップリンク京都
2021年のアメリカ映画(97分、G)
初心者としてボート部に入った女学生がのめり込む様子を描いたスリラー映画
監督&脚本はローレン・ハダウェイ
原題の『The Novice』は、スポーツなどの「初心者」という意味、映画内の翻訳では「新人」
物語の舞台は、アメリカのとある大学(ロケ地はカナダのトロント大学)
大学1年生のアレックス・ダル(イザベル・ファーマン)は、苦手な物理を専攻し、ボート部の初心者プログラムに参加し始めた
同期にはスポーツ奨学金を目指すジェイミー・ブリル(エイミー・フォーサイス)がいて、彼女はスポーツ万能の有力新人だった
アレックスは基礎から学び始め、次第に努力を重ねていく
ジェイミーも練習熱心なアレックスに信頼を置き始めていたが、彼女はまったく別の目標を掲げていた
映画は、盲目的に努力を重ねるアレックスを描き、それが他人を寄せ付けない鬼気迫るものへと変貌する
時間外の練習を重ね、掌に血豆ができても碌な治療を施さない
傷口から感染し、血管が変調を来しても練習を積み重ね、チーム競技であるにも関わらず、連携を取ることもなく体を痛めつけていく
そして、模擬レースでタイムが劣れば、一緒に漕いでいたチームメイトが手を抜いたと糾弾し、さらに溝を深めてしまうのであう
彼女がどうしてそこまで自分を追い込むのかはわからないが、苦手とする物理をわざわざ専攻したり、他人への対抗意識を剥き出しにしていくところを見ると、自分をいじめることで快感を得ているようにも見える
また、高校時代に転校生にトップを奪われたことがネックになっているのかわかないが、ともかく一番になって溜飲が下がればそれで良いという考えを持っているのだろう
それが公式戦である必要もなく、お気楽な練習試合でも良いところを考えると、たまたま対象がボートだったのかな、と感じた
劇中で恋仲になるダニ(ディロン)とのやりとりでも、自分の達成感があれば満足する感じになっていて、それが男でも女でも関係ないという印象がある
ダニの音楽活動に対しても横槍を入れるなど、楽しみながら上達するという概念がハナからなく、これをストイックと言って良いのかはわからない
経験者や上達している人を後ろから抜けばOKという感じで、しかも勝ち逃げするタイプなので、あんまり関わらない方が良い人間なのかな、と思った
いずれにせよ、精神的に疲れる映画なのは間違いないのだが、それは理解に苦しむ部分が多いからだと思う
ラストまで見ても理解し難い部分が多いのだが、満足そうに自分の名前を消して去るところを見ると、あの結果によって満足したのだと思う
勝手にターゲットにされたり、巻き込まれたりするところは迷惑千万だが、基本的には相手には損害を与えないので、うまく距離を取れれば問題ないのかもしれない
とは言うものの、わざわざチーム競技に入ってきて行う意味もないので、ただただ迷惑な存在だったなあと思った
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