「どんでん返し系じゃないのに、ラスト10分で心が震えた理由。」花まんま ソビエト蓮舫さんの映画レビュー(感想・評価)
どんでん返し系じゃないのに、ラスト10分で心が震えた理由。
自分的には「ラスト10分が大事な映画」かなと思った。
実質的にラスト5〜6分、結婚式披露宴が終わってからが全て、という感じ。
その理由は後述したい。
映画館の様子は、自分の予想以上にすすり泣きが聴こえてきた。
あ〜、あそこのオバサン泣いてるな〜とかキョロキョロしていた。
おそらく、人並みの人生や幸せな人生を歩んで来られた、
人生経験豊富な人ほど涙腺は緩くなるので、
この作品はもっと前段階から泣いている。
娘や息子の結婚式を見送ってこられた親御さんだったり、
子育てで苦労してこられた人だったり、
主人公らと似たような絆の強い兄妹だったり、
関西を舞台にした人情モノ映画なので。
ただ私のような、人並みの人生を残念ながら歩めなかった人、
幸せになれなかった人、
結婚式に自他共に、経験や馴染みが無い人は、
没入感が弱く案外私のように、ポカーンと観てたかもしれない。
( ゚д゚)ポカーン
特に令和の時代は、結婚葬式等の節目の儀式や、
飲み会忘年会等の定例行事を、ことごとく社会から排除してきた「多様性の時代」。
ここ20〜30年で日本の生活様式はガラリと変わり、
鈴木亮平と有村架純のような兄妹を支えてくれる、
「身近な味方」を自身のコミュニティに持つ家族が無い人も、多々いるに違いない。
この映画の主人公達は、人と人との距離感が、
今の時代にしてはかなり近いように感じた。
意外と私のように、こうしたコミュニティへの共感が弱い人もいるはず。
それから、この作品の肝になるファンタジー設定、
「他人(前世)の記憶が入り込む」映画やドラマは、例を挙げたらきりがないが、
本筋の人情物語と、上手く混じり合ってないように感じた。
コーヒーでたとえれば、インスタントコーヒーをお湯ではなく、水で溶かそうとするかの違和感。
人によっては自発的にお湯を沸かせる体質の人(=人生経験豊富な幸せな人)は、
ファンタジー設定を容易に受け入れるだろうが、
私のような湯沸かし器がぶっ壊れてる人(=人並みの人生を歩めない、幸せじゃない人)は、
この唐突な神様の気まぐれのようなファンタジー設定が、
うまく自分の中に溶けていかない感じがする。
これは、カラスの「例のアレ」なファンタジーも同様だ。
「人情モノ作品なのに、万人受けしていない仕掛け」の感じ。
それって野球でたとえるならば、
「ユーティリティ選手なのに守備が下手」なくらい、ヤバいポイントだと思うのだ。
(^_^;)
もう1つだけ、どうしても気になった所を示すと、
繁田一家パパの酒向芳と、子供側のキムラ緑子&六角精児の、
親子関係が「役者実年齢最大5歳差以内」だったのは、
無謀過ぎてさすがに笑ってしまった。
m9(^Д^)アカンヤロ
まるで「いのちの停車場」の、田中泯と吉永小百合との、
「親子関係なのに、役者実年齢がまさかの同い年」以来の、無謀なサプライズだった。
要約すると、私は120分のうち110分間は、ず〜っと物語から疎外されていて、
弱い没入感の中にいて、だからこそ映画のスクリーンに集中できず、
周りをキョロキョロしながら、すすり泣きするオバサンを発見したり遊んでいたのだが、
可哀想な事に、多くの観客が泣いてた鈴木亮平の、最大の見せ場シーンすらも、
う〜んと唸りながら観ていたのだが、
披露宴終了後の、ラスト10分からのシーン「だけ」は、
ハッとする、心の最大震度的な揺れ動きを感じ、震えた。
(( ゚д゚))ハッ!
その瞬間は全く方向性は180°違うけれども、たとえていうなら、
「ユージュアル・サスペクツ」的な、ドキっとする心の震えだった。
別に、あの有名などんでん返しでもなんでもなく、
むしろ、劇中でそうなる事の予兆があったにも関わらず、
映像内の有村架純以外の5人が、一瞬ハッと目を見合わせる、あのシーン。
その瞬間だけは、不思議な事に有村架純が「別種のカイザー・ソゼ」に見えたのだ!
( ゚д゚)ハッ!
それが一体何だったのかは、映画を観た人にだけにわかるはずで、
このシーンを観ただけで、もう、冒頭から110分の冗長なくだりは、ある程度水に流す事ができた。
だから冒頭で示したように、ラスト10分を見ずに途中退席した人は、
可哀想だなあと思うのだ。勿体ない。
(^o^)
良かった演者
酒向芳
鈴木亮平
有村架純
板橋駿谷
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