香港、裏切られた約束のレビュー・感想・評価
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「所詮は他人事」にしない為に
2019年以降の香港での民主化運動とそれを暴力で制圧する中国政府を記録したドキュメンタリーは、同様の映画『時代革命』(2022)とかなり被る内容なのだが、既にいくつかは記憶が曖昧になっており、本作で「ああ、そうだった」と思い出す点が幾つかあった。シリアもウクライナもガザもやはりどこか他人事であり、気を許すと忘れてしまうのだ。繰り返し繰り返し思い起こし、その先を想像せねばならない。
報道されていない香港
80年代から90年代初めまで、香港は憧れの国だった。雑多でありながらも勢いがあった。チョウ・ユンファ、レスリー・チェン、ジョン・ウー、リンゴ・ラム、数多くの素晴らしい映画人を生み出した。エネルギーのある国だった。
しかし、1997年、それまで英国領だった香港は中国に返還された。その時に、多くの才能が海外へ流出した。
香港は、それまでの勢いを失ったと感じた。
そして2019年、香港で起こっている事が毎日ニュースを賑わした。それは香港の自由を求める為のデモ。
ニュースでは、50年保証の「一国二制度」が反古にされようとしている、中国の支配に抵抗する若者を、弾圧する警察などの政府側の姿が映し出されていた。
香港の若者達が、自分達が生まれた香港の未来と自由をかけて、命懸けでデモ行動を。それを、武力で制圧する警察。衝撃だった。香港に頑張って欲しかった。憧れた香港であって欲しかった。
やがて、デモは鎮圧の方向へと動き、ニュースも減っていく。そして、ニュースは新型コロナ一色へとなっていき、その後香港がどうなったのかは、殆ど報道されずに、やがてコロナ禍の中に世間の記憶から遠ざかっていた。
気になっていた、その後香港がどうなったのか。
この映画は、そんな当時の香港を、リアルに描いている。
他人事ではない、真実の姿がある。
#香港裏切られた約束
日本は台湾を共産党から守り、英国は香港は見捨てた。
香港は何故 あれだけデモで大人数なのに 結局 共産党に支配されたのか。
フランス革命は成功し、明治維新も成功したが、香港の民主化デモは鎮圧された。
香港人の覚悟が弱かったともいえる。
長年 英国の統治下で 当たり前の様に 暮らした香港人。
中国への返還で まったく準備不足で 放り出され 右往左往。
英国も あまりに無責任。一国二制度の言葉で騙された英国と香港人の迂闊さ。
心臓バクバク!命懸けで撮った価値ある映像
心臓がバクバクした。ものすごく価値のある映像だ。
私は日本の安保闘争を知らない世代なので、つかこうへいの「飛龍伝」の中の世界が全てだった。
火炎瓶を投げる、機動隊との闘争を演劇で観て、こんな時代があったのかと漠然と客観しつつも妙な心の高まりを感じたものだった。
この映画で、それに近い理工大学での学生運動をリアルに観て、衝撃を受けた。目が釘付けになった。
日本の安保闘争とは時代は違う。5年前のことなので、警察は銃弾だけでなく、放水車での水の攻撃やレーザー光線も使う。
学生側は昔と変わらず火炎瓶を使う。他には傘を刺して攻撃を避ける。そしてスマホで撮影し情報を記録する。
地下鉄は封鎖されて民衆は移動できなくなるが、警察だけが地下鉄を使えるという特殊な状況に身震いした。
よくぞ京都で上映してくださいました。
感謝しきりです。
この映像はもっとたくさんの人に観てほしい。
最後にトークショーの内容のメモ書きを記録に残します。
トークショー
台湾で暮らしたことのある京都大学の先生
コンパッション=共に戦う
姿が描かれている。
ネパールの女性の熱弁も見所。
権力を正義とみなす弱肉強食の世界。
日本と中国の関係について、心ある人達は排外主義者と言葉がシンクロそういう言葉を超えることが普遍的な問題。
パレスチナ問題も捻れた状況。
ドイツがイスラエルに援助するのは何故か。かつてのホロコーストに対する罪の意識からイスラエルを批判しないのは反ユダヤ主義。
そしてイスラエルがやってるのはホロコースト。
なぜ日本人は中国独裁主義を批判しないのか。中国人を批判するのでは無い、中国の独裁主義を批判すべき。
沖縄の問題ももっと批判すべき。
日本社会の中で不正義を許さない状況を作っていかなければならない。日本でもそういった運動が広がるきっかけを作ってくれた映画。
シアン監督
イギリスの難民としてなかなか日本に来られなかった。
今回は数日東京でも上映会をしていた。
今はタブー視されつつある危ない状況のため使命感を抱いている。
日本の皆様の感想を聞きたい。
一般人の質問コーナー
中国人教師
私は中国人として少数派 。中国本土でやっていることを再現したのがこの映画であり香港の状況。
今の中国は
言論の統制、
教育の変更、
真実を失うこと、
未来の若者にこのような真実や香港の状況を伝えることへの意義を感じる。
中国本土では政治、社会運動、自由の話を語り合えない、語ることを怖がっていた。
シアン監督
大人として中国の洗脳教育を受けている子どもたちを目覚めさせるのは難しいが、頑張ってこういった上映を通じて文化を守っていかなければならない。
当時香港にいた女性
編集するにあたって当時から5年ぶりと思うがどんな思いで編集したのか?香港にいる700万人に上映できないのはおかしい話です。いつか上映できることを願っている。
シアン監督
映画の中に理工大学の映像があるが、撮影は怖かった、怖いというのは完成できないことへの恐れではなく捕まったらモザイクをかけていない映像が警察に渡され映っている活動家の人に迷惑をかけるのではないかと思い2021年以降は撮影を止めた。
編集で苦しんだのは、その後継続して起きていることに関心を寄せてはいるものの、その後は撮影できなかったこと。我慢してこれまでに撮った映像を編集しなければならなかった。
上映会に香港から子連れの女性が観にきてくれたのは嬉しかった。
悲しさと悔しさがスクリーンから溢れてる
友人が赴任していたので、返還前も後も香港へは何度も出掛けた。2002年が最後だったかな。
本作で出てきた地域の殆どに行ったことがあるだけに、あまりの変化に衝撃的だった。
「赤」の情け容赦ない政策に怒りを感じるし、それに対する香港人(若者)のパワーを感じた。
台湾にしても香港にしても、「昔の良き時代」に戻って欲しい。訪れる度に楽しかった思い出が増えて行ったあの時代に戻って欲しい。
日本政府がどれだけ努力してくれるのか判らないけれど、仕方なく香港を離れている人たちが、何事もなく戻り、本来の生活に戻れることを祈る。
物語の鮮やかさと重要性に呆然
香港のデモのことは何も知らず中国の暗部に迫る手掛かりを得るために観たのだが、ドキュメンタリーとは思えないほど登場人物が魅力的で生き生きとしていて、引き込まれた。淡々と事件が映し出されたのではなく、深い洞察と未来への祈りを感じる豊かな展開で、中国が脅威というだけでなく今の日本国内にも似た問題があると思えた。
監督の才能の煌めきを感じたが、プログラムのメッセージによれば、この作品の公開により「映画業界から追放され」るという。学会追放を覚悟しているというウイルス学者の宮沢孝幸氏の闘いと重なるものがあると思えた。
無知でい続けるよりは
感情的には星5を付けたいけど、登場人物の話を日本語字幕で追いつつ名前や肩書きまで同時にインプットするのがスピード的に少し難しかったのと、地図説明のところもやや速すぎ感があったので。
あと、闘わない層の人々のことも知りたかった。直接の声は聞けずともせめて窺い知れるような場面があったらよかった。
“闘う人々”がメインだったので、比較的気が休まらないタイプの映画ではあった。
それでも、見ておいて損はない、貴重な映像だと思う。
あとこれはレビューじゃなくて独り言だけど、
実際に現実に起きていることを知らないまま、あるいは知ることを避けて生きていくよりは、無力さ感じたり傷付いてもちゃんと現実見ようと思って、ドキュメンタリーは個人的になるべく観るようにしている。
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