「台詞で語らない演技」誰よりもつよく抱きしめて こよみさんの映画レビュー(感想・評価)
台詞で語らない演技
クリックして本文を読む
内田監督作品ということで繊細な表現に期待していた。潔癖症の強迫性障害を持つ主人公というテーマもあり緊迫感のある瞬間が多く、所謂恋愛映画として見に行くとキャストのファンの方は戸惑うかもしれない。
一つの言葉、一度の掛け合いで不穏な空気が漂い、それを解消しようと試みるがぎくしゃくと噛み合わず状況が悪化していくのはやや展開が急にも思うが、主演二人の演技は素晴らしく、目線や佇まいで台詞にせずとも感情の動きを予感させるので男女の険悪さにはリアリティが感じられた。
恋敵となる韓国人男性については出会い方も距離の詰め方も舞台装置のようで不自然に思ったが終盤で過去に出会っていた経緯が明かされて納得する。
不倫・ 浮気未遂が恋愛関係の破綻を招いたことを悔いたヒロインがきっぱりと拒絶するパターンの出会い方を再演するシーンは作中でも特に気に入った。整った顔立ちで綺麗な女性だが強いオーラを放つ派手さがあるわけではなく、凛とした清潔感のある素敵な俳優だと思った。
朝ドラを視聴していたので主演する三山凌輝の演技は知っているはずだが、現実味が薄いほどの好青年だった直明に比べると、見ているだけでもどかしくなる不器用な青年を見事に表現していたことに感心する。あまり数を見ているわけではないが役の幅を感じたのでこれからの作品選びに注目したい。
コメントする