「傷つき揺れながも繫がりを回復する秀作」誰よりもつよく抱きしめて ふくすけさんの映画レビュー(感想・評価)
傷つき揺れながも繫がりを回復する秀作
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潔癖症で恋人の手を触ることさえ出来ない男(良城)というマイノリティを巡る物語なのだが、可哀想な良城を何とか助けようとする女(月菜)の物語かと思いきや違った。
良城を見守っている月菜は、良城と同じ症状を持つ他の女(千春)と良城が屈託なく仲良くしているのを見て、嫉妬を抑えることが出来ない。
マジョリティであったはずの月菜は良城と同じ境遇の千春に疎外される。
韓国の料理人ジェホンが、月菜に猛烈にアプローチするが、そのジェホンのくらくらするような魅力に揺れながら必死に良城への想いをつなごうとする月菜は、千春と良城の罪悪感の無い振る舞いによって深く傷つけられる。
月菜は月菜でジェホンに抱擁される瞬間を良城に見られてしまう。
登場人物は全て思いやりに溢れ、優しく穏やかで、あまりに相手の立場をおもんばかるが故にすれ違いが重なる。
なんとゆう見事な展開であることか。
ジェホンの言動は強引で、歯の浮くような台詞も多く、無理があるように見えながら、観客に彼がただの軽い遊び人とは見せない。大した演技力と演出。
ジェホンのその本気は最後にきちんと回収される。
優しさと思いやりに溢れていても人は人を傷つけることから逃れられない。
この映画の素晴らしさは、その悲しみで終わらないところだ。
自分を生ききることが繫がりを回復させる。
温かい映画だ。
絵本が補助線となって優しく観客を導く。
欲しくなった。
これは必ず見るべき映画となった。
ミッドナイトスワンの内田英治氏の作品 なるほど!
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