「単なるアイドル映画かと思いきや全く違いました」誰よりもつよく抱きしめて 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
単なるアイドル映画かと思いきや全く違いました
強迫性障害を抱える水島良城(三山凌輝)と、彼と同棲する恋人・桐本月菜(久保史緒里)とのラブストーリーでした。本作には、韓国のアイドルグループ2PMのファン・チャンソンが、月菜に恋するイ・ジェホン役で登場。日韓のアイドルが共演する“キラキラ映画”と捉えることもできますが、内容的には中々見ごたえがあり、さすが内田英治監督作品といった印象でした。
強迫性障害が原因で極度の潔癖症となった良城は、同棲相手である月菜にすら触れることができないという設定。この障害をどう克服していくのかが、物語の軸となっています。最初は「自分は病気ではない」と言い張り、治療を拒んでいた良城ですが、月菜のために通院を決意。しかし、その病院で同じ病に苦しむ村山千春(穂志もえか)と出会い、意気投合することで、物語は一気に動き出します。この展開が非常に面白く、作品としての魅力を高めていました。
一方で、良城にとっての千春と同様の存在として描かれた韓国人シェフ・イ・ジェホン(ファン・チャンソン)と月菜の関係については、やや違和感を覚えました。終盤でジェホンが月菜にこだわった理由が明かされるものの、物語の順番で見るとその展開があまりに強引で、やや首をかしげる部分も。外国人ならではのアプローチと言われれば納得できなくもないですが、それにしても唐突感が否めませんでした。これが原作小説に忠実な展開なのか、映画独自の解釈なのかは分かりませんが、もし映画独自の要素であれば、もう少し工夫の余地があったのではないかと感じました。
それでも、本筋である良城と月菜の関係を描いたシーンは非常に印象的でした。特に、終盤の雨の中、良城が月菜の靴を水たまりから拾い上げる場面は強く心に残る名シーン。また、その後良城が千春の家を訪れ、自らの運命を嘆くシーンも、涙を誘うものとなっていました。
最終的にハッピーエンドを迎えたところは、個人的にご愛敬だなあと思いましたが、全体を通して見れば見応えのあるラブストーリーだったと思います。
そんな訳で、本作の評価は★3.8とします。