「【”心で通じ合っていれば、いつでも飛べる。”恋人を強く抱きしめたいのに出来ない青年と、抱きしめられたい想いを抱えた女性との切ない悪人が一人もいない品性高きラヴストーリー。物語構成も良き佳品である。】」誰よりもつよく抱きしめて NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”心で通じ合っていれば、いつでも飛べる。”恋人を強く抱きしめたいのに出来ない青年と、抱きしめられたい想いを抱えた女性との切ない悪人が一人もいない品性高きラヴストーリー。物語構成も良き佳品である。】
■絵本作家を目指す高校生の良城(三山凌輝)は、絵本屋を営む祖父(酒向芳)の元アルバイトをする月菜(久保史緒里)と恋人になる。
が、良城は一冊だけ絵本を出版するが、その後強迫性障害を患い人と接する事が出来なくなる。同棲していた月菜とも。
そんな中、カウンセリングに通い始めた良城は、自分と同じ強迫性障害を患う村山千春(穂志もえか)と出会い、月菜は料理人のジェホン(ファン・チャンソン)と出会う。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・良城が描く”モジャ”という跳べない鳥を描いた絵本のストーリーが、素敵である。勿論、”モジャ”は良城の事であろう。
・良城が、強迫性障害による潔癖症のために常にビニール袋を手にし、野菜も洗剤を付けて何度も洗う姿からは、彼の苦しみが伝わって来て、観て来てキツイ。
だが、彼と一緒に暮らしながら”触れて貰えない”月菜は、もっとキツイだろうなと思う。月菜は劇中に笑顔を絵本屋でお客さんにしか、見せないのである。
・”恋人と触れあっても心が動かない青年”ジェホンが絵本屋に現れた時に、スマホを忘れるシーン。あれは、後半を見ているとわざと忘れたのではないかな、と思ったな。
日本に来たばかりの時に、絵本屋で月菜に”この絵本は、前向きな気持ちになれるし、日本語も覚える事が出来ますよ。”と笑顔で勧められた「まいにちがプレゼント」のシーンを見るとね。
・良城が村山千春と出会い、急速に仲良くなっていく中、千春を部屋に上げて話していた良城の姿を見て二人に声を荒げてしまう月菜の言動は観ていて辛いなあ。
・一方、ジェホンはストレートに月菜への想いを行動で表して行くのである。自分のフレンチの店に招き、一緒にフランスへ行ってくれないか、と誘う姿。だが、月菜は揺れる心の中、その想いを断るが、到頭踏切の前でジェホンに抱きしめられ、その姿を良城に見られてしまうのである。
■激しい雨の中、月菜を追いかける良城が、脱げてしまった月菜のパンプスを、泥水の中から震える手で漸く取りだして、”ほら、僕でも出来るんだよ。”というシーンも、実に切ない。
その後、月菜はジェフンの気持ちを断り、良城の家も出て行くのである。
・そして、数年後。髪をショートにした月菜は、学生時代から願っていた海外での恵まれない人達への支援の仕事を生き生きとしている。
そんな時に久しぶりに会った、女友だちから渡されたプレゼント。その中には良城の新作「モジャの冒険」が包まれていたのである。
驚いて、絵本屋に行った彼女の前に笑顔で現れた良城。手にはビニール袋を嵌めていない。そして、平積みの棚には彼の第一作「飛べないモジャ」と並んで「モジャの冒険」ガ並んでいるのである。
<そして、数年振りに二人はゆっくりと近づき、優しく抱擁しあうのである。
今作は、強く抱きしめたいのに出来ない青年と、抱きしめられたい想いを抱えた女性との切ない悪人が一人もいない品性高きラヴストーリーである。物語構成も良き佳品であると思います。>