「ファンムービーがすぎると思って観てたら泣いた」ゼンブ・オブ・トーキョー Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
ファンムービーがすぎると思って観てたら泣いた
オープニングはひどいよね。
日向坂がやる街歩き番組を延々87分観ることになるのかなと思っちゃうもん。
「それはファン以外は観てらんないよ」と思って席を立つべきなのか迷うんだけど、その辺で『スカイツリー近くの橋で集合』になるね。
「集合場所は固有名詞で指定しろ!」と思うんだよね。普通名詞の「スカイツリー近くの橋」だといっぱいあるから。
予想通り再集合できなくて『スカイツリーの近くにそんな橋はいっぱいないし』って台詞で「いや、それがあるんですよ」と観客のツッコミを誘いつつ進んでく。
LINEのやり取りでマルチバースが出るから、それ系の話にすんのかなと思ったら、バラバラになったのは各人に思惑があるっていう話だった。
バラバラになった各班員を描く群像劇になるね。
クールな桝谷さんに憧れる花里さんパートが良かったな。
桝谷さんのかつての知り合い夢華に出会うことで、桝谷さんは実はクールではなく腐女子で、頑張って高校デビューしたことがわかんのね。
それで口裏合わせで『夢華、私、東京から来たクールな人ってことにしてるから』と頼むと、『やれてんの?』と夢華が返すのが良かったな。親友っぽいよね。
憧れの男子を追いかける恵と美緒のやり取りは楽しい。『どうこうなろうとは思ってない』とか平気で嘘つくよなあ。そして揃って敗れる。女バスエピソードを入れてくるのもいいね。
憧れの男子が意中の女子と付き合うのは、グッズ入手に失敗した若菜が『欲しいものは早く手に入れたほうがいいよ』って言うからなんだよね。細かな絡みをつなげてくの面白い。
クールな女子を気取る桝谷さんは下北沢を案内しようとすんだけど、できないのね。そりゃそうだな下北。難しそう。そこのオシャレカフェで班長の池園さんに遭遇して、流れで花里さんが『お互いに探り合ったりしないでちゃんと話した方がいい』って言うのね。それで桝谷さんも『実は腐女子でした』の告白を決める。この辺から池園さんの頑張りが皆を引っ張るようになってく。さすが班長!
告白シーンもいいよね。『そんなの全然気にしないよ』とはやらない。『クサイの?』を絡めて笑いにしつつなかなか受け入れられない描写で引っ張るね。でも仲良く腐女子の聖地・池袋へ。
池袋にはグッズ入手の最後の希望を託された説田ちゃんがいんのね。クレーンゲームでなんとかグッズをとらなきゃいけない。5回中3回失敗したところで桝谷さん一行が現れ、プライズクイーン夢華の出番に。ここで腕前を見せるために一回別のクレーンゲームをやるのもいい。ここでビリビリスマホを入手するしね。
ここでも「さすがプライズクイーン!」とはならないのもいい。それでもみんな仲良くなるんだよ。書いてて泣けてきたな。そうだよ、高校時代はそんなにうまくいくことばっかじゃないの。
夢華が『もうプライズクイーンと呼んでもらえない』と少し寂しがるのもいいね。桝谷さんと仲いいんだよほんとに。
しかしグッズは、班長・池園さんの大活躍により、新宿で入手成功すんだよね。
物語のクライマックスに向けて智沙のオーディションに。ようやく八嶋智人と真飛聖に出番もまわる。
智沙がアイドルになりたい動機もいいね。はじめて自分で何かをしたいと思ったって。アイドルを目指す人の中には、以外にこういう人もいるんだろうな。
しかし八嶋に取り上げられたスマホを取り返さなければ!
いよいよ班長・池園さんの人望が発揮され、全員集合でスマホ奪取に。
ここまで色々と描かれてきたキャラクターが全部そろって作戦遂行するからね、感動する。やっぱりラストの全員集合って大事だな。《桐島》もそうだしね。
美緒の女バスの動きでソフトクリームをぶつけるの。ここは確かに動きがスムーズ。
作戦成功でスマホを奪取し、みんなで智沙のオーディション会場へ。
このシーケンスで桝谷さんに『プライズクイーンが……』って台詞があんだよね、それ聞いた夢華がニコリとするのも好きでした。
ラストはアイドルグループらしくオーディションシーンかと思ったら、まさかの『間に合わなかった』って。
この作品、「手に入れたいものは手に入らなかったが、代わりに何かを手に入れた」を徹底して繰り返すんだよね。そこがいい。
そして卒業式でみんなのそれからを語って、終わり。
アイドル活動って高校の部活動っぽいところがあるんだよね。先輩後輩関係もそうだし。
ほとんどの人は卒業するから、その時期だけの輝きもある。
演者が置かれたそういう状況と、ストーリーも共鳴して、良かったな。
あと女子高生の台詞のやり取りも聞き慣れてないから面白い。ストレートな会話はほぼなくて、少しずらしながら返すね。その辺を見返して勉強してみたいと思ったな。
基本はファンムービーだからファンが観るものだと思うけど、話を分散させて細かなエピソードで繋ぐつくりは良く練られてるから、ファン以外も観てもいいと思ったよ。
最後は三田にある日向坂へ行って踊るのかと思ったら、そういうベタなことはしなかった。