劇場公開日 2007年2月3日

墨攻のレビュー・感想・評価

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5.0スペクタル作品がお好きな方は、必見です。

2008年4月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 本作品は、、小学館「ビックコミック」連載時から好きな作品でした。墨家の生きざまよりも純粋に大軍を前に奇想天外な策を弄し、小が大に勝つさまが痛快であったのです。
「墨守」ということばと、本書の題である「墨攻」とはどういう関係であるのか、というところがまず興味を引くところです。もともと墨子教団は「兼愛」「非戦」を唱え、専守防衛を基本としていますが、実際には精悍な軍団を持ち戦闘行為も行うのです。本書では、この二つの相反することばを主題にしているのではないでしょうか。「兼愛」を掲げつつも大勢の人を殺してしまう「墨攻」には、宗教的には疑問が残ります。

 墨子の教えは、博愛精神においてキリスト教の影響が強いと言えます。影では多分イエスさまが指導しているものと思います。

 墨子のことはその生まれも育ちもよくわかっていません。その字も伝わっていませんし、墨燿という名も怪しく、おそらくその出自は貧賤であったろうといわれています。
 この人の考えは「墨守」ということばに表れています。彼やその弟子たちは他国に侵略される国に入り込み、その国を難攻不落にしてしまうのです。今日このことばは、自説を固く守り続けて融通がきかないことという意味で使われていますが、もともとは墨子がよく城を守った故事からきています。

 堅固に城を守ることを「墨燿之守」といいます。『墨子』には楚が宋を攻めようとしているのを聞いて、墨子は楚に赴き楚の軍師公輸盤<(こうしゅはん)>と楚王の前で仮想戦闘を行い9度攻防して全て守り通しました。公輸盤は攻める手だてを使い果たしましたが、墨子はまだ防戦する手だてが残っているといいました。それを見て楚王はついに宋を攻めるのをあきらめたそうです。この話には後日談があって、宋を救った墨子が宋に帰ったときに雨が降りだしましたが、門衛は墨子を怪しんで通さなかったそうです。(宮城谷昌光さんの短編小説『宋門の雨』より)

 話は、脱線しましたが、映画においても迫力ある戦闘シーンが再現さています。中国映画ならではの人海作戦によるスペクタルな戦闘シーンは見物です。「トロイ」とか「アレキサンダー」の戦闘シーンに見られたような、大味で散漫になるところはなく、次から次に繰り出される双方の陣営の作戦に目が奪われました。「気球戦法」なんてすごいです。
 スペクタル作品がお好きな方は、必見です。

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