「軍事政権の恐ろしさ」アイム・スティル・ヒア オパーリンブルーさんの映画レビュー(感想・評価)
軍事政権の恐ろしさ
まずブラジルの軍事政権時代がそんなに長く続いたことは、知らなかった
ハンディカメラを回しガンガン音楽を鳴らして、いかにもラテンな若者4人のドライブシーンが、一気に緊張に満ちたものになる冒頭の展開が良い。楽しげな生活のすぐ隣に、何らかの理由をつけては居丈高に暴力を振るう大勢の屈強な男たちが銃をかまえているのだ
リオデジャネイロの美しい海岸、そのすぐそばの素敵な一軒家。そこに夫婦と四女一男と、海岸で拾ってきたカワイイ子犬と気立ての良いメイドさんがいる一家
突然夫が拘留される。男たちに暴力的な振舞いは無いが、有無を言わせない力がある。家に彼らはそのまま居座り、夫の行き先やいつ帰るのか聞いても、要領を得ない。数日後、母と長女も聞きたいことがあると連れて行かれる。二人が乗せられた車は交通ルール無視の猛スピードで走り、突然止まり、頭から黒い布を被れと命じられる(視界を遮る為)
この辺りが民主主義的な法治国家にはまず無い、政府が力による支配を行なっている恐ろしさをひしひしと感じた。逮捕令状も容疑を明かされることもなく、ちょっと聞きたいことがあると連れ去られて、そのまま帰らぬ人となった人間は大勢いるだろう…
やや裕福な、笑いの絶えない明るい、子だくさん一家の普通の主婦であったヒロインが、夫の帰りを待って、待ちわびて、しかし子どもたちのために法律を学んで弁護士となって人権活動をしたと、後半駆け足で紹介されて一気に畳み掛けられるが、そのストーリーのバランスが曖昧で中盤はちょっと眠くなりました
ヒロインの一代記のようなものを期待したのですが、予告編以上の話の展開は無かったように感じました
エンドロールで実在の一家の写真がいっぱい出てきて、ウチは暫く家族写真を撮ってないなぁ…と気付きました
どんなに楽しい思い出も、いつかは曖昧になってしまうもの、積極的にカタチに残しておくことも必要ですね