劇場公開日 2025年9月5日

「初めは啓蒙的映画かと思った!」LOVE talismanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 初めは啓蒙的映画かと思った!

2025年9月6日
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鑑賞方法:映画館

知的

幸せ

斬新

この映画の前に「SEX」を見ていたのがよかったのか慣れたのか、でも「LOVE」はやはり異なる映画でこれまたとても面白かった。

最初のシーンでハイディ(主人公マリアンヌの女友達)がオスロの記念碑彫刻のガイドをする。数々の彫刻をインテリであるハイディが説明するのを自分は観光客として聞いた。彼女の語り口は、ジェンダーやフェミニズムの点で解放されているオスロの歴史と現在の自慢話と啓蒙活動に聞こえた。だからちょっとうんざりした。果たしてそれは街の周年行事のハイディによる提案プレゼンだった。聞き手は観光客でなく自治体の仲間で、結果、評判悪くハイディ落ち込む。なんだかインテリが滔々と話すのが上手い(或いは好きな)北方ヨーロッパ的で、この映画はどこに行くの~?と心配になった。

でも心配無用之助だった。テーマは出会い、婚活、特定のパートナーの必要性可否、仕事、結婚と離婚、子どもや元パートナーとの関係、病気、孤独。主人公のマリアンヌ(女性)は医師、もう一人の主人公は看護師のトール(男性)でマリアンヌと同じ職場。マリアンヌは優秀な泌尿器科の医師、患者と看護師の話に耳を傾け、テキパキして笑顔で誰とも安定して話せて独身。トールは看護師として患者の不安や心配や思いをよく見ている。トール自身がゲイなので、患者がゲイの場合の彼らの不安や問題をマリアンヌに話し提案する。そんなことができるのも、映画の最初からでなく色々あってから。だから映画を是非見てください!

色々な職業の大人の男女が現れる。とにかくそれぞれが互いとよく話す。会話ってこうなんだなあと楽しく温かく羨ましく思った。誰か一人が偉そうにしたりもなく、誰か一人をおだてることもしない。誰も怒鳴らない、決めつけない、耳を傾ける。そんな会話の中に発見があり前に進むヒントがある。

自分のモヤモヤ感を正直に受け止めているので、拙速に何かを決めない、焦らない、そして試してみる勇気と好奇心もある。それがマリアンヌ。マリアンヌをそんな方向に関心を持たせたのがトール。生き方、人との付き合い方にはいろんな選択肢があるんだ。トールに優しさと愛おしさを覚え心が温かくなった。

talisman