ブルータリストのレビュー・感想・評価
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特典冊子は鑑賞後に
214分とインターミッション込みの長尺とフィルムで撮影された本作はまるでラースローが実在の人物であるかのような錯覚を覚える。
そして特典としてもらえる冊子は映画の結末を象徴するようなものになっていてなかなか粋である。
本作のラストで展覧会があるがそこで配られた冊子のようになっており、「建築家ラースロー・トートの創造」という内容自体は少ないがコミュニティセンターの特徴などが書かれている。
ブルータリストというタイトルには1950年代に見られるブルータリズム建築というコンクリート打ちっぱなしで近代的なデザインの建物のことを言うのだそうだ。
確かにコミュニティセンターのデザインはそうなっているが、それとは別の意味でbrutal-istという意味もあるのではないかと思う。
難民は受け入れるがろくな支援もない政府、資本に物を言わせて母親の名前のついた巨大な建築物を作ってしまうヴァン。その壮大な建築物に過去のトラウマを反映してしまう主人公でさえもその一人である。
また、打ちっぱなし特有の無骨で荒々しく、時に冷たい無機質な感じが本作に登場する人物の感情を表しているようである。
15分というインターミッションは何かをするには少々少ないが前編からの意識が離れない程度の時間であり、また後編が始まる数分前から後編の最初のシーンに繋がる駅の環境音が聞こえ出す。ここから流れるように後編が始まるので絶妙な時間になっている。
主人公の壮絶な半生に心が震えました
主人公のハンガリー系ユダヤ人のラースロー(エイドリアン・ブロディ)が
ホロコーストを生き延びてアメリカに渡る冒頭から、
食い入るように映画内に没入することができました。
映像×音声の見せ方が素晴らしかったです。
特に逆さまにうつった自由の女神🗽
アメリカに渡ってからは不遇な日々を過ごすラースローですが、
建築家の才能が認識されてから、人生が上り調子になっていきます。
それもすんなり行くわけではなく、やはり人種として平等・公平には扱われない
苦しさ、生きづらさ等、ビシビシと感じました。
このあたりの謙虚なラースローは好きでしたね。
※奥さんが生きているとわかって泣きながら喜ぶ
ラースローの表情がすごく良かったです
インターミッション15分をはさんで後半です。
後半は、あらゆる設備を備えた建築物に取りかかるのですが、
これが七難八苦で思うように全然進まないことで、
ラースローがどんどん荒れていくところがリアルで、実に痛々しかったです。
後半の冒頭で、奥さん(フェリシティ・ジョーンズ)と姪も渡米して一緒に
暮らすことになりますが、奥さんが難病を抱えており、
これも痛々しかったです。
と感じると同時に、フェリシティ・ジョーンズの演技は鬼気迫るものがあり
素晴らしかったですね。映画ファンになって以来、大好きな俳優です。
ラースローの雇い主ハリソン(ガイ・ピアーズ)もイイやつかと思いきや、、、
という後半の豹変っぷり、悪辣っぷりが、この作品をより面白いものにしていました。
ラストに大きくなった姪が語った
「他人が何をどう言おうとも大事なのは到達地だ。旅路ではない」は至言だと思います。
エンドロールはまさかのナナメスクロール。
アートだけど、読ませる気はないなと思いましたね(笑)
215分と長尺ながらも、濃密な時間を体感できました。
エイドリアン・ブロディ充できたけど…
15分のインターミッションのお陰で長く感じなかったけど、正直そのシーンいる…?(特にR指定の要因となったもの)というのは多々あったのでもう少し短くできてたらよかったかも。パワポのスライドショーみたいになってるとことかちょっと笑ってしまった。
奥さんに会えてひとつのめでたしを迎えると思いきや、この人に最後まで今ひとつ感情移入できなかった。
エイドリアン・ブロディの繊細な演技には見惚れました。ここのところ主演作がなかったので存分に見られて大満足。
最後に最初のシーンが一瞬映る演出、あれは何だったのだろう。
気になって見返したいんだけど、長いのよ…
前半と後半
の感想がまるで違った。
・コレは何かのプロパガンダ?イスラエル支持?ペンシルバニア州勝利へのご褒美?ジャズこそアメリカが世界に誇れるカルチャー!でもヤク漬けなんですけどね・・
・一大事業の前に皆、すり潰されてしまったのかなぁ。全員破滅?でこりゃあプロパガンダどころじゃなかったな・・。
序曲にエフェクトを入れたり、インターミッションもタイマー、工夫して観せようとの緻密な計算は認める。でもコレで終わり?感は否めない。
長尺の割には、描くべきものが描かれていないと思えてならない
主人公が「ホロコーストを生き延びた」ということが主題になっていると思っていたのだが、そのことがまったく描かれないので、何だか肩透かしを食らった気分になる。
主人公が、ドラッグを常用しているのは、戦争のトラウマを忘れるためなのではないかと勝手に推察していたのだが、終盤で、「鼻の痛みを和らげるため」ということが分かり、「もしかしたら、主人公は、それほど過酷な経験をしていないのかも」とも思ってしまった。
あるいは、「戦場のピアニスト」の役柄がオーバーラップするエイドリアン・ブロディだけに、ユダヤ人に対する迫害の様子は、観客の脳内で補完しろということなのだろうか?
戦争のトラウマということであれば、何度も激しくうなされる妻の方が、よほど心身に深い傷を負っているように見えるのだが、その妻が、どうして夫と離れ離れになり、どんな経験をしてきたのかについても、最後までよく分からずじまいで、フラストレーションを感じてしまう。
主人公と妻との関係性にしても、せっかくアメリカで再会できたのに、どこかギクシャクとした雰囲気が続くばかりで、少なくとも、「互いに支え合っている」という印象はない。終盤で、ようやく愛を交わすことができるものの、それも、何だかドラッグのお陰のようで、夫婦愛の物語としても、物足りないとしか言いようがない。
それ以前に、冒頭に登場して、主人公の夢の中にも出てきた女性が、てっきり妻だと思っていたのだが、第2部になって、それが妻の姪だと明らかになり驚かされる。
そこで、この姪が、物語の鍵を握っているのに違いないと予想したのだが、大きな事件も起こらないまま、あっさり口がきけるようになった挙げ句に、夫とイスラエルに行ってしまい、ここでも、肩透かしを食らってしまった。
結局、これは、自らが追求する「理想」と、費用や人間関係等の「現実」の間で、「創造」のために苦闘する芸術家の話なのだろう。
ただ、彼が味わう「産みの苦しみ」は、故郷のハンガリーと移住先のアメリカの文化の違いによるものというよりは、彼自身の、妥協を許さない頑固な性格や、協調性のない傲慢な人間性に起因しているように思えてならない。
ここでも、ヨーロッパにおける主人公の経験が描かれず、アメリカでの出来事との比較ができないために、良く言えば「普遍的」だが、悪く言えば「どこにでもある」ような、単なる「偏屈な芸術家の話」になってしまったように思えてならない。
ガイ・ピアースが演じる主人公のパトロンも、「芸術の理解者」と「いけ好かない金持ち」という2つの個性のバランスが絶妙だっただけに、終盤のイタリアでのエピソードのせいで、後味の悪い印象しか残らなくなってしまったのは、残念としか言いようがない。
いずれにしても、主人公の人生そのものに、「数奇な」と形容できるような波乱万丈さが感じられず、それを描く物語も、平板で起伏に乏しいものになってしまったのは、やはり、ナチスによる迫害を逃れ、アメリカに来るまでの経緯が描かれなかったからだろう。
正味3時間20分の長尺だが、その割には、描くべきものが描かれていないと思わざるを得ず、逆に、これだけの内容の物語を、これだけの時間をかけて描く必要はあったのだろうかという疑問が残った。
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