ブルータリストのレビュー・感想・評価
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逆さまにそびえる女神像に見守られし神話
それはありきりの形状に囚われず、どこまでも大胆で、かつ怪物的だ。そしてこの国(アメリカ)をめぐる怪物的な映画は、誰もがすっかり忘れた頃に時折姿を現す。以前同じ感覚を憶えたのは『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』か。アメリカンドリームと人は言う。確かに主人公もまた欧州の地獄から逃れ、一縷の望みをこの国に託した人物だ。ある意味で彼はその微かなチャンスを掴み、またある意味では、自分こそ真の理解者だとのたまう横暴なパトロンに振り回され、その人物に愛されては嫉妬され、資本主義の歯車の中で徹底して蹂躙されていく。いわゆる渡米したユダヤ人の半生を重厚感たっぷりに描きつつ、と同時に、さながら現米政権を司る人たちともよく似た一部の米国人たちの王様気取りの姿をも鏡面的に描き出し、全ては建築という緻密で謎めいた構築物へと託されていく。かくも巨匠ですら不可能な城を築き上げた30代の鬼才コーベット、心底恐るべしである。
An Intricately Designed Picture
Every bit as a labyrinthine, audacious, colossal, and dedicated a piece of artwork as the facility Brody's fictional architect toils at great expense. The story of a practiced tradesman and Holocaust survivor who rises from rags to supporting the rich, this layered and oversized story might have one believe it is a true tale. It's grand cinema that arguably succeeds to be this era's Citizen Kane.
「何をしたのか」と「何をしようとしたのか」
何の予備知識もなく観たが、前半は、ざわざわした感じ。カメラが対象に近いためだろう。主人公のユダヤ系ハンガリー人、ラースロー・トートを演じたエイドリアン・ブロディには「戦場のピアニスト」のイメージが染み付いている。ナチの収容所を逃れたラースローがやっとのことで米国に辿り着き、従兄弟の店でチェアをデザインした時、バウハウスゆかりの人間と知れた。彼は、縁あってペンシルベニアの資産家、ハリソン・ヴァン・ビューレンの邸宅の図書室をデザインすることになるが、優れていることはすぐにわかった。案の定、一旦は事情を知らないハリソンに罵倒されるが、その後のストーリーは読めた。多分、映画で使われた空間処理の仕方は、バウハウス出身で米国に渡ったマルセル・ブロイヤーの影響だろう。しかし、彼が設計した図書室の本棚には、パリの「ギュスターヴ・モロー美術館」の窓際の陳列棚の影響が感じられた(これは贔屓の引き倒しか)。
映画の後半では、ハリソンの勧めに従い、彼の邸宅があるドイルスタウンの丘の上に、公的な予算が投入されて、マーガレット・ヴァン・ビューレン・コミュニティセンターと言う名の地域の集会場が建設されることになる。さまざまな制約が課されるが、プロテスタントの礼拝堂を、建物の中心におくことが難関だったと思う。映画に出てきた礼拝堂の天井には十字が刻まれ、我が安藤忠雄の「光の教会」を思わせる(エンドロールで、触発されたことを感謝すべきレベル)。ただ、礼拝堂の室内は、極めて天井が高く、ブダペストやプラハで見たドーム式のシナゴーク(ユダヤ教の教会)を思わせた。実際に、ユダヤ教の信者による集会風景も出てくる。この姿が、設計や建築の段階で想像されたら、地域のプロテスタントの人たちから、どのような非難が寄せられるかは自明である。
映画の最後で、ラースローの姪、ジョーフィアが「旅路より到達地が重要」と訴えて、これまでの経緯ではなく、残った建造物こそが重要とするが、本当にそうなのか。日本の著名な建築家たちは、必ずしもそうは考えていなかったような気がする。中には、自分の設計した建物なんて、100年後には一つも残らないと言う建築家だっていた。世界遺産に指定された建築は、並外れて優れているに違いない。私たちのような一般人には、それが全てだが、おそらく建築家の世界では、「何をしようとしたのか」も負けないくらい大事なのだろう。第一、優れているのに、いつかの競技場みたいに実現しないことだってある。模型や設計図も大事にして欲しい。その精神こそが、次の世代に引き継がれるのだから。
え?フィクションなの?これ。
自分らしく生きるには
収容所を経験し、家族と引き裂かれ生きるためにアメリカに渡った、ハンガリー生まれのユダヤ人、バウハウスで学んだ建築家。船でニューヨークに到着するところから始まるストーリーの導入から、既にこの映画はいろいろと分厚い。自分らしく生きるためにもがき続ける主人公の苦悩を表現し、また彼と関わる多くの人についても丁寧に描かれている。新転地での彼の芸術の象徴のような建築物は、自身の人生のように完成まで困難を極める。この脚本、監督のセンスと力量の凄さは、ヨーロッパの人かと思いきや、なんと子役出身のアメリカ人。ヨーロッパ人監督の作品に複数出演した経験があるそうで独特の感性は経験から磨かれてきたのか、凄い作品を撮ったものだ。飽きさせず、疲れさせず、観客にとにかくスクリーン上の濃いドラマを見守りたいと思わせる、そこには自分らしく生きるためにもがく人々の姿が、しっかりと描かれている。ユダヤ人が設計したカトリックのための教会、だがその建物のデザイン思想は収容所での経験から来ているとは、なんとも強烈、そしてそれが真の芸術家なのだろう。
性的シーンが多く、ダイレクトに映し出されているシーンがいくつもあってちょっと驚き。芸術作品だから?そこだけ謎、必然性がわからないから。そして日本の映倫基準はいつも謎。
また無音エンドロール
長丁場なので面白くなかったら地獄だなと不安に思いながら鑑賞笑
結果は作品に飲まれてました笑
休憩時間を除けば200分あっという間に感じました。
内容に関しては最初はサクセスストーリーなのかなと思いきや後半からそう言うわけでもなく、、、
最初と最後の結びがしっかりしてるので、受け手が誰の視点で見るかで内容が変わってくる感じが面白かったです。
ただ、テンポ感が一定のリズムな感じがしたのでハマらない人は最後までハマらない気がします笑
建築家の話なので知識ないと難しいかなとは思っていたがそんなことはなく、富裕層のエゴイズムをすごく感じられる映画でした。
言葉だけで偏見の元にこういうものだと作り上げてしまっている部分は自分にもあるため、それを受け入れられる人間力を身に付けようと感じさせてくれる映画でした。
天才と対峙する凡人の葛藤
アメリカンドリーム、移民、宗教、人種差別、音楽、麻薬、芸術家の業、
など様々な要素が200分超で描かれるが、
趣向を凝らした美しい映像表現も多く、
退屈さを感じることは全くなく、最後まで楽しく観ることができた。
一方で、これだけの密度、ボリューム感ある大作にも関わらず、
ガツンという重量感、鋭く突きつけられる感じ、
呆然とさせられるような圧倒的な余韻の少ないのが不思議。
それは、主人公トートの建築家という独りでは完結しない職業柄と、
そこに付きまとう現実のあれこれの描写によって、
天才的な芸術家にありがちな超人的な存在感や傲慢さが少ないこと、
一方で、トートに羨望の眼差しを向けつつ、
大富豪でありながらも人間としての器が卑小で、
破滅的に複雑な自己矛盾を抱え込んだ対峙するハンソンが、
あまりにキャラクターとして魅力的で際立っているのが要因かと思った。
とはいえ、当時のアメリカの主に影の部分の歴史の一端を垣間見られる貴重な機会でした。
打ち放しコンクリートの建築様式
アカデミー賞の正統派作品かと思いきや、いささか期待外れか。
長い上映時間のどこに重きを置いたのか、今ひとつ希薄だった。
悲しみも感動も表現が弱い気がする。
アイデンティティを一番大切にするヨーロッパ人の個性に疲れる。
終着点が重要であり、旅路は問題ではないと。
どうも、共感出来なかった。
3時間半も付き合った後に…
大河ドラマ
全部中途半端で散漫、しかも長い。
多層的な世界
久しぶりに映画らしい映画を観たな、というのが正直な感想。もちろん、映画は観まくっているのだけれど、大衆的ではなく、深みのある、特権的な映画、という意味で。
もちろん、大好きなマーベルシリーズも最近見たウィキッドもアンダーニンジャもどれもが映画だし、それらなりにメッセージ性はある。まぁ、根本的にジャンルが違うので映画論はさておき。。。
今のトランプ政権の状況とイスラエルの問題を見ていると、メタファーが効かないというか、そのまんま、と言ってしまってもいいものなのか悩ましい。
圧倒的な力で侮辱されても、媚びへつらい服従すべきなのか、それとも自由を求めるのか。強制収容所を生還した彼が見たアメリカは、強制収容所よりかは生存できるが、さぞかし生きづらいところだったんだろうな…。
強制収容所を明確に表現せずに、ただただ、生き延びた人たちを描くリアリズムを体感できた。
(ただし、彼らが本当に体験した語り得ない悲劇は、我々の想像を絶するものでそれについては何も言える事はないであろう。)
才気溢れる監督の前衛的手法が満載です
ユダヤ系ハンガリー人がドイツのバウハウスで建築を学び、ナチスの迫害を生き抜いた後でアメリカに移住して建築家として生きる大河ドラマです。70㎜フィルムでの撮影、短期編集などによるローコスト化、スタイリッシュなアングル、独創的なエンディング、視聴者に委ねるその後等、監督の挑戦が続きます。苦難するユダヤ人と傲慢なアメリカ人の対比が大きなテーマで、精神的障害や性的虐待、宗教問題、麻薬中毒、人種差別、移民の困難さ等を絡めて進み、4時間があっという間に過ぎました。監督のデビュー作もヒトラーを描いているので、ユダヤ系、ハンガリー、ハプスブルク家のルーツを持つように思います。ハンガリーから来た知人は映画の登場人物と同じ名前で、「ハンガリー人は放浪癖が有る」と言っていました。欧米人の持つ複雑な民族、宗教、歴史を考えさせる作品でした。
監督の次作はロバートキャパ、ゲオルグショルティ、ジョージソロスを予想します。
面白いけど、長さに見合うかどうかは不明
疲れていて後半気を失いそうになった。つまらないということではなく、暖房効きすぎでこの長さでレイトショーは落ちやすい。でも面白い。
思ってたのと全然違うなんかオシャレな映画だった。建築家の話でもあるけど、クレジット関係がまずオシャレ。オシャレとか言うと失礼かもだけど、音楽含めて全体的にハッタリ勝負の映画なんだな、というのが割に早い段階でわかり、なぜかマカベイエフの映画を思い出していた。ポルノグラフィティ的な目配せもありながら、なかなか出てこない嫁が出てきたと思ったところから嫁たちもかなり怪しいキャラクター。
描かれる世界がアメリカの野蛮なパトロンとブタペストからやってきたアーチストとアメリカの田舎社会がひとつになってアートなホールを建てようということになるが、そうは簡単にはいきません、という話。
この長さはまったく退屈しないのだけど、この長さなりの圧倒的な何かを持ち帰れるのかというとそうでもない。後半もう少し各キャラクターの過去の壮絶な何かがあるのかと思っていると、そっちではなかった。
偶然連続して、『アノーラ』『名もなき者』『ブルータリスト』観たけど、『アノーラ』が抜けてるのはよくわかる。それと、アメリカ映画というよりとても世界映画的なインディペンデントスピリッツのものが多くなった気がする。これもA24効果かな。というか、真っ当な大衆娯楽大作が少なくなったな。個人的にはアカデミー賞ってもっと大衆に向けた作品でいいと思うし、逆にそういうものをアメリカ映画には期待する
「コンクリか大理石か」
翻訳ものの長い小説を読んだ気分
翻訳ものの長い小説を読んだ気分。
海外文学をありがたがる気持ちで、最後まで、あきることなく鑑賞できたけど、よく理解できないのが正直なところ。
15分の休憩までトイレが我慢できなくて席をたってしまったし…
一度の鑑賞で、ちゃんと理解できる人がいるのだろうかと思ってしまう。小説なら読み返しはできるし、じっくり考えることもできるけど、どんどん物語は進んで置いてけぼりになっちゃうから、分かったふりをするしか手立てがなくて、戸惑ってしまうのですよ。
ホロコーストの体験をもとにした建築が後々再評価されるという結末で、大団円というところだろうけど、ホロコーストの描写はないし、アメリカに渡ってからの苦労というのも、特にひどいというところはなくて、十分アメリカに受け入れられていたように感じたけど、どこか見落としたのだろうか?
天才建築家の不遇感と苦悩は、凡人にはなかなか理解できないというところのだろう。
あの富豪が、主人公をゴーカンしたというくだりもよく理解できなかったなぁ…
もう一度鑑賞する気力はないので、youtubeに転がっている解説動画を捜してみ、このもやもやに決着をつけるしかないのかなと思う。
不完全燃焼です。
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