ブルータリストのレビュー・感想・評価
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皆さまのレビューで本作の価値観が大きく変わりました。ありがとうございました!!
あくまでも個人の見解ですが、映画は大衆娯楽ですから、あまり難しく考えるのは苦手です。
それでも、この作品に限っては最低限の予備知識を持ち、漠然とでよいので、主人公の出自、生き様、感情に思いを馳せるとより楽しめると思います。
よって、知識吸収のため、これまで以上にレビュアーの方の感想を丹念に拝読いたしました。
本作鑑賞の際にたいへん参考になりました。深謝いたします!!
【私の最低限の予備知識】
・本作はユダヤ人ラースロー・トートが主人公
・演じたエイドリアン・ブロディもユダヤ系(ハンガリーの血も流れている)
・ホロコースト(ユダヤ人迫害および大量虐殺)とシオニズム(イスラエル建国)
・ユダヤ教と基督教(プロテスタントとカトリック)。シナゴークと基督教教会
・戦後のハンガリーから逃避した米国(ペンシルベニア州、フィラデルフィア)が舞台
・R15+の制限。暴力、性描写、麻薬摂取などのシーンがあるので中学生以下NG
・日本語コピーは「荒ぶる、たぎる」。主人公の感情の起伏を表現したものでしょう
・建築家の「半生」を描いたヒューマンドラマ。215分長尺映画。覚悟が必要(笑)
・皆さまの素晴らしいレビューの数々
で、鑑賞後は、エイドリアン・ブロディの演技力に驚嘆しました。
ゴールデングローブ、オスカーの受賞、当然の結果ではないでしょうか。
以下、ラースロー・トートの出自、生き様、感情について。
真珠湾以外に攻撃を受けなかった米国は建設需要は少ないはずで、ラースローは、建築家としての勲章は捨てたのだなと。それでも米国を目指したのは、ホロコーストから生き残ったことで、何よりも自分自身や家族の命と精神的な自由を求めることを優先したのかなと。
生きているだけで儲けものと思っていたところ、わらしべ長者的なラッキーが重なり、当然、人間としての欲が出てきます。芸術家としてのプライドやそれによる葛藤が生まれ、それまでは穏やかな性格で他人との衝突は無縁であったのが、時として無碍にエキサイトするシーンがインサートされます。
米国上陸直後の娼館を出たときに、タバコを燻らす娼婦から掛けられた言葉で彼の性癖は〇〇かも?と。その後、性的なシーンがいくつかありますが、ラースローの苦悩を表現するような表情のカットが印象に残っています。♂としてダメなのでしょうね。妻エルジェーベトとの関係性にも大きく影響しているように思います。
芸術家気質ゆえの繊細さでしょうか? アル中(?)、ヤク中(?)も加わります。
このバックグラウンドと誰にもわかってもらえない孤独を演じるブロディの姿は、私の素人眼に強烈なパンチを喰らわせましたね。
半生ですから、老後もあるのですが、自由発想で。私は、家族仲良く穏やかな時の流れをイメージしました。
以下、作品と撮影、音楽について。
やはり、同じ時代設定のゴッドファーザーを思い出さずにはいられませんでした。
コッポラもラースローのセリフと同じようなことを言ってましたよね。
コルレオーネ・ファミリーがニューヨークで暗躍した同じ時代に、やや西側に位置するフィラデルフィアとペンシルベニア州の田舎町(ロケ地はハンガリーか?)を舞台にストーリーは展開します。
ただし、超有名なフィラデルフィアのロケ地(ロッキーステップ)は、残念ながら登場しません。
シークエンスの切り替え時に車載カメラが捉える道、空、道沿いの緑が印象的です。
おそらく、ラストメッセージの伏線でしょう。
驚いたことに15分間のIntermissionがあります。歌舞伎じゃあるまいし・・・。
たぶん、配慮に見せつつ演出ですね。
なぜなら、休憩時間にスクリーンに投影されるポートレートが意味を持っているからです。多くの方がトイレに席を立つでしょうが、よく観ておくことお勧めします。
撮影班、ロケ地の素晴らしい景観も奏功してとてもよいです。AI画像も自然に思えました。
カット割りと音楽のシンクロ、カッコイイと思います。時代に合わせた選曲もグッドです。
ただし、スタッフロールだけは面食らいました。何があったの???
プリプロ(脚本、コンテなど)もポスプロ(編集など)も観客心理を考え抜いた結果の大作でしょうから、製作側にとっては、一欠けらのミスもないのでしょう。恐れ入りました。
おまけ。
ガイ・ピアース、いいなあ。L.A.コンフィデンシャルの頃から好きだなあ。
オスカー取らせたかったなあ。
ストーリー➕壮大な景色が見応えあり
ホロコーストを生き延びたというコメントからそういう要素の映画を想像していたが,これは全然違った。
1人の芸術家の半生が描かれていた。もちろん人種差別的要素も多分にあるけれど、1番の見応えは自分の求める芸術を実現しようとする彼と,それをお金と権力の力で押さえつけてくる者たちとの戦いであり、薬に頼って壊れていく彼の苦悩だ。妻の言う,彼にとっては台所を作り直すくらいのこと、とても刺さった。聡明な妻だ。
そして,特筆したいのは,壮大な景色。映画館で観る価値のある映像だった。
アメリカでのユダヤ人 リアルすぎるフィクション
映像が素晴らしくどのカットも見応えがある、誰かが言ってたどのカットをTシャツにしてもいい映画とはこのこと。
音楽も素晴らしく、作品の憂鬱感と壮大さを反映していた。
休憩時間に入ってもらったパンフレットを読むまで実話に基づく伝記映画の類だと思っていたので、完全なるフィクションだとわかった時はすごいびっくりした。第2篇からフィクションだということを意識すると、映画のリアリティのあまり、気持ち悪ささえ感じた。何年かけて構想したんだ!?
アメリカの白人富豪達はどんな人種でも実力は十分に認めてくれ、仕事させてくれるが、やはり人として下に見てくるんだなと感じた。
にしても、この映画は決して差別される側に甘い訳じゃなく。アメリカにいるユダヤ人達の被差別意識をやんわり批判し、シオニズム運動という名の幻の居場所探しもネガティブに表現されていたと思う。
この映画はとてもデザイン性、アート性に優れていて、好きな人はとことんすきになる映画だと思う。私はまあまあ好き、でももう1回最初からは観たくない。
有識者に教えて欲しいのだが、人々がぞろぞろ丘に登るシーンはなにかのオマージュなのでしょうか、バビロンでも観たことがある構図だったので気になった。
もしかして一番最初らへんのゴジラ?
映画館で観る長尺映画が大好きです。 家とかスマホでは味わえない良さ...
斬新で独創性が凄い。ドラマ的にも濃くて人間の郷の深さを炙り出す。
野心家が考え抜いた奇抜さが光る。
その点は大いに認めます。
この映画は比較的に低予算で作られたと言う。
それにしては凝ったカメラワークだ。
《優れてる点》
①タイトルロールのカッコ良さ。
まるで書籍のレイアウトみたいな凝った文字が横に流れる所、
グラフィックデザインとして面白い。
②音楽・・・場面、場面を盛り上げ、先導して驚きを誘う。
正にラストのヴェネツィアで行われる現代建築のビエンナーレ展・・・
そのオーケストレーションの華やかさ、
そしてエンディング曲ははガラリと現代的なテクノポップで
ガンガン鳴らして盛り上げる。
実に見事なものだ。
《否定的な気持ちになる点》
①虐げられてきた民族の持つ被害者意識は当然だと思う。
②著名な建築家ラースロー・トート(エイドリアン・ブロディ)の、
その建築家としての凄さが見えてこない。
★トートが架空の人物であり、映画はフィクションであることから、
『TAR』と比較されがちだが、ター(ケイト・ブランシェット)は、
トートの数倍、天才肌で、実際天才に見えた。
エイドリアン・ブロディのどこに天才のカリスマ性があっただろう?
★☆予算の関係で勿論実際に建築することは叶わず、殆どがVFX。
一番肝心の後半の殆どを費やす、恩人の大富豪のハリソン・ヴァン・ビューレン
(ガイ・ピアース)が母親を記念して建築する
コミュニティセンター。
ネタバレになるがその完成した姿は、ナチスの強制収容所を模した建築物・・・
と言うのだが、31メートルの高さの吹き抜けにで天窓もあり光も差し込む。
そこが強制収容所だと聞かされても、とてもそうは見えないのだ。
ブルータリズム様式建築の素晴らしさが、浮かんでこないのだ。
❷何より驚いた点。
妻のエルジェーベト(フェリシィ・ジョーンズ)が、10数年ぶりの再会で、
いきなり車椅子に乗って現れたのにも驚いたが、
もっと驚いたのは、恩人のヴァン・ビューレンの家に乗り込んできて、
「お父さんは“レイプ魔“」と喚き散らす所。
1911年生まれなら、トートは30歳を大きく超えていて、自由恋愛であり、
どちらが誘ったかも、ゲイだとか?恋愛感情があったか?とか、
レイプシーンなんてまるでないし、これは夫からの情報なのか?
それにしても伏線となるシーンがほしい。
あまりにも唐突で恩人に失礼で、“恩を仇で返す“そのものではないのか?
これが顕著な欠点です。
❸アカデミー賞主演男優賞を受賞したブロディの
スピーチの長さと内容のなさ。
好きな点や嫌いな点を挙げできましたが、
映画館で観て良かった事は確かです。
3時間半の上映時間と、間にあるインターミッション。
後半は甘いコーヒーとポップコーンを食べながら、
リラックスして観れました。
思ったより難解な映画ではなかったです。
ただ勿体ぶった、ハリソン・ヴァン・ビューレンとか、
(貴族と書いてあるのもあって、アメリカに貴族吐いないですし、
東欧から亡命でもしたのだろうか?
トートの妻のエルジェーベト。エリザベスでダメなの?
全てにおいて、気取り過ぎてるよ。
でもガイ・ピアースはとても素敵だったし、
フェリシィ・ジョーンズの頑張りにも目を見張った。
作曲賞と撮影賞は、おめでとうと言いたいです。
余韻ブレイカー
真実の重みを感じたかった
ハンガリー出身のユダヤ人建築家、ラースロー・トートは大戦中のホロコーストを生き抜き、戦後アメリカに渡った。彼は生き別れた妻を苦労の末に呼び寄せ、困難と闘いながら米国で再び建築家として成功する―。
本作は、そう描いているがトートなる建築家は実在せず、まったくのフィクション、作り話である。しかし、その「事実=物語は事実あった話を基にしたものではない」を知らないまま映画を見ると、よくできた話に引き込まれ、なかなかによくできた映画だ、と思った。
鑑賞後、調べてみるとそんな建築家はいないということを知り、なんだか白けた感じ、だまされたような気分になった。
映画は「お話」でしかない、それを味わえばいいとうのであれば、これはこれでいいとも思えるのだが、事実を基にしたフィクション、登場人物は本当に存在した人であれば物語にもっと重みと手触りを感じたと思う。
つまり、監督、脚本家―作り手―の都合に合わせたホロコーストをサバイブしたユダヤ人というある意味で類型的なドラマになっただけ、という点にどうにも軽さを感じた。
オスカーを獲得した主演のブロディの芝居は過不足なく登場人物になりきった名演なのだろうが、それがきれいにはまりすぎている点に飽き足りなさを感じた。
オスカー3部門を獲得した作品だけに、それをチェックしたい人は見ればいい。だが、そういうこだわりを持たないのであればわざわざ休憩時間まで設定された長尺作品を見るほどではない。
東京都心のシネコン、平日昼間の入りは3割ほどか。あまり観客からも熱を感じなかったのは、ぼくと同様な印象を持ったからではないか、と勝手に思っている。
にしても、戦後80年の今年、日本映画でそれをテーマにしたようなものはないのだろうか。
昭和のはじめから戦中戦後をはさんだ30年くらいには、現代人には想像できない数多のドラマがあったはずだ。もちろん、昭和50年代以前にはそうした作品もあっただろうが、21世紀の今、再びそういうものを撮ろうとする映画人はいないのだろうか。
逆自由の女神は逆十字架
劇中にも出てくる建築ビエンナーレの展示作品のような映画だ。
映像や音、構成において、芸術的かつ実験的な手法を駆使しており、
IMAXで、
教会の建築シークエンスから、
【もっと光を】のシーンは観る者に一種の美的衝撃を与える。
ストーリーテリングは、
もちろん典型的なエンターテインメント映画とは一線を画している。
物語の中心には、主人公ラースロー(ラザロの復活とは無関係ではないだろう)のブルータルなパッションがひたすら描かれ、
彼の内面の葛藤や欲望がそのまま視覚的に表現されていく。
登場人物やストーリーの論理的な繋がりを可能な限り削ぎ落とし、
感情の爆発を直接的に伝えるスタイルが、
アート映画の枠組みを超えて、A24らしい独自の力強さを持つ。
映画の中盤で挿入されるインターミッションは、
この作品の特異な構成(ブルータルな建築のような)を象徴している。
100分が経過し、
急転直下でアメリカスティールの歴史が怒涛のように展開され、
観客は一瞬の休息を得ることになる。
劇場の照明がアップし15分の休憩、
効果音で観客の感覚をリセットさせた後、
再び映画は加速する。
この緊張と緩和のリズムは、
視覚的な印象を強烈に残し、
観客の感情を揺さぶり続ける。
色調においてもカメラは常に変化し続け、
シーンごとに色調やフレームが変化するのはA24作品ではおなじみだ。
特に60年代ハリウッド映画風の色調が際立っており、
4原色でいうとCMYKの「Y(イエロー)」を強調した映像が印象的だ、
しかし、A24らしい転調の連続でY好きな観客は消化不良化かも。
色のトーンが一瞬で変わることで、
観客はその予測不可能性に引き込まれるのも、
狙いなのかもしれない。
ガイ・ピアースが演じるキャラクターは、
作劇の観点ではあり得ない展開を見せるものの、
文学的な解釈の下では非常に魅力的である。
そのキャラクターの存在自体が、
映画全体のテーマにうまく溶け込んでおり、
観客にとってはその不条理さこそが魅力となり、
映画製作そのものをイメージする人もいるだろう。
逆自由の女神は、
ワイダの逆十字架、
山の端シルエットは、
ベルイマン、
巨大建築物を引いて、
小さな存在にみせるのは、
ダヴィアーニ兄弟のカメラと、
美術、
カメラは名機ARRI435を使用はスピルバーグか、
昨今流行りの、
プリントに白パラ(白いゴミ)。
本来は白は技術的なミス、
黒は何度も映写されている証し、
ビエンナーレの狙いであればよし・・か・・
そういうのは風化していくのだろう・・・
他もいろいろ。
無にも満たない
こないだ鑑賞してきました🎬
建築家ラースローの数奇な運命を描く、200分超えの壮大なストーリー。
ラースローを演じるのはエイドリアン・ブロディ🙂
建築家としての腕は確かで、彼なりの美学も持っています。
一方、煙草の本数はかなり多く、ドラッグもやっており、破滅的な面も。
時限爆弾にも似た刹那的とも言える演技、アカデミー主演男優賞に輝いただけあります。
ラースローの妻エルジェーベトにはフェリシティ・ジョーンズ🙂
彼女は初めて観ましたが、知的な印象を受けますね。
夫との手紙のやり取りもスマートな感じで😀
時折みせる鋭い表情と、数回ある痛みを訴えるシーンではまさに迫真の演技でした。
ハリソンにはガイ・ピアース🙂
初登場時は怒鳴り散らし、かんしゃく親父にもみえますね。
しかしラースローの経歴を知ってからは、彼を雇い入れますが…。
ただの富豪では終わらない、抜け目なさが見え隠れする演技でした🤔
途中15分の休憩をはさみ、約3時間半の上映時間の本作。
覚悟して臨みましたが、それでも長かったです😅
しかしホロコーストを生き延びた男の壮大なヒューマンドラマは見応え充分👍
アカデミー主演男優賞も受賞しているので、ぜひ映画ファンには観ていただきたい🎬
そして、一日をこの映画に費やすつもりでいくのがベストです🖐️
天才建築家と傲慢なパトロンの確執…という「フォックスキャッチャー...
天才建築家と傲慢なパトロンの確執…という「フォックスキャッチャー」的なストーリーよりも、建築そのもの(とその建造過程)こそがこの本作の主役。それぞれに悩みや欠点を抱えてドロドロとした人間模様を遥かに見下ろし、大地に屹立する建築の、なんと荘重な姿!作中で建築家の理想、として掲げられる以上の偉容で、抜群に決まった劇伴も相まって、この3時間超のドラマを一瞬も弛緩させない迫力に満ちている。冒頭の移民船の狭苦しさから、外へ出て目にする逆さまの「自由の女神像」のシーンが示すように、緊張と解放、明暗のコントラストが凄まじい。冒頭は左から右へ、終幕ではななめに流れるスタッフロールも実に洒落ている。おそらく前述の理由で人間ドラマとしては敢えて描き切っていない部分もあるが、ガイ・ピアースの暴君ぶりは劇中随一の怪演として褒め称えられるべき。
な、ながすぎ…
私にはピンとこない映画やったなあ。前評判でアカデミーを狙いすぎとか言われていたが題材からして確かに意識しすぎなのかなとは思う。
上映時間脅威の215分。絶対にお手洗いいきたくなるやん!何考えてんねん!なんて思っていたが100分くらいで15分休憩が入るのでトイレ心配な人はご安心を!
3時間を超えるような長い映画はこの映画のように休みを入れてくれるとほんとにありがたい🙏
物語冒頭は収容所から無事脱出した後のシーンからスタート。アメリカンドリームに期待する主人公。収容所での困難はおそらく時間の問題で入れられなかったのかな?アメリカに渡った主人公に困難が…とか思いきや割と幸運が続き責任ある仕事を任せられることとなる。仕事の重圧とハリソンとの不和によりラースローと妻の間には歪みが生じていく。序章、第1章まで物語に入り込むことが全くできず関係ない仕事のことを考えていた。2章の妻エルジェベートの出演開始くらいからようやく集中。フェリシティジョーンズの夫思いで苦しみを抱えた妻役、熱演やったなあ。
ほぼ4時間という大作ではあるんやけど物語の緩急がほとんどないため眠気に負けそうに(1章あたりは負けました)
今回主演男優賞でノミネートされていたのは実在の人物を演じた人たちが多かった!
ボブディランに扮したティモシーシャラメ、トランプ大統領を演じたセバスチャンスタン…ラースロートートは実在の人物かと思っていたがフィクションだと知り驚き。皆さん熱演には違いない。
ただ、このラインナップみるとどうしても主観バリバリでセバスチャンスタン(トランプ政権化ではとれないよね)やティモシーシャラメよかったやん…ブロディ、戦場のピアニストで取ってるからええやんなんて思ってしもた🙄
ユダヤ人建築家ラースロー・トートの半生を通してアメリカの闇が見え隠れする秀作
初のIMAX鑑賞です。なぜ今まで見てこなかったかというと料金が高いからです。そしてなぜこの作品をIMAXで見たかというと都合の良い時間はIMAXしか上映がなかったからです(笑)
エイドリアン・ブロディのアカデミー主演男優賞受賞に納得の作品でした。215分の長尺に尻込みしてましたが、途中休憩が15分あり、内容的にも映画に没入でき上映時間は全然気にならなかったです。リアル・ペインもそうでしたがこの作品もホロコーストを内包した映画でした。なんだか最近多いように感じます。
1951年ホロコーストを生き延びたユダヤ人建築家ラースロー・トートはブダペストからアメリカに渡るが、そこは決して安住の地という訳ではなく苦難の連続で…というお話で、昔から建築に興味のあった私には興味深いお話でした。
入場時に「建築家ラ―スロー・トートの創造」というリーフレットをもらったので、てっきり実在する建築家かと思ってましたが上映後調べてみると創作だったことに驚かされました。ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展とか実際にある祭典まで登場するので、リアリティを追求する徹底ぶりがすごい。それに加え、エイドリアン・ブロディの迫真の演技。
映像美も随所に感じられました。画面構成など美術センスも良い映画だなあと感じました。
大理石の白い採石場のシーンも印象に残りました。
ラースローは結局実業家ハリソンに振り回され続ける訳ですが、この富と権力を振りかざす嫌な人物がまるでアメリカを象徴するかのような人物として描かれているのですが、昨今のアメリカとシンクロするようでそれはそれで恐ろしいと思いました。
ホロコーストの影響で骨粗しょう症になり歩けず痛みの発作に苦しめられる妻エルジェーベト。
話すことができなくなってしまった姪のジョーフィア。
そしてラースローはドラッグ中毒から抜け出せない。
しかし、ハリソンにとっては所詮他人事なんです。
彼にとっては富と権力と名声が大切なのであって、それ以外には関心がない。
逆に鉄道事故などでそれらが脅かされたときには平気で雇い人をクビにし、とにかく自己保身が最も重要といわんばかりの行動をみせる。
もっとも許せないのはラースローの才能に嫉妬し支配欲に駆られ〇〇〇するところです。
妻エルジェーベトがハリソンの屋敷に単身乗り込み告発する場面は見応えありました。
そして行方不明になったハリソンを捜索中にラースローの設計したコミュニティセンターの教会の天窓から月の光が差し込み十字架が映し出されるという見事なオチ。
大作だけあって中身の濃い映画でした。これはこれで一大叙事詩ですね。
しかし、実業家ハリソンという人物を通して現在のアメリカの闇が見え隠れしてしまうとは、結局のところそれが主題なのかもしれませんね。
今のアメリカは決して自由の女神に象徴されるような自由な国ではないのだと。
長い割に全く面白くない
暗い、長い、抑揚そんな無い、ノンフィクションじゃないらしい、内容濃くもないわで別に3時間半もかけて観るような内容じゃないな
という評価です。
感動も興奮も何もありません。
もっと時間削れるし、
もっとテンポ良くできるし、
もっと盛り上げれるんじゃないですか?と見ていて思いました。
そんな面白くありません。
アメリカの差別と偏見の現実
戦後数十年に渡って建築家の人生を追いかける物語となると、アメリカンドリームを掴んだ成功譚が描かれると思いがちだが、さにあらず。むしろ真逆で、自由を夢見てやって来たアメリカで差別と偏見にさらされ、札束で人の頬を引っ叩いて服従させるような資本家に理想を蹴散らされる移民たちの現実を、ラースローとその家族たちを通して描かれている。それは(すでに何人かの批評でも言及されているが)エリス島に到着して船底から這い上がってきたラースローの目に自由の女神が逆さまに映っていることに象徴されている。
もちろん、当然のようにイスラエル建国とシオニズム運動についても触れられるが、自分の信念を貫き通す姿勢と、商売のためなら信仰も何もすべて擲(なげう)つ従兄弟のアティラなどの姿勢との対比を通じて描かれている。とはいえ、信念を貫き通す鉄の心を持っている訳でもなく、欲望にも負ける人間らしい弱さも同時に描かれる。
どの国においても、明るい面だけが存在する訳ではなく、弱い者同士が手を携え合って行かねば生きていくことすら難しい負の側面も必ずある。
図らずも、移民の苦労の上に成り立っているにも関わらず移民を排斥しようとする人物が大統領の座につき、金の力で好き勝手に振る舞う大富豪が側近として重用されている目の前の現実を、ここに描かれている何十年も前の出来事と重ねずにはいられない人々も少なくないのではなかろうか?
しかも、トランプは2020年当時にブルータリズム建築を槍玉に上げて、連邦政府の建物は美しい建築でなければならないという大統領令を出したそうで、本作が紛れもなく現代批評になっていることが分かる。
ちなみに、芸術家を描く作品だからだろうが、映像にもそのセンスが発揮されているらしく、デジタルではなく、あえてワイドスクリーンのビスタビジョン方式でフィルムを使って撮影されているそうだ(故の、オスカー撮影賞?)。しかも、冒頭と最後のクレジットを表示するテロップも、こんなの見たことない!というフォーマットになっている。
「重厚」だが「浅い」のでは?
自分の人生を建築物に取込
完璧すぎて、少し息苦しいかも。
「到達地」より「旅路」を愉しむ映画
「大事なのは到達地で、旅路ではない」という台詞とは反対に、「到達地」より「旅路」を愉しめる映画だった。自分は、建築家でも移民でもユダヤ人でもないので、ラースロー(Adrien Brody)の気持ちを分かった気になりたくない。それでも3時間長、居場所なき建築家の流浪から目を離せなかった。終盤に妻が投下する爆弾や姪が語る種明かしが「到達地」であったとしても、ラースローが苦闘する「旅路」こそ愉しめる快作だった。
⛪️
1. 居場所なきユダヤ人
序盤で印象的だったのは、娼館で投げつけられる言葉。ラースローの娼婦への美的評価への買い言葉ではあるが、お前の顔こそ醜いとう返答は強烈だった。ユダヤ人は、鼻の大きさや形を何かと揶揄されガチ。ホロコーストを何とか生き延びたラースローに、USAでも投げつけられる分かりやすい差別。新大陸での生活にも暗雲が漂う滑り出し。
とは言え、本作の終盤でも語られる通り、ユダヤ人はシオニズム運動の結果、イスラエルという「到達地」を得る。何世紀にも亘る迫害を考えれば、「祖国」の新設は悲願だったろう。ただその為に追い出されたアラブの民(パレスチナ人)はどうなるのだろう。幾度の戦争で領土を拡大し、パレスチナ人を虐げてきたイスラエルは、ヒトラーと何処が違うのだろう? 「結果が大事で過程はどうてもいい」だって? イスラエルの安穏という結果の為に、ガザを殲滅しまくるユダヤ人がどんどん嫌いになっているのが、現在の偽らざる感情。
🏡
2. 椅子を照らし出す図書室に感銘
本作にグッと引き込まれたのが、ラースローがビューレン家に造った図書室。本棚を壁に埋め込み、雑多な家具は排除し、余白を贅沢に堪能する空間。天井から差し込む光に浮かび上がるチェアが何とも言えず美しかった。アカデミー音楽賞を獲った劇伴も素晴らしい。場面によって局長は千変万化するが、アートを表現する場面の音楽が、得も言われぬ心地よさ。
NHKドラマ『ノースライト』(2020)を想起した。横山秀夫・原作で、建築家が主役のミステリ。ブルーノ・タウトのチェアが重要な鍵となる。映像作品はやはり総合芸術。造形美の表現に、椅子と光とモダンな音楽の相性はいいらしい。
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3. レイプはあったのか?
終盤で妻エルジェーベト(Felicity Jones)が富豪ハリソン(Guy Pearce)に投げつける「強姦魔」。被害者はラースローらしい。映像的な匂わせは、大理石を求め訪ねたカッラーラ(イタリア)の夜。ヘロインに溺れたラースローを富豪はホテルのベッドで襲ったのか? エルジェーベトの伝聞以外根拠はないものの、直後にハリソンは疾走。1960年代前後、男色をアウティングされただけで自死してもおかしくない。ハリソンの生死は不明だが、ラースロー夫妻の告発が妄言でない印象だけが遺る。
敵地に単身乗り込んできたエルジェーベトの怒りは、再雇用後のラースローの様子のおかしさが、強姦に起因すると確信していたからだろう。ハリソンの息子に倒され引きずられても、毅然としたエルジェーベトに夫への愛の強さを感じた。
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4. 高い天井への拘り
1980年の場面で、ラースローが何故高い天井と、地下の通路に拘ったのか種明かしされる。部屋の狭さはナチの強制収容所を模したもの。天井の高さは自由の象徴。部屋を繋ぐ通路は夫婦の永遠の繋がり。
終盤の仕掛けに「へー」ボタンこそ押したが、伏線回収の心地よさはなかった。それ以上に、ラースローの人生の歩み一つ一つを堪能できた。
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László told his niece, "No matter what the others try and sell you, it is the destination, not the journey." However, I enjoyed the journey of László, but not his destination.
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