ブルータリストのレビュー・感想・評価
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ユダヤ人建築家ラースロー・トートの半生を通してアメリカの闇が見え隠れする秀作
初のIMAX鑑賞です。なぜ今まで見てこなかったかというと料金が高いからです。そしてなぜこの作品をIMAXで見たかというと都合の良い時間はIMAXしか上映がなかったからです(笑)
エイドリアン・ブロディのアカデミー主演男優賞受賞に納得の作品でした。215分の長尺に尻込みしてましたが、途中休憩が15分あり、内容的にも映画に没入でき上映時間は全然気にならなかったです。リアル・ペインもそうでしたがこの作品もホロコーストを内包した映画でした。なんだか最近多いように感じます。
1951年ホロコーストを生き延びたユダヤ人建築家ラースロー・トートはブダペストからアメリカに渡るが、そこは決して安住の地という訳ではなく苦難の連続で…というお話で、昔から建築に興味のあった私には興味深いお話でした。
入場時に「建築家ラ―スロー・トートの創造」というリーフレットをもらったので、てっきり実在する建築家かと思ってましたが上映後調べてみると創作だったことに驚かされました。ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展とか実際にある祭典まで登場するので、リアリティを追求する徹底ぶりがすごい。それに加え、エイドリアン・ブロディの迫真の演技。
映像美も随所に感じられました。画面構成など美術センスも良い映画だなあと感じました。
大理石の白い採石場のシーンも印象に残りました。
ラースローは結局実業家ハリソンに振り回され続ける訳ですが、この富と権力を振りかざす嫌な人物がまるでアメリカを象徴するかのような人物として描かれているのですが、昨今のアメリカとシンクロするようでそれはそれで恐ろしいと思いました。
ホロコーストの影響で骨粗しょう症になり歩けず痛みの発作に苦しめられる妻エルジェーベト。
話すことができなくなってしまった姪のジョーフィア。
そしてラースローはドラッグ中毒から抜け出せない。
しかし、ハリソンにとっては所詮他人事なんです。
彼にとっては富と権力と名声が大切なのであって、それ以外には関心がない。
逆に鉄道事故などでそれらが脅かされたときには平気で雇い人をクビにし、とにかく自己保身が最も重要といわんばかりの行動をみせる。
もっとも許せないのはラースローの才能に嫉妬し支配欲に駆られ〇〇〇するところです。
妻エルジェーベトがハリソンの屋敷に単身乗り込み告発する場面は見応えありました。
そして行方不明になったハリソンを捜索中にラースローの設計したコミュニティセンターの教会の天窓から月の光が差し込み十字架が映し出されるという見事なオチ。
大作だけあって中身の濃い映画でした。これはこれで一大叙事詩ですね。
しかし、実業家ハリソンという人物を通して現在のアメリカの闇が見え隠れしてしまうとは、結局のところそれが主題なのかもしれませんね。
今のアメリカは決して自由の女神に象徴されるような自由な国ではないのだと。
長い割に全く面白くない
暗い、長い、抑揚そんな無い、ノンフィクションじゃないらしい、内容濃くもないわで別に3時間半もかけて観るような内容じゃないな
という評価です。
感動も興奮も何もありません。
もっと時間削れるし、
もっとテンポ良くできるし、
もっと盛り上げれるんじゃないですか?と見ていて思いました。
そんな面白くありません。
アメリカの差別と偏見の現実
戦後数十年に渡って建築家の人生を追いかける物語となると、アメリカンドリームを掴んだ成功譚が描かれると思いがちだが、さにあらず。むしろ真逆で、自由を夢見てやって来たアメリカで差別と偏見にさらされ、札束で人の頬を引っ叩いて服従させるような資本家に理想を蹴散らされる移民たちの現実を、ラースローとその家族たちを通して描かれている。それは(すでに何人かの批評でも言及されているが)エリス島に到着して船底から這い上がってきたラースローの目に自由の女神が逆さまに映っていることに象徴されている。
もちろん、当然のようにイスラエル建国とシオニズム運動についても触れられるが、自分の信念を貫き通す姿勢と、商売のためなら信仰も何もすべて擲(なげう)つ従兄弟のアティラなどの姿勢との対比を通じて描かれている。とはいえ、信念を貫き通す鉄の心を持っている訳でもなく、欲望にも負ける人間らしい弱さも同時に描かれる。
どの国においても、明るい面だけが存在する訳ではなく、弱い者同士が手を携え合って行かねば生きていくことすら難しい負の側面も必ずある。
図らずも、移民の苦労の上に成り立っているにも関わらず移民を排斥しようとする人物が大統領の座につき、金の力で好き勝手に振る舞う大富豪が側近として重用されている目の前の現実を、ここに描かれている何十年も前の出来事と重ねずにはいられない人々も少なくないのではなかろうか?
しかも、トランプは2020年当時にブルータリズム建築を槍玉に上げて、連邦政府の建物は美しい建築でなければならないという大統領令を出したそうで、本作が紛れもなく現代批評になっていることが分かる。
ちなみに、芸術家を描く作品だからだろうが、映像にもそのセンスが発揮されているらしく、デジタルではなく、あえてワイドスクリーンのビスタビジョン方式でフィルムを使って撮影されているそうだ(故の、オスカー撮影賞?)。しかも、冒頭と最後のクレジットを表示するテロップも、こんなの見たことない!というフォーマットになっている。
「重厚」だが「浅い」のでは?
自分の人生を建築物に取込
完璧すぎて、少し息苦しいかも。
「到達地」より「旅路」を愉しむ映画
「大事なのは到達地で、旅路ではない」という台詞とは反対に、「到達地」より「旅路」を愉しめる映画だった。自分は、建築家でも移民でもユダヤ人でもないので、ラースロー(Adrien Brody)の気持ちを分かった気になりたくない。それでも3時間長、居場所なき建築家の流浪から目を離せなかった。終盤に妻が投下する爆弾や姪が語る種明かしが「到達地」であったとしても、ラースローが苦闘する「旅路」こそ愉しめる快作だった。
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1. 居場所なきユダヤ人
序盤で印象的だったのは、娼館で投げつけられる言葉。ラースローの娼婦への美的評価への買い言葉ではあるが、お前の顔こそ醜いとう返答は強烈だった。ユダヤ人は、鼻の大きさや形を何かと揶揄されガチ。ホロコーストを何とか生き延びたラースローに、USAでも投げつけられる分かりやすい差別。新大陸での生活にも暗雲が漂う滑り出し。
とは言え、本作の終盤でも語られる通り、ユダヤ人はシオニズム運動の結果、イスラエルという「到達地」を得る。何世紀にも亘る迫害を考えれば、「祖国」の新設は悲願だったろう。ただその為に追い出されたアラブの民(パレスチナ人)はどうなるのだろう。幾度の戦争で領土を拡大し、パレスチナ人を虐げてきたイスラエルは、ヒトラーと何処が違うのだろう? 「結果が大事で過程はどうてもいい」だって? イスラエルの安穏という結果の為に、ガザを殲滅しまくるユダヤ人がどんどん嫌いになっているのが、現在の偽らざる感情。
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2. 椅子を照らし出す図書室に感銘
本作にグッと引き込まれたのが、ラースローがビューレン家に造った図書室。本棚を壁に埋め込み、雑多な家具は排除し、余白を贅沢に堪能する空間。天井から差し込む光に浮かび上がるチェアが何とも言えず美しかった。アカデミー音楽賞を獲った劇伴も素晴らしい。場面によって局長は千変万化するが、アートを表現する場面の音楽が、得も言われぬ心地よさ。
NHKドラマ『ノースライト』(2020)を想起した。横山秀夫・原作で、建築家が主役のミステリ。ブルーノ・タウトのチェアが重要な鍵となる。映像作品はやはり総合芸術。造形美の表現に、椅子と光とモダンな音楽の相性はいいらしい。
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3. レイプはあったのか?
終盤で妻エルジェーベト(Felicity Jones)が富豪ハリソン(Guy Pearce)に投げつける「強姦魔」。被害者はラースローらしい。映像的な匂わせは、大理石を求め訪ねたカッラーラ(イタリア)の夜。ヘロインに溺れたラースローを富豪はホテルのベッドで襲ったのか? エルジェーベトの伝聞以外根拠はないものの、直後にハリソンは疾走。1960年代前後、男色をアウティングされただけで自死してもおかしくない。ハリソンの生死は不明だが、ラースロー夫妻の告発が妄言でない印象だけが遺る。
敵地に単身乗り込んできたエルジェーベトの怒りは、再雇用後のラースローの様子のおかしさが、強姦に起因すると確信していたからだろう。ハリソンの息子に倒され引きずられても、毅然としたエルジェーベトに夫への愛の強さを感じた。
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4. 高い天井への拘り
1980年の場面で、ラースローが何故高い天井と、地下の通路に拘ったのか種明かしされる。部屋の狭さはナチの強制収容所を模したもの。天井の高さは自由の象徴。部屋を繋ぐ通路は夫婦の永遠の繋がり。
終盤の仕掛けに「へー」ボタンこそ押したが、伏線回収の心地よさはなかった。それ以上に、ラースローの人生の歩み一つ一つを堪能できた。
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László told his niece, "No matter what the others try and sell you, it is the destination, not the journey." However, I enjoyed the journey of László, but not his destination.
アメリカンドリームって到着点が大事
まずは、本作品はフィクションです。
勘違いさせそうな展開は評価します。
序曲、主人公の姪が尋問をされています。その後、主人公が逃げるシーン、バックでは妻の手紙が読まれています。
この始まりと上映時間215分に不安を抱えながら観賞。
第1章
主人公がアメリカに到着したところからの始まりです。
注目すべきは高らかなファンファーレと逆さまに映した自由の女神。
新たなスタートに対する皮肉のようなシーンです。アメリカで成功した親戚をたより家具屋で世話になる主人公。ここからサクセスストーリーの始まりと思ったら、まさかの裏切りで宿無しになります。すると新たな光が届きます。主人公が著名な建築家とわかり、住まいどころか、妻と姪までアメリカに移住できることになります。
第2章
実業家から多目的なコミュニティーセンターの建築を任されます。しかしここでも様々な困難が発生し、遂には中止にまでいたりますが、完成することになります。
1947年から1980年を描いていますが、この長さの割には物足りないむしろカットしたな?と思う事があります。いきなり年数がとんだり、肝心の建築の様子も柱が立っていたと思ったら次は完成間近となっています。
異国の芸術性は憧れるが合理性にかけると金は出さない。
ユダヤ教よりキリスト教。
新参者はしゃしゃりでない。
屈辱されても受け入れろ。
アメリカドリームを求めたけど散々な旅路でした。
エピローグで、「大切なのは旅路ではなく到達点が大事」と語られます。
主人公の人生は救われたと思わせるラストだったのではと思いました。
215分 動画配信やDVDで鑑賞するにはかなりの体力が必要です。劇場で監禁されて観ることをお薦めします。
お尻がブルータル。
3時間20分あるから椅子の良い映画館を選ぶべし。
全く実在しない人間をよくここまで史実のように描けたなぁと驚愕する。たぶんそういう裏テーマで制作してだんだろう、脚本がすごいのか役者が凄いのか監督が凄いのか、、、全部か。
しかしぶっちゃけまいどのユダヤネタ映画なのでホロコーストや収容所の辺りはまだ分かるが、当時のアメリカでの風当たりや宗教的な異端視など不勉強な日本人にはピンとこない部分が多い。という訳で自分が完全にこの映画を楽しめてない事が残念である。
もう一つの軸は支配階級と下級市民、そして才能という物への羨望ってなかんじ。
話は大戦後生き残り才能あるユダヤ人の上がったり下がったり人生なんだけど、なんか後半の石切場のくだりが無理やりで唐突でイヤな感じがしたんだが、昔「パピオン」だったか「バーディ」だったか見た時に侮辱の仕方としてのレイプという存在が有ると知ったんだけど、それだったのかなぁ、、、。
あと最後の回顧展での説明は何だか設計思想が急に矮小化された感じがして残念に思ったなぁ。もっとスマートに中盤とかでやる事は出来なかったのかな?
音楽はその時代に合わせた作りになってるせいで最後がチャラい、、、と思ったら関心領域的後半無音、、、
どうしたいんじゃい!と思った。
あ、あとバウハウス出の主人公だからオープニングとエンドロールのタイトルデザインがカッコよい、マネしたい。
ユダヤ人建築家の半生
3時間超えと聞くと、毎回、躊躇。しかも皆さんの評価が結構割れている…でもそれで逆に興味が湧きました。
インターミッションのある映画は、2年前にリバイバル上映で見た「ゴッドファーザーpart II 」以来。
それに昔は休憩挟んで二本立てが普通だった。その時間感覚と同じ気分で行くかーと映画館へGO!
*****
やはり休憩があるせいか、そんなに長いと感じなかった。ぶっ続けにすると長く感じたかもしれない。
ホロコーストを生き延び、アメリカへやってくるハンガリー系ユダヤ人の建築家ラースローの半生を描いた物語。
妻と姪と離ればなれの前半と、2人に再会してからの後半。私は後半の方が良かったかな。
冒頭の自由の女神が印象的だったが、そのアメリカが彼らの新天地として相応しいものだったのかどうか。
とりあえず苦難と共に過ごすユダヤ人の彼らが幸せに見えなかったし、イスラエルに移住する あまり話さない姪が、ラストでラースローの道のりをスピーチ。そんなところにもユダヤ人の意思が表れてるんではないかと思った。
面白かったかというと微妙。
原題:THE BRUETALIST
スクリーンから緊張感が伝わらない。
アカデミー主演男優賞おめでとうございます。
3月の寒い朝、映画館に入りインターミッションもある長尺の作品を観たら冷たい雨は雪混じりに変わっていた。ハンガリーに生まれホロコーストを生き抜いたユダヤ人のラースロー・トートの物語だったので、彼はもっと寒い思いをしてきたんだろうなぁ、。とか思い家に帰ってから、映画館で渡された小冊子を観たら、最後のページの下に小さく「本編の内容は一部を除きすべて架空の内容」とあった。色々検索したら実はフィクションでしたのオンパレード。
実話感たっぷりの映画だったので、戦禍の中のホロコーストの画像は無くてもユダヤ人の苦難が想像できたし、最初の図書館や丘の上のコミュニティセンターの建築の様子は実在するブルータリズムなんだな、。とか思ってました。
壮大な歴史物語で色んなものが詰まっているが、観客に突きつけたいものが何なのかが凡人の私にはわからない。もう一度、ちゃんと見直してみてから考えてみたい。
本日がオスカー発表日、作品賞は逃したがエイドリアン・ブロディは主演男優賞を獲得。歴史に名を刻んだ作品となった。
私には難解過ぎる
A284 「2001年」以来のインターミッション
2025年公開
上映時間4時間弱!
絶対漏らすわ!
しかし注意書きで2時間弱で休憩に入ります、が
映し出され安堵。
で早朝上映だったので爆睡必至と思っていたのだが
結構見入れた。
ただ突き刺さる名作までは届かず。
ユダヤ人の話も欧米人程訴えられるわけではないので
インパクトにはならず。
ただ時間の濃さは凄い。出演者それぞれが物語に
浸りこんでいるなあ、と感心する。
それと最近は個人的に物語に外部ノイズが入るのが
嫌ではないんだがドキドキするもんで
しかし本作はこちらが想像できる線で抑えてくれているのも
ありがたい。
昨今のテレビ業界の正味1時間分しかないバラエティを
中身のないロゴ満載のうすーい4時間スペシャルとは
全然質が違う。比較するのも失礼なんだけどね。
クレジットがいわゆるパンフレット風になっていて
デザインの極致のような表し方も面白かった。
70点
鑑賞日 2025年3月2日 イオンシネマ草津
パンフ購入 ¥990
配給 PARCO/ユニバーサル映画
◇アメリカモザイク社会と建築物の構造
世紀のお騒がせ男-トランプ大統領は連邦政府が新設する建物は「人々の称賛を集める」古典主義建築が望ましいとする「美しい連邦公共建築(Beautiful Federal Civic Architecture)」と題された大統領令を発令しました。自らの趣味を押し通し、ブルータリズムやポストモダン建築のデザイン性を否定するような独断的大統領令に対して、米建築家協会は全面的反対を表明しています。
この映画の主たるモチーフである"ブルータリズム"は戦争と深い関係を持った建築様式でもあるようです。コンクリート打ちっ放しの幾何学的直線から成り立つデザイン。第2次世界大戦で荒廃した都市の復興の際、予算が不足していてもコンクリートは容易に安価に調達可能であり、大量に均一的に入手されたコンクリート建築には、短い工期で建設可能というメリットもありました。
主人公の建築家、ラースロー・トートは、明るい未来への希望を抱いてヨーロッパから渡米したユダヤ人です。しかし、理想やあるべき姿を明確に抱いた彼の設計姿勢は、アメリカの気まぐれな資本主義的妥協の産物社会の中で、大きく蛇行し取り止めもなく迷走を始めます。
多種多様な民族の寄せ集めであるアメリカ移民社会の特徴は、究極の相対主義なのかもしれません。多種多様な宗教や主義主張、民族的人種的な価値観の相違を越えて、資本(お金)こそが客観的な正義なのです。
215分という上映時間。100分(前半)+15分(休憩)+100分(後半)という建築物のように整然とした構成。建築家の天井高へのこだわりの種明かしを聞かされる結末に、この作品が独りよがりの建築家の伝記だけにとどまらずに、これからのアメリカ社会におけるそれぞれの生き様についての問題提起であると痛感しました。四角い部屋で分割されたコンクリートの教会は、人種や宗教、性別や貧富の差によって細かく分断されていくアメリカ社会を象徴するものでもあったのです。
とても上質で訴える力は強い映画だったが ぶっ刺さるところまでは至ら...
長さを感じさせない
インド映画顔負けの尺の長さ。
や、これは水分取らないでおこ、と。
でもインド映画にはないインターミッションがあった!
しかもたっぷり15分。
実話かと思ったが、創作?
渡された特典パンフを見てうっかり騙されそうになったわ。
実在の建築家かと。
しかしハンガリーからアメリカへ。
必死の思いで船に乗って来たユダヤ人は実在しただろうな。
アメリカ人には理解出来ない薬に頼ざるを得ない彼らの苦悩。
幸せになるかと思いきや…
ちょっとわからなかったのは最後の奥さん殴り?込み。
薬漬けなのは旦那さんだったのでは?
そしてキャラ変した姪っ子。
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