劇場公開日 2025年2月21日

「天才と対峙する凡人の葛藤」ブルータリスト HKさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5天才と対峙する凡人の葛藤

2025年3月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

アメリカンドリーム、移民、宗教、人種差別、音楽、麻薬、芸術家の業、
など様々な要素が200分超で描かれるが、
趣向を凝らした美しい映像表現も多く、
退屈さを感じることは全くなく、最後まで楽しく観ることができた。

一方で、これだけの密度、ボリューム感ある大作にも関わらず、
ガツンという重量感、鋭く突きつけられる感じ、
呆然とさせられるような圧倒的な余韻の少ないのが不思議。

それは、主人公トートの建築家という独りでは完結しない職業柄と、
そこに付きまとう現実のあれこれの描写によって、
天才的な芸術家にありがちな超人的な存在感や傲慢さが少ないこと、
一方で、トートに羨望の眼差しを向けつつ、
大富豪でありながらも人間としての器が卑小で、
破滅的に複雑な自己矛盾を抱え込んだ対峙するハンソンが、
あまりにキャラクターとして魅力的で際立っているのが要因かと思った。

とはいえ、当時のアメリカの主に影の部分の歴史の一端を垣間見られる貴重な機会でした。

HK