「何かありそうで何もない」ブルータリスト ヘルスポーンさんの映画レビュー(感想・評価)
何かありそうで何もない
本作で1番良かったのはインターミッションでした。
215分の大作。途中休憩のインターミッション15分付きという往年の格調高い映画のような風貌で、とてもワクワクしながら観賞。
デザイン性の高いオープニング、逆さまに画面に映り込む自由の女神("不自由"な国アメリカへようこそ!の意味か)、建築の力強さを体現するようなチェロとピアノのミニマルで極太の音楽、これまたデザイン性の高い斜めに進んでいくエンドロール。カッコいい!!
しかしそれだけの映画だった。
私も建築士として仕事をしており、この映画は色んな意味で楽しみにしていました。
主人公は架空の建築家だが、ナチスによって閉鎖された世界初の建築専門の学校「バウハウス」出身ということで、同じくワルター・グロピウス、ミース・ファン・デル・ローエの歴代校長2人がドイツからアメリカに亡命し、アメリカの建築史に多大な影響を及ぼしたことを思い出した。
そんな実在の建築家の半生を追っていく伝記映画風なのだが、実在の人物ではないのこの映画がどこに向かっているのか全くわからない。
移民問題の描き方にも新鮮味はない。イスラエル、パレスチナ問題に踏み込むなら名作になったかもしれないがそうではなかった。
また、肝心の建築や家具描写も薄味で残念だった。ラストのネタばらしも蛇足に感じた。言葉だけで説明するとは。
資材搬入中の事故で取り乱す実業家やそれが理由で計画自体がなくなってしまうというのもあまりリアリティがない。アメリカの超高層ビルの建設で一体幾つの事故があっただろうか。極めて現代的なコンプライアンスをもった実業家だった。
しかし、そこをエイドリアン・ブロディ、フェリシティ・ジョーンズ、ガイ・ピアーズの好演で中身のないキャラクターに何とか説得力を持たせていて流石だと思った。ここは素晴らしかった。70㎜フィルムで撮られた映像も綺麗だった。長回しの演技の見せ場もあり、こういった映画はやはり残っていって欲しいと思う。1.5倍速でなんて観られてたまるか!
監督のブラディ・コーベットさんは俳優でもあり人気ドラマシリーズ「24 -TWENTY FOUR-」のジャック・バウアーの娘キムの恋人役。
こんな立派な映画を撮るお方になってしまうとは。
こちらこそありがとうざいます!Moiさんのレビュー共感で首がもげる程頷きながら見させていただきました!他の作品のレビューも時間を見つけて読ませていただきます!
よろしくお願いします🙇♂️
お返事ありがとうございました。
納得しました。やはりハリソンの心の闇は深いという事ですね。トート本人の感性も本来の人生を破壊されて可愛そうな程深い負のエネルギーに満ち溢れていましたが。
Moiさん
コメントありがとうございます!コンサル会社を入れるのはある程度大きなプロジェクトではありますね。ただ直接施工者に設計変更指示を出すことはないです笑 また、階高を変えるのは中々大きな設計変更ですので、構造耐力等を再計算しないといけなかったり、おっしゃる通り現実的ではないですね。
あれはやはりハリソンは心の中ではランスローのことを信用していないというシーンだったと思います。
映画を観ていてあり得ないのでは?と感じたのですが、実際それなりの知名度のある建築設計者が建物の設計建築で一旦決まった階高や居室の設計内容を施主の意向とは言え別の設計家からのコンサルティングを受ける事ってあるのでしょうか?突然の質問ですみません。建築のお仕事に関わりがお有りとの事、宜しくお願い申し上げます。