ザ・ルーム・ネクスト・ドアのレビュー・感想・評価
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鮮やかなNY
アルモドバルが撮るとNYがこんなにも鮮やかになるのかと思った。赤、緑、黄色がとても映える。鳥の声、ひらひら舞う雪。
スペインに行ったことがなくてアルモドバルでしか知らないから、行ったらがっかりするかもしれない。
特別仲が良いわけでもない、何番目かの友達同士というのがいい。死に向かいながらも深めていく仲、新しく積み重なる思い出。そうして2人は永遠になる。
娘と生きて和解するのではなく、死んでから分かりあうのもしみじみとした。生きているときはうまく行かなくても、分かり合えるときは来るし思いは届く。
アルモドバルは確かお母さんを亡くしたと思うんだけど、それを経ての母娘関係の描き方のように思った。
子がいてもいなくても、死を迎えるときはひとり。この辺りはゲイなど子のない人々への優しさを感じた。
戦場でいつも死が身近にあった彼女にとっての生と死とは。ベトナム帰還兵の深い傷。戦場で恋人と生き抜くこと。
あんなすごい家どうやって見つけたのだろう。月100万くらいで借りられるのかなあ。病院の個室といい、住んでるアパートといい、ものすごくお金持ちだ。
警官役に見覚えがあって、アレッサンドラ・ニボラって名前が懐かしかった。
英語のアルモドバルはいつもより素直に見られる気がした。もっといろんな街を撮ってみてほしいなあ。若いころのエネルギッシュな感じから、円熟味を増してこれからの新作がますます楽しみだ。
美しい最期を描いた美しい映画
痛みと苦痛に耐えてまで効果が不確かな新治療を受けることを拒否し、人間らしい最期を望む女性と、彼女を理解し寄り添う親友の姿に心から共感する。
安楽死の是非を安っぽく云々することなく、そういう選択をした女性をただ淡々と描いている。
スクリーンはとにかく美しい!
窓から見る景色は全て完璧で翳りなく、雪の降る様子も、森の木々を通して見る空も、何もかもが永遠を思わせるように輝いている。
最期の数日を過ごす女性のカラフルな服装もとても似合っている。
最後の一日まできれいに装う女性の生き方が、イコール彼女の死に方であることが悲しい。
主演ティルダ•スウィントンの中性的な佇まいは、まだ生きているのかすでに死んでいるのかどちらでもない、あるいはどちらでもあるような揺れる魅力を放っていて、その魅力に釘づけになる。
▪️最期の地として選んで借りた家の冷蔵庫を開けた時に、おーいお茶が入っていて笑った!
ただただ美しい
アドモドバルの作品はたくさん見てきたが、僕にとってこの作品は間違いなく最高傑作である。
画面一つ一つがまるで絵画のよう。耽美主義者アドモドバルの面目躍如というところ。家具や家財道具の色遣いから配置、構図まで丹念に配慮した映像。美しい画面にくきづけの2時間。
生きることと死ぬことについて語り合う二人。ティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーア、まさに名女優の二人芝居である。一つ一つの言葉をすべて聞き逃すことなく映画を観ることは難しい(もう一度観てみよう)。死生感は人それぞれ。しかし自らの尊厳を保ちつつ生き、そして死を迎えたいという考えに異論はない。尊厳とは何かという問いに対する自分なりの答えが見つかれば生き方、死に方に対する答えも自ずと決まるだろう。
エドワード・ホッパーの絵画から抜け出たような無機質の美しさを湛えたスウィントン、病におかされ痩せた彼女が綺麗に化粧をし自らの身体に命を吹き込み、そして静かに最期の時を迎える。その神々しさにはただただ息を呑むばかりだ。
勘違い
難しいテーマの映画を美しく
素晴らしい作品。
新作で傑作に巡り会える経験は、私には数年に一度あるかないかだ。よほど過去の名作を鑑賞していた方が感動する。今は主要な映画賞を受賞していても、過去の受賞作品と比べるとレベルが落ちていると私は感じている。
だが、この作品は冒頭から違った。出だしの音楽を聞いただけで秀作、ベネチア映画祭でグランプリを獲得しただけの事はあると思わせた。
人は人生の終点を迎えるに当たって、どうしたらいいか。また、身近な人間もどう対応したら良いのか、おそらく直面してみないと分からないだろう。そう、私は考える。人それぞれに違ったっていい。この映画のような結末を選ぶ人もいれば、最後まで病気と闘う人もいるだろう。正解は神のみぞ知るではないか。 ジョイスの「ダブリン市民」の短編「死者たち」が引用されているし、ブルーズムベリーグループの一員の名が出てくる。知的レベルの高い人でラドクリフ女子大で知り合った仲ではないかと推測する。ラドクリフ女子大はハーバード大学に吸収された。主人公2人は私より数歳しただと思う。私は今年70歳になる。小中学校の同級生は、10人は亡くなっている。映画「死者たち」はジョン・ヒューストン監督晩年の作品で、日本公開時評判になった。但し、私は見ていない。今度、DVDをレンタルビデオ店で探して見てみよう。
実話をもとにした作品なのか、それともオリジナルなのか。分からないが脚本も素晴らしい。鑑賞後、じんわりと感慨が湧いてくる作品だ。
The room next doorには、違和感が…!
重くて苦しいテーマだが答えはなく、繰り返し問いかけられる問題である。戦争ジャーナリストが自ら選んだ最期のときである。
ただ、洗練された最期であることがどうしても引っ掛かる。さまざまな現場を見つめ、人の死を目の当たりにして、国際情勢や国際関係を報道してきた人物の最後の選択がこうであって良いものかと感じてしまう。このような選択ができる国、国民は、現代世界においてもきわめて珍しいことであろう。日本人でもほぼ無理だと言わざるを得ない。
スペイン人の監督が、ニューヨークを舞台にしたこと、アメリカ人の選択を映画にしたことは、単に安楽死をテーマにしたことなのだろうか。
少なくとも私は違和感と怒りと強い悲しみを感じた。
尊厳死を受け入れる側の葛藤
当事者の尊厳死の選択については宗教観の違いや人生観でだいぶ異なるけど、家族や友達など受け入れる側の葛藤はDVやネグレクトなどの被害を被っていない場合はみんな同じなのかもしれない。
気丈に振る舞って、あなたが望むことなら、と受け入れたつもりでもその時の衝撃はカメハメ波みたいにどでかい。
今回はNYの部屋、森の貸別荘のインテリアと建物が良すぎる。ファッションもシンプルだけど色使いがパーッと彩度が高くて重たい内容を緩和するかのような色使い。
病室のチューリップも公開月に合わせたん?ってほど。
ティルダの黒シャツのような軽いジャケットにブラウンのベルトがめちゃくちゃかっこよかった。
ティルダの娘がそっくりすぎてすごい配役!と思ったけど、本人のCG加工のようで。すごい世の中になったもんだ。
美しく死ぬこと
医療にとって死は最悪の結果で、それを極力避けるべく様々な治療が施される。しかし、全ての人に死はいずれ訪れる。永遠に死なないのも異常であり病気ともいえる。したがって、死ぬことは生理的現象であり健常なことだ。であれば、より良く生きるための医療だけでなく、より良く死ぬための医療があってもいいのではないか。ほとんどの人が、殺風景な病院のベッドの上で様々な管やコードにつながれ、モニターの音やアラーム、病院特有のにおいに囲まれて死んでいく。全く美しくない。それに比べ、マーサの死は美しいものであった。わざと死期を早めることにはいろいろと議論があろう。しかし、マーサのように精一杯生きたあとで、穏やかで美しい死を迎えることには憧れを抱かされた。私も健康に生きて、健康に死んでいきたい。
強く生きた人の話だと思った
友人とは何か
2024年。ペドロ・アルモドバル監督。作家の女性は新作のサイン会で友人の女性が癌であることを知る。戦争特派員だった彼女とは数年間会ってなかったが、見舞いに行くと、それまで知らなかった彼女と娘との関係などを聞かされて急激に距離が縮まっていく。その後彼女の治療は行き詰まり、安楽死を考えるようになる、、、という話。
ティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーアという実生活でも同い年のベテラン俳優二人が、お互いを思いやる友人として語り合う。それだけで映画ができるというのがすごい。嘘をついたり腹を探り合ったりしない人間たち。監督ならではの絵画のように洗練された構図と美しい色彩(やりすぎの面もあるが、赤い車はとてもいい)も楽しめる。
己が人間関係と死に方を見つめたい人におすすめ
瀕死の左派(🟦)に寄り添う保守(🟥)
2004年公開のスペイン映画『海を飛ぶ夢』でも“安楽死”を肯定的に描かれていた。海の事故が原因で四肢麻痺に陥った男(ハビエル・バルデム)が自死を選ぶ感動ストーリーだ。本作のティルダ・スウィントン演じる元戦争記者マーサも、末期ガンにおかされ最期に自死を選ぶのだが、「一人で死ぬのはいや」とそのためにわざわざ別の家を借り、友人の作家イングリッド(ジュリアン・ムーア)を隣室に寝泊まりさせ、自分の死を看取らせようとする....
どこかの誰かさんがアルモドバルの作品は“政治的”ではないと語っていたが、けっしてそんなことはない。この人若い時からフランコ独裁政権に反抗していた強者で、政治的束縛を嫌った自由を描いてきた映画監督なのである。この映画にも、地球温暖化を危惧する大学教授でマーサとイングリッドの昔の恋人ダミアン(ジョン・タトゥーロ)が登場し、「新自由主義と政治の極右化が地球滅亡の最たる原因」という自説を披露する。おそらくアルモドバルは、世界一の金持ちイーロン・マスクとは真逆の考えの持ち主なのだ。
そのイーロンとタッカー・カールソンのインタビューの中で「リベラルは反出生主義思想に汚染されている」とイーロンが語っていた。ショーペンハウワーやシオラン、古くはゴータマ・シッダールタや日本の太宰治もおそらくは反出生主義者であろう。LGBTQ差別反対に子供の人身売買、女性の社会進出を助長するフェミニズムや中絶賛成、すべての生命の源といわれる炭素の排出規制....イーロンによると、これらリベラルの主張に共通する思想が反出生主義だというのだ。
生めや増やせやの大号令下、人口増加=経済発展だった一昔前とは違って、ここもとの人口爆発がむしろ足枷となって経済衰退を招くことがだんだんとわかってきたのである。コロナ禍などはまさにその最たるものといってもよいだろう。しかし人権擁護を旗印にしてきたリベラルにとって「推しの政策は実は人口削減のため」とは口が裂けてもいえないのである。ましてや、この映画で大変美しく描かれている“安楽死”の合法化など、やりたくてもやれないまさに禁じ手なのである。
そんな禁じられたテーマ“安楽死”をとりあげるとは、さすが反骨の映画監督アルモドバルなのである。ほぼほぼティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーアの二人芝居で、大したどんでん返しもなく、淡々と進んでいく展開に物足りなさを感じなくもない。イングリッドの自殺幇助を疑うキリスト教福音派の警官をごっつぅ敵視した演出や、マーサの死後登場する“ある人物”に多少驚きがあるかもしれないが、まあまあ想定内といった感じなのだ。
トランプ“二度”めの大統領当選によってすべての常識がひっくり返りそうな予感のする今日この頃、リベラル代表格Warnerがあわててしかけた反出生主義のプロパガンダ映画、とでも表現すればいいのだろうか。生者=トランピストの上にも、死者=グローバリストの上にも均等にふるつもる雪とはいったいなんのことなのだろう?決して核戦争による“死の灰”のメタファーとならないことを祈るばかりである。
女優2人が素晴らしかった
パイの様に何層にも重なった感情
ラストシーンを迎えた時に、感謝、希望、悲しみ、やるせなさ、安らぎといった感情が何層にも重なったパイの様に押し寄せてきて、この気持ちを例える言葉が見つかりません。
私は過去に日本人の安楽死に関するドキュメンタリー番組を3本観たことがあり、安楽死に非常に関心があります。理由は、死期が近いのに強い痛みが続くことに耐えられないと思っているからです。日本社会では安楽死はおろか死もタブーになっているので、なかなか本気で死を語られることもありません。だから、ドキュメンタリーで安楽死を選んだ方の気持ちを知りたかったのです。
本作はもちろんドキュメンタリーではありませんが、アルモドバルのクリエイティブが妙に身体にしっくりきて“死”を受け入れた先にあるのが、“決して恐ろしくない何か”ではないかと感じました。
そして、マーサとイングリットの友情の描き方がいつものアルモドバルらしさ満載で、これは男性の立ち入る隙はないですね。もし、イングリットが男性だったら絶対に逃げ出すと思います。アルモドバルの描く女性はいつも肝が据わっているし、それこそが女性の本来の姿なんですよね。
マーサのデスクの中にあった数えきれない小物やノート、レコードや本やアートが、マーサの想い出の象徴の様で、なんだか妙に心に残りました。
“死”は隣のドアを閉める様に自然なこと。でも隣のドアを開けた先には新しい始まりがある。のかもしれないと言われているようでした。
安らかに死を迎えることができるのか
久々にアルモドバル作品を観た。赤や緑の原色を強調した画面づくりは彼ならではの美しさだし、かつての過剰さやLGBTのモチーフは控えめにして、流麗な音楽とともに、風格のある作品に仕上がっている。
何よりティルダ・スウィントンの存在感が凄い。痩身の佇まいは、哲学者のよう。役柄もそうだが、丸顔のジュリアン・ムーアと好対照をなしていた。
人は安らかに死を迎えることができるのだろうか。最近観た「敵」で、死に迫られてジタバタする主人公の姿に共感したこともあり、今作で描く安楽死は、甘美な誘惑のように思えてしまう。
ジェームス・ジョイスの「雪は生者の上にも死者の上にも降り積もる」の一節をこのテーマに重ねるのも、あまりに綺麗すぎるのでは、とも感じた。
生き死にの問題は、生者にのみ課されている。
どう死んでいくかは、どう生きる(生きた)のかという哲学
女優二人の演技が神がかっているのと、森や建物まで設計されたような鮮やかな色、染みるような音楽に魅了され。
癌に侵された女性が思い返す人生のフラッシュバックが時に重く、時に軽妙で効果的な演出で、芸術性へ重きを置いた映画としての完成度は高い。
尊厳死の可否とかかっこつけるのではなく、どう生きる(生きた)のかという哲学を、死という題材で提示しているのだろうと思いました。
考えさせられる映画であり、面白いから観たいのに……
重いテーマと美しい絵の連続が拭いきれない眠気を誘い、瞼を閉じないようにする戦いがつらかった面もありました。
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