花嫁はどこへ?のレビュー・感想・評価
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誰もが自分の人生を自分の意思で歩める世界になりますように
2024年の朝ドラ前期「虎に翼」でも感じた、女性が自らの意思で自分の思い描く人生を描けない悔しさ、理不尽さ…それを今作でも感じた。
花嫁が取り違えられたことにより、運命が変わった2人。インドの女性への社会的地位の低さは知識としてあったものの、いまだにこんな環境なのかと、胸が苦しくなった。
ただそこはインド映画。どんなに苦しい展開になったとしても、どこか希望が見えて、最後は人の優しさを感じられるところが素敵。他のインド映画よりも時間も短めなのも見やすいポイントだった。
自分の見ている世界や、教えられた世界が全てで、常識で、違う世界へと続く道があることすら気づかない人はたくさんいる。
少し見方を変えるだけで、自分の常識は世界のほんの一部でしかなくて、世界はもっと広くて深いものだと知った時の、ふたりの花嫁の姿が印象的だった。
いつもこうだから
これが当たり前だから
どうせ無理だから
そうやって諦めてしまいそうになるときに、この映画を思い出したいと思う。
スッキリした! 最高だ!
インドの婚礼にまつわる映画ということで、いまだ根強く残っている文化や風習なのでしょうか。田舎の農村から花嫁をつれて何時間も電車で揺られる2人旅。その風情、国内だけのあるある話を内輪で披露するだけでなく、世界の誰でも理解出来るように作られていたのか、何も苦も無く、そのお国柄に馴染むことが出来ました。その風情は美しくもあり、不便でもあり。もはや成人であろう花嫁さんが迷子になったぐらいで数日もはぐれ続けるなんて、なかなか文明の進まないインドならではの事情でしょうか。だからこそ、この映画が成立したのか、衣装の美しさが仇となって嫁さんを取り違えるだなんて、インドならではなのか、インド人もビックリなのか。
そんなインド事情も進化してゆく。「あ、ケータイはあるんだ」って驚くのも束の間(いや、今じゃ何処の国もスマホぐらい使っていると思うけど)。数は少なくとも電話はあるしFAXだってあるし、(この世界観で)ネットカフェが運営されているのにも驚いた。冒頭から続くインドの田舎事情のお披露目は立派な伏線だったのでしょうか。取り違えられた(言い方は悪いけど)ニセ嫁の彼女が進歩的な農業を学び、やがて高度に文化・文明が進むことを漂わせる背景の流れが一貫していて素晴らしい。農村に広がる農地の風景は最初と最後では違って見えてくるのが不思議。
それでもインド風情の映像がワンカットごとに素晴らしい。独特の音楽もデジタル化することなく、そのまま世界に持って行けそう。ラストシーンの歌声が実に透明で美しかった。
登場する人達も良いですね。主役の家族や寝たきりのお爺さん。駅に住み着く少年。売店のおばさんが何より良い味してます。最後の引き出しに締まった花嫁さんの忘れ物を大切に預かるのは、また逢えるだろうという大事な絆。人を愛することを知っている本当に良い人だと思う。
そして「怖い怖い」と怖がられていた警部補の人。その怖さを遺憾なく発揮して(ニセ嫁の)彼女を見事に救出した下りは本当にスッキリさせてくれました。圧巻の迫力ですなあ。
全ての人が(悪そうな人達も含めて)然るべき幸せそうな結末に至る、本当にスッキリさせてくれた素晴らしい作品でした。
大切なものは自分の中にすべてある、という物語
アーミル・カーンのプロデュース作ということで、『シークレット・スーパースター』とも連なる「インド社会における女性の地位と権利」を描いており、エンタメの枠内でやってのけていて非常にまとまりがよい。主人公2人の成長物語であるものの、最初から最後までふたりの本質的な印象や人格が変わるわけではないし、周りの人間も大きく変わったりはしない。最初はクソ野郎に見えた警部補が実は、という展開もインド映画らしい上手さだが、彼自信が別人になったわけではない。つまりは社会をより良くするためには、いとりひとりが自己を大変革しなければならないのではなく、自分自身が秘めている善性や良識に気づくことが大切である、という物語のように思う。最初はテーマの掘り下げが入門編の教科書的で物足りなく思ったのだが、今思えば、この「変わらない」ことを信じるポジティティと性善説のアプローチは、フィクションとして結構難しいことをやってのけたのではないか、という気がしている。
クセ強キャラの警部補と屋台女主人が物語のスパイスとなりより豊かな味わいに
本作については当サイトの新作映画評論の枠に寄稿したので、ここでは補足的な事柄を記しておきたい。
評で紹介したように、名優アーミル・カーンが審査員を務めた脚本コンペで本作の原案を見出し、自ら映画化権を獲得して製作に名を連ねた。キラン・ラオ監督のインタビューによると、この原案を女性脚本家スネーハー・デサイに託し、デサイのアイデアからジャヤをめぐるミステリーの要素と、屋台の女主人マンジュおばさんやマノハル警部補といった印象的な脇のキャラクターが生まれたという。花嫁のプールとジャヤ、自分の嫁を取り違えてしまった花婿ディーパクというメインのキャラクターを演じた若手俳優3人のフレッシュな魅力はもちろん素晴らしいが、プールに屋台の手伝いをさせるマンジュおばさん(チャヤ・カダム)、ジャヤの秘密を探るマノハル警部補(ラヴィ・キシャン)というクセの強いキャラクターたちが関わってくることで、まるで香辛料が食材のうまみを引き出すかのように、物語に豊かで奥深い味わいが生まれているのだ。
アーミル・カーンのインタビューによると、マノハル警部補は開発段階で自ら演じることも検討したが、考え直して別の俳優を探し、ラヴィ・キシャンを起用したという。インド国内では実力派の中堅スターとして活躍しているそうだが、国外ではカーンに比べ相対的に知名度が低く、それゆえに物語における警部補の役割が予見しづらい効果が生まれている。先述のようにカーンは製作者として出資もしているので、“客寄せ”のため自ら出演していれば興行的には有利だったはずだが、興行より作品のクオリティーを優先するところに彼の映画人としての誠実さが表れている気がする。
泣き跡を見られても恥ずかしくない、と思える映画でした。
見る前のシナリオ予想は「花嫁が手違いで入れ替わり金持ち家に貧乏嫁が、貧乏家に金持ち嫁が嫁いで数年経ってから気がついたけど既に愛も情も生まれていたのでこのまま行こう、やっぱり愛だね」みたいなドタバタ話かと思っていましたが全然違いました。予想が外れた分余計に面白かったです。“可愛い系のインド女子“の嫁を何故か新鮮に感じたのはインド映画「バーフバリ」を見過ぎたからかも知れません。
劇中の様々な女性たち、ちょっとづつしか触れてなくても"きっとこの人はこんな人生を歩んで来たんだろうな"とそれぞれ一人分の人生が容易に想像出来てストーリーに重ね合わさるから2時間の映画に何倍も厚みを感じられて、変わりゆくインドとインド女性の“人生の幅“での強さみたいなものが見えてとても感動しました。それプラス旦那の「アイラブユー」とか汚職警官の「チョ待てよ」とか思い出しても「ウッ(泣)」と来ちゃいます。
体裁とか評判とかしきたりとか、平穏な社会生活を送るための知恵だと思うので気にしないことを美徳とは思わないのですが、体裁や評判を気にして出来なかったこと、やらなかったことが得てして人生の後悔の一因になったりします。その裏には体裁や評判を気にすることで守れた物もあるはずなのでクヨクヨせず、この映画のように“終わりよければ全て良し“の精神でハッピーエンドになれるよう生きて行ければ素晴らしいなと思います。
名セリフのてんこ盛り
シネコン封切り後、見逃して
シルバー御用達ミニシアターにて鑑賞。
インドの文化・風俗・慣習に疎く
当初は???の連続ですが
物語が進んでいくうちに
次第に慣れる
時代設定が20年以上前と言え
賄賂横行、児童婚、
3歳幼女もレイプ被害、
児童労働、持参金殺人…
あたりまえにちりばめられている。
フェミニズムの視点でも
日本の農村地域ににも通ずる
家父長制 男尊女卑に対する
問題提起も。
脇を固める役者がホントに良い!
屋台の女将さん、
女性警官、印刷屋の友人、
芝居のきめ細かさが、
終盤の都合のよすぎる展開を
封じ込める。
フェミニズムの視点もあり
バッサバッサとなぎ倒し
ハッピーエンドに
寄り切る展開は お見事!
★後で知ったのだが、Netflixでも見れる
名ゼリフを復習&反芻するも良し★
伝統とこれからの生き方両肯定 花嫁の振る舞いからインドの文化、学び...
伝統とこれからの生き方両肯定
花嫁の振る舞いからインドの文化、学びの大切さ辺りから社会背景を盛り込みつつ、まさかの伏線回収でカタルシスが最高過ぎる
ディーパクのセリフもいい
物語が終わるってちゃんと気付きがあるって素晴らしい
警部補とマンジュおばさんがとても良い味出している
インド映画に出てくる食べ物エンドロールの続きもそうだったがマジ美味しそう
ジャヤの家族、チョトゥの友人の足あたりがちょっと疑問残ったけどどうでもいい感じ
インド映画、こういうの、もっと見たいです
一部を除いてみんないい人なんだけど、それが嫌味じゃなくて、素直に花嫁2人ともいい人達に恵まれてよかったなぁと。
特に署長には心動かされます。
なんだこいつ、やっぱりインドはまだまだ賄賂ありありのどうしようもない警官なんだなと思ってしまってごめん!!という、気にすらなりました。
20年前の設定とはいえ、2024年の今でもこんな慣習や、女性の扱いやらが残ってる地域はあるのでしょう。
未だにインドで女性が襲われるニュースなど聞くと心が痛くなります。
でもいい方に変わってきてることを願います。
逆に描かれてるような人々の素朴な優しさについてはなくなって欲しくない。
困ってる人には優しくしてあげられる人間になりたいものです。
ちなみに署長の次にこの人いあなあと思ったのは、駅長さんでした。
#23 今年見た中ではNo.1
もう数ヶ月も前に知り合いが東京の試写会で観たのを知ったときは、どうせ富山じゃ観れないんだろうなあと諦めていたら、ようやく今週公開になりましたよ。
(JMAXシアター様、ありがとう)
携帯の形状から推測するに、多分20年以上前のインドが舞台?(それともまさかインドの田舎はいまだにガラケーじゃないよね?)
自分の家の住所もわからないけど家事だけできる女の子と、頭が良くて悪知恵も働く現代風な女の子が入れかわっっちゃうお話。
実家の住所も嫁ぎ先がどこかもわからない女性がこの世に存在することにびっくり。インドの田舎の女性はどれだけInnocentなの?
そして他人の家にズーズーしくも住み着いちゃう頭の良い子の私的事情もインドっぽい。
ちょっとサスペンスっぽくコメディ仕立てで、インド人の人情もきっちり描かれていて、今年観た映画の中では1番面白かった。
こんなに良い作品なのに、富山では観客がたったの6人ほど。
ホントに良い映画なので、偏見を持たずに沢山の人に観てほしい。
見やすい
時間も短い(インド映画にしては)し、
歌と踊りもないし、
ストーリーも大団円で良し。
ホントに悪い人以外は悪そうな人も皆いい人でストレス無く観れました
でも、歌と踊りが無いのはちょっと寂しい気もする
インド映画初心者向けに良い作品なのかも
最高でーす!
もう言う事無し!
最後にパズルのピースが全てハマる!
気持ち良すぎるカタルシス!
コレが映画だ!
インドからまたまた名作が増えましたね
私的な本年度No.1シネマは今年もインド映画!
近くの映画館の公開が終了してた時期なので
皆様のレビューを信じ、車で2時間かけてまだ公開中の劇場まで観に行った甲斐がありました。
本当によかったです。
観るべきレビューしていただいた皆様
ありがとうございました♪
観終わって、さわやかな余韻が残る良作
プロデューサーのアーミル・カーンって、シークレットスーパースターに出てきた人(プロデューサーでもある)だよなぁと思ったら、内容も出来の良さも納得だった。
最初に「これはフィクションで、特定の誰かを傷つける意図はない」とわざわざ断りを入れることで、鮮やかに各方面を滅多斬りしつつ、自国の様々な課題をエンタメとして昇華させる手腕が、とにかくお見事。
途中に登場する駅の屋台のおばちゃんが名言連発で沁みたし、2人のヒロインも、それぞれにとても魅力的。
観終わって、さわやかな余韻が残る良作。
女性蔑視とは「女性には自分の住所すら教えられない」という恐ろしいことだった。 問題をわかりやすく、面白く広く世界に訴えられる。 これぞ映画の大きな存在意義のひとつだ。
主役のプールは、少し天然で実に可愛らしく、優しい。
地味で大人しく真面目。
これまで、親の言いつけを守り家庭の中だけで育ってきたが、何の不満も無く、好きになった男性と結婚
こんなことが無かったら、結婚した後もそのまま新しい家庭に入り、これまで通りの暮らしを送って、幸せな過程を気付いていたに違いない。
それももちろん悪いことではないけれど、ひとたび今回のようなことが起きると、自分の人生に疑問を持たざるを得なくなる。
自分の住んでいる場所の住所もわからず、村の名前すら憶えていない。
一歩、村の外に出ると、一人では戻ってくることすらできない。
愛する夫の名前すら口にすることが許されない。
(このことだけは文化であるともいえるけれど)
それでもいいのか。
片や、もう一人の主人公ジャヤは、聡明で賢い。
自分の意見を口にし、振る舞いも自由。ビジネスの才能もあるらしい。
そんな人でも、女性だからその才能を生かすことができない。
自分のやりたいことができない。
親に言われたとおりの結婚をするしかない。
女性の権利の問題を映画にするような場合には、彼女のような話になる場合が多いと思う。
本作でも、映画の半分の重要な軸ではある。
しかし、本作では、あくまでも物語の中心がプールである点が重要である。
声も上げず、つましく生きてきて、愛する男性と結婚し、自分の村に戻りたいだけの女性が、それだけの願いをかなえたい、ということを描いている。
心が優しく他人を思う彼女のことは、黙っていても、周りの人の方から助けてくれる。
そんな優しい話だからこそ、訴えたいテーマが心に響く。
ラストのラストに、愛する夫の名を声高に叫ぶ。
このことだけで、彼女の心の変化がわかるとても良いラスト・シーンでした。
観て良かったという気持ちになれる素晴らしい映画でした。
その反面、世界のすべての人々に、男女平等が実現されるのは、いつになるのか。
女性が暴力で支配されることが無くなるのは、いったい何百年先なのか。
100年先でも実現しないことは確実だ。
そう思うと何とも悲しい。
人類とは如何に愚かで進歩がないものかと、暗澹たる気分になるのでした。
いい映画は、面白く観れて、後味がいいのに、後で自然にいろいろと考えさせられる。
ああ、叫びたい。怪しい娘だと。
大安吉日のインドにて、ベールを被っているため電車内で嫁を別の嫁と取り違えてしまいさぁ大変!!と思いきや…といった物語。
コメディ色が強いようで、インド社会の闇を垣間見せるドラマ作品。
インド結婚の文化''持参財"がキーとなっており印象的。…成る程、悲しきかなこれは犯罪に利用することもできてしまいますね。お金持ちと結婚するにはそれなりの持参財が必要となり、足りなかったケースでは…。。恐ろしすぎる。
そんなこんなありながらも、お国柄周りの世界を知らずに生きてきたプールと、大秀才でありながらこれまたお国柄夢を叶えられないジャヤ。
対照的な二人の花嫁が、自分の力で生きる希望を見いだしていく様は素敵ですね♪
登場人物も良キャラ揃い。
お気に入りは駅売店のおばちゃん。
男性上位の世界もおかまいなしにと力強く振る舞う姿はカッコ良い。さらに孤独となったプールを導き…。そのカラカンドはきっと娘の味がしたことでしょう(涙)
そして絶対にキーマンとなると思ったご用心〜…は、別に何もなかったかな(笑)?
クライマックスは見ていて痛快でありながら、なんやかんや潔白じゃない人がチラホラいるよね…なんて思ってしまったが、ダンスがなくとも幸せムードなインド映画だった。
DVDが出る可能性が薄いので、是非映画館で見て欲しい
フェミニズムとシスターフッドに溢れるじんわり良き映画・・・で終わって良いはずがない。
2001年が舞台ということに目眩がする。
インドって妻が夫の名前を呼ぶのもNGなのか??ヴォルデモートでもあるまいに。
インド映画「TOILET」でもインドでスマホを持っている人より家に衛生的なトイレがある人の方が少ないという事実や、同じ2001年頃を舞台にした「パッドマン」でも、生理用品が手に入らないために修学や就労を制限され、生理中は外出さえままならず非衛生的なぼろ布を使ってる女性が多いことに目眩がしたが、結婚においてもその価値観はまだ21世紀と思えない有様のようだ。
もっとも、夫婦別姓がいまだに選択できず、未成年をレイプしようとした元ジャニーズの性犯罪者などが堂々と復帰し、首相の自伝本を書いたジャーナリストがレイプをしてなお捕まらず、ジェンダーギャップ指数146か国中118位(2024年現在)の日本が言える立場ではないが。
話すとプールがおそらくまだ10代の幼い花嫁であることがわかる。貴重品も夫に預けたあれっぽち。おそらく持参金も少ないのであろう。料理などの花嫁修業はしっかりさせられたようだが、夫の村の名前すらろくに把握していないとは。実家でもすべて夫に任せておけば良い、と言われて育ったのだろう。駅で迷って自我もなく寄る辺なくあたふたする様は花嫁と言うよりまだ子供だ。
まず、嫁ぎ先の村の名前くらいちゃんと覚えておけというのはマンジュおばさんの言うとおりである。
夫に言われてランニングを辞め何が好きかもわからなくなった・・・という話が最近Twitter(X)でバズっていたが、本編でもレストランとコラボメニューになっていたレンコンのサブジをジャヤに褒められて、「夫も息子も食べないので好きな料理を作らなくなった」という母親が「なら自分のために作ればいい」とジャヤに言われて「女の好みで料理を?」とありえないとばかりに姑と笑った後で「でももう自分の好みがわからない」とぼそりと呟く様がなんともつらい。女が料理を作るのは夫や息子など男の為で、自分の好みも反映させられないということ。
インドでなくても日本の既婚女性もよく言うことだ。夫が嫌いだから作れないとか子が食べないから作らないとか。幼い子供相手ならまだしも、アレルギーで食べられないとかじゃない限り(よほど栄養に偏りがあるのでない限り)日々の料理なんて作る人の好みで作ればいい。文句があるなら自分で作れ、である。
日本の女性は自立以前にまず自分の好みの料理を作るところから自我を取り戻さなくてはいけないのか。道は遠い。
マンジュおばさんの名台詞「女は育児も出産も農業もできる。それに気づいたら一人で生きていけるので、男は気づかせないままにしておきたい。(男が結婚できなくなるから)」と言う台詞が身に染みる。「結婚できない」ことが女にとってスティグマになる社会はクソ男に都合が良いからだ。
夫がジャヤを殴るのも止めないなんてひどい警官かと思ったら目の前でDVを目撃したという事実を作るためだったのか・・・DV夫と離れられるのは幸いだが前妻の死が自己なのか殺人による焼死なのか曖昧なままなのはいかがなものか。サティ(寡婦殉死)は法律で禁止されているものの、現在でもインド各地で行われているという。それどころか子供が産めないから殺されるなんて女性の地位は奴隷や産む機械以下である。
ジャヤは一度クソDV夫と法律婚をしているわけで、夫と正式に縁を切ることは出来るのだろうか。そのあたりも気になってしまう。
プールが初めて自分で仕事をして報酬を得るときの目の輝きがまぶしい。「結婚してもどんなささやかでもいいから仕事をしていきたい」と語る彼女の意思をどうか尊重できる夫ディーパクであって欲しい。
配給によれば、どうやら円盤が出る可能性が薄いらしいので、是非まだ上映しているうちに映画館で見て欲しいところ。
学ぶにも描くにも好物を作るにも、野心が必要なインド
花嫁の取り違え、当事者にとっては一大事。レイプのニュースが絶えないインドでは、花嫁の安全がとにかく心配。それでもコメディタッチで、悪意より善意を多めに感じる展開で非常に観易い。序盤の伏線も終盤で分かりやすく回収され、どんでんも返さえるので、読後感が爽快。個人的には、取り残さえる花嫁(Nitanshi Goel)があまりに可愛すぎて、終盤彼女の笑顔だけで泣いてしまった。
🌻
1. 20年前のインドってまだこんな感じ?
インドは1990年代からIT大国のイメージ。英語圏でメーカーに問い合わせると、インドに転送されインド人が応えてるとの報道もあり、英語もペラペラなイメージ。しかし本作で描かれた2000年代のインドは、女性のが戦前の日本どころか、江戸時代くらいの立ち位置。女性は家庭に入ったら男に従うもの。料理するのは家族の好物。自分の好物を自分の為に作るだなんて発想が皆無。描いた絵も家族には隠し、好きな事を学んで手に職つけるだなんて女に許されない。丁度2000年代、ベトナムで女性の大学教員やスタッフと交流があったので、インドが遅れ具合が際立って感じられた。
嫁ぎ先の住所も最寄り駅も知らないが、家事は得意と胸を張る花嫁P。身を隠すためにSIMカードを入れ替える知恵もある花嫁J。対比が見事。女性も色々。誰しもがそれぞれにあった幸せを選択できる社会こそ健全。
🌻
2. 終盤の大立ち回りは若干ズルい
終盤、思わぬ人物が意外な振る舞いをする事で大団円。スッキリしたとか、胸がすくとの感想も散見する。たださぁ、結局悪い人が儲かって、次の日からも悪徳ぶりが続きそうなには閉口。劇場版のジャイアンかっ!?いいとこ取りし過ぎな事に納得はし難かった。
🌻
3. Nitanshi Goelに要注目
本作が映画デビューのNitanshiさん。2023年のトロント映画祭が初出なので、撮影時は15,6歳。TVで活躍してた子役さんのようですが、本作のヒットで映画女優として起用が相次ぎそう。本作では垢抜けないあどけなさもあるが、ネットで検索したバッチリメイクだと超美人。個人的には、ハーマイオニーのEmma Watsonのようにあまりに早く成長し過ぎないで、折角のあどけないさをフィルムに沢山残して欲しい。
人は人 自分は自分
混雑した車内に新郎新婦が数組いる中で、花嫁を取り違えてしまったことから始まる物語。
プールは保守的な家族観を重んじる女性、ジャヤは当時のインドにおいては先進的な価値観を持つ女性。
おそらく対極ともいえる価値観を持つふたりだが、それぞれが自分の価値観を信じ、それぞれに幸せの形を持っている。
異なる価値観を持つふたりは、相手の価値観を否定することにより自分の価値観の正しさを証明するのではなく、自分の価値観を純粋に信じることにより、揺るぎない正しさを得ている。
ジャヤの揺るぎない価値観が、最後にマノハル警部補の心を動かしたのだと思う。
個人的にはマンジュおばさんが好き。
優しさと芯の強さを持つ魅力的な人。
鑑賞動機:あらすじ8割、アミール・カーン2割
2001年という設定が絶妙だったのかも。今なら良くも悪くももっと簡単に見つかってしまうだろう。
花嫁二人も花婿二人も全く違うタイプを配置、見せ方/見せなさ方、脇の人物などなど、きちんと考えられているのだろうな。
海外向け仕様か長〜いダンスシーンはなくて、時間も2時間強。伝えたいことはしっかり伝わってきたと思う。警部補の描写の加減にも驚かされた。花嫁のどちらも否定しないところもよかった。
別の映画でも見かけたけど、駅の売店/屋台でチャイを売るのは定番なのかね。
全140件中、1~20件目を表示