「【"もうすぐ、お誕生日だね・・。”悪魔に魂を売った男が、娘を守る母の気持ちを利用した30年にも亘る恐るべき所業を不穏極まりない空気感、不安を煽る音響の中で重層的に描いたダークなサイコスリラー。】」ロングレッグス NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【"もうすぐ、お誕生日だね・・。”悪魔に魂を売った男が、娘を守る母の気持ちを利用した30年にも亘る恐るべき所業を不穏極まりない空気感、不安を煽る音響の中で重層的に描いたダークなサイコスリラー。】
■1990年代のオレゴン州。30年間で10家族が惨殺される事件が起きるが未解決のままである。そして、事件を捜査するFBI新人捜査官のリー・ハーカー(マイカ・モンロー)は、自分の類稀なる直観力で容疑者を捉えるべく奔走する。
殺害現場には外部から侵入した形跡はなく、”ロングレッグス”という署名が記された暗号文が残されている。
被害10家族の共通点は、13日が誕生日の女の子がいる事。犯行はその前後に行われている事。妻子の殺害は父が行い、父は自殺している事である。
ハーカーは、何かを知っているかの如き母親ルース(アリシア・ウィット)と、上司のカーター捜査官(ブレア・アンダーウッド)と連絡を取りながら捜査を続けるが、新たな事件が発生し、自分の過去と事件の繋がりが徐々に明らかになって行くのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・冒頭、T-レックスの名曲”Get It On"の歌詞がテロップで流れる。
”見た目は細くて弱そうだけれど、ヒドラみたいな鋭い牙がお前には生えている。凄く、エロくて可愛くて、しかも俺のものなんだ。”
この歌詞が意味する事は、この恐ろしい物語を見て行けば分かるのである。
そして、田舎の家の前の少し離れた道路に車が止まり、家の中に居た女の子が外に出てくると、顔を白く塗った長髪の男が、女の子に気味の悪い声で声を掛けるのである。"もうすぐ、お誕生日だね・・。”
・そして、時は1990年代。リー・ハーカーは未解決事件捜査の一人として現場に出るが”あの家に容疑者がいる・・。”と言った家に相方が行くとドアが開けられ彼は射殺される。その家は、且つて一家惨殺された家だった。
・リー・ハーカーは疲れた顔で、頻繁に母親に電話を掛ける。母親は明るい声で対応するが、画面のトーンは暗く、不穏である。
・徐々に冒頭の少女が、リー・ハーカーである事が明らかになって行く。彼女の誕生日も13日である。そして、ルースがリーを狂った人形製作者”ロングレッグス=ゴプル”(白塗りで良く分からないけれど、良ーく見るとニコラス・ケイジ)から助けて貰うために、その呪いの人形を幸せそうな家庭に修道女の恰好で”プレゼント”として届けていた事が分かるシーンは恐ろしい。リーは同僚の女性と母ルースの家に行くが、母は密かに車で待つ女性をライフルで撃ち殺すのである。
ここ迄来ると、ゴプルが現場にルースに残させた暗号文の”ロングレッグス”の意味も氷解するのである。
■”ロングレッグス=ゴプル”は捕らえられ、取調室で自ら頭をテーブルに何度も叩きつけ死亡する。
だが、彼が作った呪いの人形はその効力を失った訳ではないのである。
そして、修道女の恰好をしたルースは、人形をリーの上司のカーター捜査官の家に届けるのである。
椅子に腰かけるように置かれた不気味な人形。
娘の誕生日のケーキを切るのにナイフがいるというカーターの妻。
虚ろな目のカーターは妻と共に、”ケーキを切るために、キッチンに消える”のである。
物凄く怖いし、嫌な気持ちになるシーンである。
キッチンからは異様な音がし、血だらけのカーターのみが戻って来るのである・・。
そして、エンドロールで大音量で流れる”Get It On"・・。
<今作は、悪魔に魂を売った人形作りの男が、娘を守る母の気持ちを利用した恐るべき30年に亘る所業を、不穏極まりない空気感、音響の中で重層的に描いたサイコスリラーなのである。>