「鮮やかな色彩と見事な躍動感」野生の島のロズ kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
鮮やかな色彩と見事な躍動感
本作の予告編を見てイメージしたのは「ウォーリー」。感情を持たないロボットが、感情があるかのように見える動きをするという、ピクサーの名作アニメだ。でも実際は「ベイマックス」と「ズートピア」を合わせたような話だった。
観ていて一番驚いたのが映像の美しさだ。鮮やかな色彩と見事な躍動感で描かれた野生の島にただただ圧倒された。回想シーンでのぼかし効果も綺麗でとてもよかった。話が心に刺さらなくてもあの映像だけでそれなりに満足できるんじゃないか。
でも脚本もよくできたものだったと思う。親子の愛情だけでなく、師弟関係や、チームものといった要素が入っているとは思わなかった。もうそれだけで心が揺さぶられる。雁のキラリとロズの話だけに終わらせないところがいい。チームものが好きなだけに後半はなかなか熱い展開だった。
個人的には肉食獣と草食獣の共存が描かれることもかなり興味深い。このテーマを描くのは本当に難しい。現実にはあり得ないが故に、どうしても非現実的なものに見えてしまうから。もちろんアニメなんだからファンタジーとして描かれていることを理解すればいいだけなのだが、不思議なもので「ズートピア」くらいに現実から離れるとすんなり受け入れられるのだが、3Dの「ライオンキング」になると違和感を覚えてしまう(その感覚でさえももう少数派なのかもしれないけど)。微妙なさじ加減が必要だ。
勝手に「ウォーリー」のような人が住んでいない地球をイメージしていたが、そうではないようだ。でもあくまで人間はほとんど登場しない。もしかしたら続編が作られたならばそのあたりの世界観を活かしたものになるのかもしれない。それはそれでありだ。ないかもしれないけど、かすかに期待しながら待ちたい。