「共存」野生の島のロズ U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
共存
よく動くし、温かみもあるCGで凄く好きだ。
アニメーションの進化って、ホントに凄い。
目新しい物語ではないけれど、コレを初めて目にする子供達には響くものが必ずあるのではなかろうか。
随分と未来の話で、主人公は最新鋭のロボット「ロズ」だ。人の手助けになる仕事を自身の存在意義と捉える万能のロボット。自己学習機能があり、なんと動物の言葉まで理解するようになる。
どうやら輸送途中にこの島に墜落する事になり、ロズが起動した時には、周りに獣しかいない。
人からの指示がないとやる事もない状態で、どうやって物語を紡ぐのだろうと頭を傾げる。
言語の翻訳に至るまでは、一方的な価値観で自然界に介入する事になる。いわゆるお節介なのだけれど、ロズにとっては必死の自己アピールであり、営業なわけだ。プログラム故にタフである。
そんな中、雁の母親代わりになるのだけれど「子育て」って仕事が発生した時のロズは水を得た魚のようだった。ようやく自分の使命を果たせる。
他者と関わる事で自分の足場が固まる。社会の仕組みってこういう事なのかなぁとふと思う。
物語の中には色んなメッセージが投入されてて、「幼児期に親の愛情を与えられずにいると〜」とか「子供に発破かけるのも親の仕事〜」とか。泳げない雛を湖に放り投げたり、不恰好な泳ぎ方を見守ってたり。あれこれ過保護になるよりも、体験こそが成長の母と言わんばかりである。
勿論、その後の危険も描く。親には放置する勇気と見守る義務があるかのようだ。
それでも超えられない壁ならば、一緒になって克服していくのである。と飛行訓練は教えてくれる。
越冬の際は、絶滅か共生の2択を獣達は迫られる。大袈裟だけど地球規模の話に置き換えるなら、温暖化やエネルギー問題にも変換できて、絶滅を目の前に争ってる意味などないだろうってとこかしら。
ただ…生物である限り食わねばならんので、綺麗事や建前にも思えてしまうが、ロズという最新テクノロジーを媒介に克服したいものである。
最終的にロズは感情を理解する。
愛から派生するもが多いのかな。会いたいとか寂しいとか、仲間とか絆とか。
お決まりの着地点ではある。
物語の中盤に、その時代の人間の街が描かれる。
随分と閉鎖的な空間で管理者は描かれるものの、住人達は描かれない。察するに外界と隔離されたシスティマティックな様相だ。
野生の雁などは「汚染」と分類される。
この状態から察するに、あの島は随分と僻地で何の価値もない島なのであろう。
人が無視している土地にも命の躍動があり、そこにこそ正常な営みがあるって事なのだろうなぁと思う。
最新のテクノロジーをもってしても到達できなかった進化を、この未開の土地でロズは手に入れた。
白か黒かではなく、柔軟にファジーに適応し対応し続けた。答えに到達するのではなく、模索し続ける。
ロズが構築したプログラムが、その時代の人間達にも必要だったっていう皮肉も効いてるように思う。
野生xロボって深いテーマでもあったなあと思う。
吹替版を鑑賞。
綾瀬さんの声は硬い中にも温かみがあって好みだった。