ビバ・マエストロ!指揮者ドゥダメルの挑戦

劇場公開日:

ビバ・マエストロ!指揮者ドゥダメルの挑戦

解説

ベネズエラ出身の世界的指揮者グスターボ・ドゥダメルの栄光と苦悩、そして挑戦に密着したドキュメンタリー。

1981年にベネズエラで生まれ、10代の頃から天才指揮者として巨匠たちの薫陶を受けてきたドゥダメル。2009年には弱冠28歳にして名門ロサンゼルス・フィルハーモニックの音楽監督に就任し、「TIME」誌の「世界で最も影響力のある100人」にも選出。母国の若手音楽家からなるシモン・ボリバル・ユースオーケストラを率いた演奏動画のブレイクや、2016年スーパーボウルのハーフタイムショウへの出演など、ジャンルの枠を超えて活躍を続けてきた。しかし本作撮影中の2017年、ベネズエラの反政府デモに参加した若き音楽家が殺害された事態を受け、ドゥダメルは現マドゥロ政権への訴えをニューヨーク・タイムズ紙に展開。大統領府と対立したことでシモン・ボリバル・ユースオーケストラとのツアーは中止に追い込まれ、祖国へ足を踏み入れることすら禁じられてしまう。

祖国の若者たちと交わした「いつか必ずまた指揮をしに行く」という約束を胸に、世界各地で挑戦を続けるドゥダメルの姿を、コンサート演奏やリハーサル風景などを多数盛り込みながら映し出す。

2022年製作/103分/G/アメリカ
原題または英題:¡Viva Maestro!
配給:ディスクユニオン
劇場公開日:2024年10月4日

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(C)2022 PM Maestro Documentary, LLC. All Rights Reserved. Exclusively licensed to TAMT Co., Ltd. in Japan

映画レビュー

4.5一人でも多くの人に

2024年11月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

映画が始まってまもなく、グスターボ・ドゥダメルが指揮してベートーベンの第9の練習をするところが流れ、私が未だ高校生の時、学校でTBSテレビのドキュメンタリー番組「小澤征爾”第9”を揮る」を観たことを思い出した。私たちは、皆小澤さんの音楽に触れて、クラシック音楽に親しんでいったのだ。それは、村上春樹さんも同じだと思う。

そのときのドゥダメルは、手兵であるシモン・ボリバル交響楽団のベートーベン交響曲全曲の欧州ツアーを控えていた。その映像に接しながら、ドゥダメルは単に音楽的な才能に恵まれているだけでなく、人を揺り動かす大きな力を持っていることがよくわかった。小澤さんや、レナード・バーンスタインがそうであったように。

オーケストラを振る場面では、やはりベートーベンの第5番の冒頭を練習する場面が印象的だった。5拍と言って4拍と言い直し、さらに3拍が大事と言う。そうだ、最初の1拍は休止符であり、次に8分音符が三つ続き、2分音符が伸ばされる。こんなに、最初の休止符が大事であることを教えてくれる姿は、これまでなかったと思う。ただ、マイクが音源に近すぎて、やや残念だった。日本のワン・ポイント収録のような優れた技術で、録音して欲しかった。

それにしても、2017年に、彼の祖国ベネズエラが政治的、社会的に危機に陥っていたことを、全く知らなかった。恥ずかしいことだ、彼の国のニュースは目にしていたのかも知れないが、それがエル・システマに及んでいたとは。ドゥダメルが、ベネズエラに入国できなくなった経緯もよくわかった。

しかし彼は、きっと遠い将来にはなると思うが、祖国の救済のために、あの国の文化相か首相、あるいは大統領として、招聘される日がくるだろう。どれくらい将来かまでは、わからないが、その日が来るまで、あるいは例え、その日が来ても、音楽を以って世界の人に語り掛けることを続けて欲しい。世界を代表する人間の一人として。

心に残る素晴らしいドキュメンタリー映画だ。

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詠み人知らず

3.0もっと聴きたかった

2024年11月11日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

1981年にベネズエラで生まれ、10代の頃から天才指揮者として称賛を受けてきたグスターボ・ドゥダメルのドキュメンタリー。2009年に弱冠28歳でロサンゼルス・フィルハーモニックの音楽監督に就任し、TIME誌の、世界で最も影響力のある100人、にも選出された。母国ベネズエラの若手音楽家で構成されるシモン・ボリバル・ユースオーケストラを率いた演奏動画がブレイクしたり、2016年スーパーボウルのハーフタイムショウなど、活躍を続けてきた。しかし2017年、ベネズエラの反政府デモに参加した若き音楽家が殺害された事態を受け、ドゥダメルは現マドゥロ政権への訴えをニューヨーク・タイムズ紙に展開した。大統領府と対立したことでシモン・ボリバル・ユースオーケストラとのツアーは中止となり、祖国ベネズエラへの帰国も禁じられてしまった。そんなドゥダメルの栄光と苦悩の実話。

まだ43歳なのにものすごい知識と感性なんだろうと思った。
彼が指揮する曲をもっと聴きたかった。
祖国ベネズエラの若者たちに、いつか必ずまた指揮をしに行く、という約束が果たせる日を願ってます。
チャベス大統領の後を引き継いだ現マドゥロ大統領は相当な独裁者みたいだし、まだ61と若いから先は長いかも。
そんな感想。

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りあの

5.0ドゥダメルの魅力と葛藤が描かれた秀作ドキュメンタリー

2024年10月27日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

指揮者ドゥダメル自身の魅力を余すところなく見せながら、同時にドゥダメル自身が育ち、今も支援し続けているベネズエラの音楽教育システム「エル・システマ」の責任者としての深い葛藤も描き出した秀作ドキュメンタリー。

まず「エル・システマ」の理念にとても感銘を受けた。富裕層も貧困層も関係なく楽器は無償提供。信条の違いを超えて、みんなで一つの音楽をつくりあげる過程を通して子どもたちを社会化し、人としての尊厳を持てるようにしていく。単なる楽器演奏の早期教育ではない「音楽を通した青少年教育」を実現した、ドゥダメルの恩師アントニオ・アブレウ氏の取組がすごい。
作中に「音楽は基本的な人権」という言葉が何度か出てくる。音楽にとどまらず、芸術全般は、人としての尊厳の肯定に深く関わっていると思っているが、これを具体的な現実の仕組みの中で、永続的に実現させていく困難さを考えるとき、この取り組みがほぼ半世紀続き、かつ世界各国に広がりをみせていることは驚くべきことだと思う。
その分、この取組を今中心になって牽引しているドゥダメルは、政情不安定な自国の子どもたちのよりよい環境での成長のために、自身の政治的な発言や行動がストレートにできないジレンマと苦悩がつきまとっていることだろう。
その彼が作中で語った、ベネズエラに残り「エル・システマ」の指導にあたっている友人からの電話のエピソードには泣けた。指導者として報われた瞬間の喜びが手に取るように伝わってきたし、ドゥダメル自身から私たちが感じ取る魅力も、演奏者の傍らにありながら、共に高みを目指す彼の指導者としての立ち位置あってこそと思う。

実際の所、世界では、例えばヘイト的な言動を繰り返すトランプが「言いたくても言えないことを代弁してくれる」と大統領選の支持率を回復しているという報道も流れている。
対立を、対話や音楽を通した調和で乗り越えていくには、まだまだ道は遠いかもしれない。
けれど、この作品を観ながら、その道をあきらめてはいけないという思いを強く持った。

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sow_miya

4.0音楽好きな方は、見ない訳にはいかない映画!

2024年10月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

映画の予告編で運命の冒頭部分を聴き、これはフルヴェン以降カラヤンでさえ心に響かなかったのに、凄い演奏だと感動し「グスターボ・ドゥダメル」氏を調べたら、また「マンボ」の演奏に魅せられ、しかも2026年には、ラテン系指揮者で初のNY・フィルの音楽監督就任が決定しているというから、これは映画を見ない訳にはゆかないナ!と見てきました
これからの名指揮者グスターボ・ドゥダメル氏の紹介映画ですが、音楽好きな方は、見ない訳にはゆかない映画です!
彼も貧困に関係なく子供たちに音楽教育を与え、犯罪に手を染めるのを防ぐという、「エル・システマ」出身と知り、ラグアイラ港に入港し、エル・システマに楽器を寄付していたピースボートで知っていただけに、更に身近に感じました
もっとも最近は映画が訴えていた様に、ベネズエラの政情不安・治安の悪化で入港が控えられていた為に楽器の提供もままならず、「エル・システマ」に入りたい子供たちの為にも、早期の国情の安定を祈るばかりです

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jazz須磨