破墓 パミョのレビュー・感想・評価
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この調子で今後も悪霊祓いで邁進していただきたい!
いろんな説明をすっ飛ばし、メインキャラが「ホラ!みなさんおなじみの!」って感じで出てくるのがとても良かった。韓国のひとには馴染みの文化かも知れないが、これだけ霊的なことに関わる職業の人たちがいることも知らず、でもそれでも「こういうものですから!」と押し切ってしまう力技が、もはや清々しい。この前に人気のテレビシリーズがあって、初映画化なんですと言われたら信じてしまったと思う。
逆に言えば、シリーズでもなんでもないのに、最初からみごとにキャラができあがっているわけで、この年齢も性別も雑多なキャラたちと彼らが織りなす世界観を、もっと見てみたいと思わせるだけの魅力がある。あの、お祓いの女性集団だけでも何本でも映画ができそうだし。
ただ、こういう荒唐無稽なファンタジーにありがちだと思うが、設定ありきで進む物語自体は、わりとどうでもよかったりするし、なにが起きてもはいそうですかと右から左に流してしまいがち。ただ、オカルト冒険マンガみたいな世界観を、ギリギリのリアリティと組み合わせたビジュアルだけで面白いから、多くを望むより、この路線で愉快な悪霊祓いを続けていってほしい。
朝鮮半島と日本の暗い歴史の苦さが後半の味わいに影響。韓国での特大ヒットに複雑な思いも
「破墓 パミョ」は本国韓国で今年2月に公開され、5月の時点で2024年の韓国映画の最高興行収入を記録したとか。鑑賞しながら題材や雰囲気が似ていると思ったのは、國村隼が謎めいた村のよそ者を演じた2016年の韓国映画「哭声 コクソン」と、2018年の邦画「来る」。得体のしれない邪悪な存在に主人公側の人間たちが立ち向かうのが共通点と言えるだろうか。この手のジャンルの映画としては撮影が洗練されていて、暗いながらも美しい映像もなかなか見応えがあった。
ストーリーの後半には、豊臣秀吉の時代の朝鮮出兵や20世紀前半の日本による韓国併合といった朝鮮半島と日本の間で起きた暗い歴史の記憶が、ネガティブな要素として浮かび上がってくる。これが苦いスパイスとなり観客の感情を刺激したことが韓国での特大ヒットの一因になったのかと想像すると、日本人として複雑な思いもする。
日本とのつながりではほかに、悪霊から身を守るため全身に経文を書くシーンが怪談の「耳なし芳一」を思わせるが、脚本も書いたチャン・ジェヒョン監督は「耳なし芳一」を知っていたのか、それとも法話か何かで「経文を体に書くと魔除けになる」という古い言い伝えが仏教文化圏の共通のルーツとして存在するのだろうかと、ちょっと気になった。
暗く重苦しいムードが基調だが、「鍵泥棒のメソッド」の韓国リメイク「LUCK-KEY ラッキー」で主演したユ・ヘジン(葬儀師ヨングン役)のにじみ出るおかしみが、出演しているシーンの気分を少し明るく軽くしてくれた感じがする。シリアスな役でも“陽キャ”な雰囲気を漂わす点で、日本の俳優では大泉洋あたりが立ち位置的に近いだろうか。
映画から得た情報で私がすべきことを知り、私はやり遂げました!
映画では、最後に日本の武士のような怨霊が出現し、この怨霊が災いを起こしていたのだとわかった。巫女が日本語を話すことができたので、怨霊とのやり取りにより、その場所から怨霊を取り除くことができたため、とりあえず、なんとか今回は破墓の仕事をやり遂げることができたかなぁというエンドでした。本当は根本的には解決してないけど…
朝鮮半島では、このような出来事が多数あり、巫女達はこの怨霊に大層被害を受けているため、怨霊退治のための解決策があれば提供してほしいし、解決するために手伝ってほしい。また、解決できるなら、解決してほしいというメッセージを受け取りました。
過去に戦いがあり、異国で亡くなりながらも母国での主人に忠義を示し、死して死屍に成ろうとも人柱となりて、この地を守り、成仏せずに、この世に残り、この地で主人の参られるのを待っているのだと怨霊は語っていました。
この怨霊が成仏させるためには、この主人が、参上し、この怨霊らに『大義であった。もう良い。』と声をかけることが最良の方法と思われます。
私は、ホラーで在るはずのこの映画の内容なのに、この怨霊の律儀さに涙を流しました。この武士は生きている時はどれほど、律儀で忠誠心に溢れていて、彼の主人を慕って尽くしていたのか、思い描けました。
もし、私がその主人なら、彼らの眠るひとつひとつの墓に出向き、感謝の言葉をかけ、労をねぎらい、極楽浄土への成仏を祈ったことと思います。
さらに、私は、この律儀な武士達が死して、なお、怨霊となり留まっていたことを不憫に思い、この地に留まる原因となった戦い自体を無くすことで、この事に関する解決策としました。戦いは、悪い因縁を作るだけ、なるべく、戦わない方策を選ぶことが、良き社会、良き未来を作る根源と私は思います。
既視感だらけの大袈裟な一本。
俳優の魅力はさすが。ホラー要素は定番。
チェ・ミンシクは「オールドボーイ」を見て以来、気になる俳優です。今回の映画では、さえないお腹が出た中年男性役を演じていますが、それでも彼の存在感は圧倒的でした。彼の演技は、どんな役でも観客を引き込む力があります。
巫女役のキム・ゴウンもまた、凛とした強い女性を見事に演じていました。この役を日本人の女優が演じるとしたら、誰がふさわしいかと考えましたが、思いつきませんでした。韓国の女優さんは強い女性を演じると本当に魅力的です。
俳優人の魅力だけで評価すると、★4以上ですが、ストーリーはありがちなホラー展開でした。それでも記録的大ヒットとなったのは、ストーリーに日本が関係しているからかもしれないと少し思いました。とは言え、最後はお墓と病室、ハラハラドキドキ楽しめました!
ホラー映画とかではなく、不思議な世界観を感じる内容だった
妻がPrime Videoで、予告を見て面白そうな作品と感じた事と、好きな韓国女優・キム・ゴウンが出演していたこともあり、家族で夜の時間帯に鑑賞しました。
物語の内容としては、二人の巫堂(韓国で言うシャーマン)と風水師、葬儀師が、後継ぎが代々原因不明の病にかかってしまう家族から、高額な報酬を支払うので究明してほしいとの依頼を受け、原因が先祖の墓にあることを突き止め改葬を行ったが、不可解な出来事が彼らを襲うというもの。
日本のホラー映画の要素もあったので、呪い系なのかと思いながら見続けていると、後半になるほど日本人の陰陽師、武士、さらに鬼までが現れるなど、物語が進展するにつれて反日的な感じも若干あり複雑な心境になりました。
日本の陰陽師の影響もあるのか、韓国独特の世界観なのか、なんだか不思議な世界観を感じる内容の映画でした。
呪術合戦
日帝支配と朝鮮出兵、朝鮮半島を分断する二重の呪い
土はどんな味なのだろう…
やっぱ悪いのは日本人
サバハ(2019)を見たとき「雰囲気がレベち」というタイトルでレビューした。レビューは『巧いなあと思います。冒頭からリアリティの佇まいが違います。』と書き出していた。
おなじ監督がつくった本作も始めからそれを感じた。上質な恐怖映画の雰囲気づくりと役者の作り込み。風水師役のイミンシク、シャーマン役のキムゴウンとその助手役のイドヒョン、葬儀屋役のユヘジン。みんなその道のプロパーにしか見えなかった。
しかし韓国映画には日本をディスる描写がつきもの。それが本作にもあった。
主人公らは日本の陰陽師が墓に封印した怨霊によって窮地に立たされる。
韓国映画では善良な韓国民に災いをもたらす悪い人は日本人と相場が決まっている。その設定は忌々しいが映画のクオリティは常に日本より高い。この現象に対する日本人の態度はそれぞれ。じぶんはポリティカルではないから韓国は嫌いだが韓国映画は好きという感じ。日本男児にあるまじきことだが女優も日本より韓国のほうがいいと思ったりする。ちょっと前まで韓国は整形大国と言われていたがいまの日本の芸能界を見ると整形の比率が逆転している。先般、40歳以上のおっさんがパーカー着るのはヘンだとのたまって炎商した女がいたがインフルエンサー界隈の女はほぼ全員あれと同じ整形顔をしている気がするんだが。Kpopがニュース記事にあがると、なんで韓国アイドルを紅白に出すんだ(怒)というヤフコメが殺到するが、個人的にはそれもどっちでもいい。日本人として保守的スタンスをもっているが、芸能などに関しては自由な態度をとる。
韓国ではドラマ・映画もKpopもプロパガンダ・外交のひとつである。高品質が反日描写をスポイルするから、韓ドラやKpopに夢中な若者は韓国が日本を罵倒しても彼らに敵愾心をもたない。それを戦略というのだが、ただし日本のホラー巨匠とされている中田秀夫だの清水崇だのの○○つまんない映画と、これを比べるのは酷な話である。プロパガンダだろうが何だろうが庶民は韓国コンテンツのほうがずっとおもしれえと思いながらネトフリ見てますよ──という話にすぎない。
ミンシク演じる風水師は、墓所に明堂を斡旋して遺族から金をもらう。明堂とは埋葬に適した立地のこと。ご先祖をいい場所に葬ると家が繁栄する。儒教の韓国ではそういう吉凶をすごく気にする。だが狭い韓国、いままで何百何千万と埋葬してきたんだから明堂なんてそうそう残ってはいない。ときには適当なところを紹介しながら葬儀屋役のユヘジンと組んでそれなりにやってきた。そんな時、シャーマンの友人が持ってきた儲け話。4人は破墓の禁忌にはまっていく・・・。
小泉八雲の耳なし芳一みたいだなと思ったところもあったが、将軍の霊は関ヶ原でやられたと言ったりもする。雰囲気をもっていて、役者もそろっているがストーリーは粗雑でごたまぜ感があった。言えるのは何が何でも悪いのは日本人だというところ。わら。
キムゴウンがカッコよかった。据わった目と、むいた卵みたいな肌質感。祈祷での狂乱ぶり。堂々たる演技力だった。
またユヘジンが上手。葬儀屋だが聖書を引用してアーメンと結ぶキリスト教徒でもあった。おっさん臭さを醸しながら、ふとしたとき笑いをとったりもする。
韓ドラ・映画でおそらくもっとも頻出のおばさん俳優キムソニョンも相変わらずうまかった。
すこし長い気もしたが、しっかり魅せた。ハッピーエンドも好ましく感じた。映画は大成功し、韓国内で2024年の最高収入をあげた。世界的にもヒットし、ベトナムおよびインドネシアで最も興行収入をあげた韓国映画になったそうだ。日本人が悪になっているので日本ではそれほどではなかった。たとえば映画コムは(見た時点では)3.1で、抑えた点になっていた。
Imdb6.9、RottenTomatoes95%と87%。
水木しげるへの愛
まさに“怪作”と呼ぶにふさわしい作品。
水木しげるの大ファンであるジェヒョン監督が描き出すこの映画は、韓国史の暗部が徐々に浮き彫りになる怪談仕立ての物語。歴史の闇と怪異が重なり合う演出は独特の体験を提供します。
墓を掘り進めるたびに現れる「呪い」の正体が少しずつ明らかになる展開は、息を呑むようなスリルと知的好奇心を同時に刺激。ジェヒョン監督ならではのユニークな視点が光ります。
とはいえ、その呪いを「外来のもの」とする主張は、日本人としては少々引っかかる解釈ではありますが、それもまたこの映画が投げかける問いとして受け取ることができるでしょう。
唯一惜しいのは、後半でやや物語の勢いが失速し、134分という上映時間が少し長く感じられること。それでも、歴史と怪談を融合させた試みの斬新さは、映画ファンなら一見の価値があります。
「シャーマニズム エンタメ映画」であることに気づけるかどうかが面白さの分かれ道。反日映画という層は映像作品や社会情勢に疎いのかも…
まずレビューをするにあたり先入観が生まれないよう、ここだけは強調したいのだが、この映画は全くの反日映画ではない。むしろ日本大好き映画だ。
確かに日本とのつながりが起こした悲劇のような描写があるにはあるが、むしろ前半の演出にはJホラーの様相が漂っているし、後半の将軍が出てくるシーンには中途半端な演出にならないよう日本の有名声優を使っている。また、監督の大好きな日本の要素を詰め込んだようなストーリー構成からしても、むしろ日本愛に溢れた映画だ。
韓国でこの映画がヒットしたのもストーリー云々が刺さっているというより、下地に根強い「日本ブーム」があると思われる。
この映画を見て反日・日本を悪者に描いているという層には是非Netflixドラマ「京城クリーチャー」を見て比較していただきたいものだ…
本題の映画の内容だが、監督自身もインタビューで答えているとおり
この映画は「ホラー映画」ではない。「エンタメ映画」だ。
風水師サンドクを演じたチェ・ミンシクも、インタビューで本作を“スリラー版アベンジャーズ”と述べている。
映画の主軸を「呪い(ホラー)」と捉えて見ているとこの映画はつまらないものになってしまうのかもしれないが、この映画で見せたかったのはあくまで「韓国のシャーマン文化」であり、「シャーマニズムや呪いの根底にある人間の願いや欲望」である。
ここの認識の差が見た時の感想を左右するようには思った。
前半はピリッとした緊張感とスリルが光るスリラー要素が強い内容だが、グラデーションのように後半は多少の緊張感を踏襲しつつも人間ドラマに焦点を当てていくような描写になっている。
特にサンドクとファリムは前後半で言動が大きく変わり、先に述べた「シャーマニズムの根底にある人間の願いや欲望」を描く上で大きな役割を果たしている。
個人的には前情報なしで観たものの途中から認識を改める必要があることに気づき、面白く見ることができた。
それに役者陣の好演が素晴らしく、興味を途切れさせないようにしている監督のねらいも見えて上手い。
邦画のジャンルを見れば分かる通り、日本ではホラーが圧倒的人気でクリーチャー作品は人気がないため評価が分かれるのは致し方ないことだし、
日本の描写・解釈はお世辞にも正しいとはいえないのだが、
ぜひこれから観る方には、いろんな先入観やジャンル的要素を取っ払って「シャーマニズム」を軸にしたエンタメ映画として本作を捉えることをお勧めする。
(邦画「来る。」を観にいくような気持ちで構えてほしい)
「シャーマニズム」がなぜ生まれたのか、そして科学的な技術が発展した現代においてもなぜ存続しているのか、その意味を考えさせられるいい映画だったように思う。
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