「世界を股に掛ける五郎さん」劇映画 孤独のグルメ 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
世界を股に掛ける五郎さん
去年から今年にかけての年末年始にBSテレ東を観ていたら、四六時中「孤独のグルメ」を放映していて思わず観てしまいましたが、本作は「劇映画」版として制作され、主演の松重豊が監督を務めた一作でした。
劇場版らしく、五郎さんが国内では五島列島に飛び、さらにはフランスと韓国にも足を延ばして活躍していましたが、街場にある実在の名店で空腹の五郎さんが腹を満たすという原作及びテレビ版のコンセプトとはかけ離れており、その点ちょっと微妙な感じがしました。特に終盤のキーとなったオダギリジョー演ずる店主を務めるラーメン屋「さんせりて」は架空のお店のようで、テレビ版に慣れ親しんだ私にとっては、かなり首を傾げる設定でした。
また、五郎さんがフランスに行く筋立ては無理がないものの、韓国に行く筋立てはあまりにも無理があり過ぎました。五島列島からスタンディングボートに乗って漂流してしまい、旧助羅という釜山の南にある港町近くの島に行きついてしまう訳ですが、地図で見た限りこの両者は直線距離で250kmもあり、いくらなんでもそんな距離を漂流する前に溺れてしまうだろうと思わざるを得ませんでした。勿論そこに目を瞑るべきお話なのであればいいのですが、元々リアルの街場を舞台にしていただけに、かなり違和感がありました。
以上、かなりネガティブな部分を取り上げましたが、だからと言って井之頭五郎という強力なキャラクターが画面に出て来ればそれはそれで納得感はあり、各地の食堂で食事をするシーンはいずれも中々の出来栄えでした。特に旧助羅の海岸沿いにある「ジニの食堂」で、五郎さんとユ・ジェミョン演ずる韓国の入国審査官とのシーンは、結構面白いものでした。また、パリの場面ではパリに住む日本人という設定の役で杏が起用され、分り易すぎるけどこれはヒットでした。それを考えると、韓国渡航の筋立てをもう少し自然にして欲しかったなと、残念でなりません。
そんな訳で、本作の評価は★3.0とします。