劇場公開日 2025年1月10日

「いいじゃないか!いいじゃないか!」劇映画 孤独のグルメ おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0いいじゃないか!いいじゃないか!

2025年1月12日
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鑑賞方法:映画館

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原作未読ですが、テレビドラマでファンになった「孤独のグルメ」シリーズ。本作はその劇場版ということで、期待を高めて公開2日目に鑑賞してきました。朝イチの上映回でしたが、最近では珍しいほどの大盛況で、改めて本作の人気ぶりがうかがえます。

ストーリーは、仕事で訪れたパリで、依頼人の祖父から「子どもの頃に飲んだスープをもう一度飲みたい」と頼まれた輸入雑貨商・井之頭五郎が、レシピと食材を求めて、わずかな手がかりをもとに長崎、韓国、東京と駆け巡るというもの。

テレビドラマでは、実在の飲食店と料理を五郎のモノローグの食レポとともに紹介するという雰囲気の構成です。しかし、本作はそれとは異なり、通常業務を終えた五郎が急な頼まれごとによって振り回されるという、年末恒例の特番を思わせるようなプロットです。

劇場版らしく行動範囲を広げて、本作では長崎の五島列島の他にフランスや韓国も舞台としています。そこに人情味あふれるドラマを展開し、韓国での出来事もきちんと伏線回収している脚本がすばらしいです。特に、東京のラーメン店でのシーンは目頭が熱くなります。店名の「さんせりて」はフランス語で「まごころ」を意味するらしいですが、まさにみんなの”まごころ”が集まって再生したように思います。

一方でコミカルな部分も抜かりなく、「孤高のグルメ」に「善福寺六郎」って!超笑えます!劇中劇として実際のロケの様子も垣間見えて、ファンサービスとしても申し分ないです。しかも、その放送を韓国で入国審査官家族が観てるのもいい!このあたりの小ネタもバッチリきいています。他にも、日本語と箸の使い方の上手いダニエルの存在も、その背景を想像させて地味におもしろかったです。

ただ、せっかくの海外ロケだったので、できればもっと現地の雰囲気や店や料理を、五郎を通して私たちに堪能させてほしかったし、スープ繋がりで冒頭のオニオンスープも回収してほしかったです。あと、千秋や一郎を絡めて、五郎の過去も織り交ぜていたら完璧だったのではないかと感じます。このあたりは、次回作があれば、そちらに期待したいと思います。

主演は松重豊さんで、もはや井之頭五郎が本当の姿ではないかと思えるほどしっくりきています。脇を固めるのは、内田有紀さん、磯村勇斗さん、杏さん、塩見三省さん、オダギリジョーさん、村田雄浩さん、ユ・ジェミョンさんら。実力派俳優陣のおかげで手堅い作品に仕上がっています。

おじゃる