「酸っぱい評価しかできないけど、「ASID」には辛辣なと言う意味があるのだよね」ACIDE アシッド Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
酸っぱい評価しかできないけど、「ASID」には辛辣なと言う意味があるのだよね
2024.9.4 字幕 TOHOシネマズ二条
2023年のフランス映画(100分、G)
酸性雨の到来によって逃げる人々を描いたパニック映画
監督はジュスト・フィリッポ
脚本はヤシネ・バッダイ&ジュスト・フィリッポ
原題は『Acide』、英題は『Acid』で、ともに「酸」という意味
物語の舞台は、フランス北部のアラス
工場勤務だったミシャル(ギョーム・カネ)は、ストライキの時に興奮し、機動隊に暴力を振るったことで収監されることになった
それが原因で妻エリーズ(レティシア・ドッシュ)と離婚し、娘セルマ(ペイシェンス・ミュンヘンバッハ)と会う時間も限られるようになった
ようやく外出許可が出るものの、足にはGPS付きの装置が付けられていて、その時間もわずかなものだった
ある日、セルマがクラスメイトのオーロレ(Blandine Lagorce)と喧嘩になり、そのことでミシャルとエリーズは学校に呼び出されることになった
久しぶりに顔を合わせるものの、小言と暴言の応酬で、セルマはさらに苛立ちを見せていた
映画は、この3人が悪魔の酸性雨から逃げると言う内容になっていて、この舞台では精巧な雨雲レーダーのようなものは存在しない
被害状況がわかるサイトのようなものがあるが、それもかなりざっくりしたもので、とにかくフランスはヤバいぐらいのノリにしか思えない
また、ミシャルには元同僚のカリン(スリアン・ブラヒム)という恋人がいて、彼女は足が悪く入院加療を続けていた
ベルギーのアントワープにある病院での手術も決まっていて、ミシャルは家族そっちのけでカリンの元に心が行ってしまっているようにも思える
さらに、エリーズの方もミシャルの兄ブリス(クレマン・ブレッソン)との関係を匂わせているし、彼は弟を頼っただけでブチ切れていたりする
ともかく沸点の低い人ばかりが登場し、会話よりも叫んでいるシーンの方が多い
なので、この登場人物を見ていると、早く全滅しないかな〜とか、どんな最期を迎えるのだろうとか、余計なことを考えてしまうのである
後半になると、とある民家に助けを求めることになるのだが、そこの住人デボラ(マリー・ユンク)とその息子ウィリアム(マルタン・ベルセ)との会話も不穏なところが多い
ウィリアムは透析が必要で、自宅でそれを行っているのだが、デボラは極端に警戒心が強いので、まともな会話にならない
食料を分けてもらえないので隣家に押し入るのだが、なぜかそこから食料を持ち帰り、デボラのところに戻ったりする
普通なら、隣家に行ったらそのままそこで夜を明かすと思う
なので、いろんな不可思議な行動が目につく感じになっていて、そのどれもが瞬間湯沸かし器のような即物的な精神反応に由来しているところに脱力感があるのではないだろうか
いずれにせよ、叡智を結集してパンデミックに挑むではなく、スマホがあってもロクな使い方もしない
訳のわからない動画を見たり、電力を無駄に消費するビデオ通話をしたりと、起こっていることに関する想像力がほとんどない
誰もが自分の欲求に従う行動を見せていて、それがずっと積み重なっていくのだが、運だけはあるので生き残ってしまった
しかも、政府が機能不全に陥っている中で、足枷が外れて無罪放免っぽくなっているのでも微妙で、それでハッピーエンドっぽく演出しているのも、何だかなあと思ってしまった
見どころとなる印象深いシーンもほとんどなかったので、せめて橋崩落でエリーズが巻き込まれて死ぬとか、デボラの車で逃走したけど、ホイールが外れて制御不能になって大事故を引き起こすぐらいの派手な絵面があった方がマシだったかもしれません