「約束の海」ジョイランド わたしの願い MARさんの映画レビュー(感想・評価)
約束の海
家父長制が根強いパキスタンにて、気弱な男が良い嫁がいつつもトランスジェンダーのダンサーに惹かれていき…といった物語。
中々に難しい作品ですね。
父親が1番権限をもっているのは見て分かるが、嫁の2人も主張はしっかりしているし…権限に支配されているというよりも、自然とその状況を受け入れなきゃいけないような空気感が寧ろ怖いようにも感じましたね。
女性たちだけでなく、ハイダル自身にもその弊害が降りかかっている様子ではあるが、ハイダルもハイダルでなぁ…。
ビバの生きづらさも印象的。傍若無人な印象もあれど、それでも自分の信じた道を行く姿は力強い。おふざけダンサーに対峙するとことか特に。
それでもやっぱり辛いですよね。手術をしたい…という切なる願いがありつつ、やっぱりハイダルはそれを促して…ビバからすればそれは耐え難いことですよね。やっと愛せる人を見つけたと思った所で。。
そういう意味でも、実はヒジュラーはビバ1人ではなかったのかな。
そして忘れてはいけないのがムムターズ。ホント、よくできた人なのに。そんな人がこんな思いを…。これはこの世界に対する命をかけた復讐劇だったか。
兎にも角にも、この世界で生きづらい人々の姿をよく描いていた作品だった。
ひとつ言えるのは、この文化の中で生きるには、ハイダルは優しさと背中合わせにある弱さがデカかったことでしょうか。
まぁ、"男は強くあれ"…なんて言ってしまったら、それこそこの映画のメッセージを受け取れていないと思われてしまいそうですが、現実問題、この文化の世界では厳しかったですよね。
それでも、ハイダルとムムターズの出逢いには少し救いがあったかな。
自分も強く生きなくては、と思わされた作品だった。