「パキスタン第2の都市ラホール。 古都であり、保守的な街だ。 中流家...」ジョイランド わたしの願い りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
パキスタン第2の都市ラホール。 古都であり、保守的な街だ。 中流家...
パキスタン第2の都市ラホール。
古都であり、保守的な街だ。
中流家庭の次男ハイダル(アリ・ジュネージョー)は現在無職、美容師の妻ムムターズ(ラスティ・ファルーク)が家計を支えている。
ハイダルは老齢の父の面倒を見、兄夫婦の子どもの面倒を見、兄嫁とともに家事全般を引き受けている。
厳格な父の就職命令で、友人の紹介で職を得たハイダルだったが、それは成人向け劇場の舞台で踊るダンサーの仕事だった・・・
というところからはじまる物語で、トランスジェンダーの女性ダンサー、ビバ(アリーナ・ハーン)にハイダルが惹かれていく・・・と展開する。
これだけのあらすじだと、コメディ風の映画なのかしらん、とも思う。
が観終わった感想は、「家族と個人の物語。さながらヴィスコンティ映画のよう」でした。
主婦としてのハイダルの生き方は、美容師の仕事にやりがいを感じる妻の気持ちを尊重したものであったのだが、根底には、パキスタンの家父長制度のなかで、「自由に生きる」生き方だった。
が、ダンサーとして職を得、仲間から疎まれるとともに、ビバに惹かれていくことで生来の気質が湧き出てしまう。
ハイダルは、もともと同性愛気質があったのだろう。
トランスジェンダーのビバと出逢って、それが出てしまう。
妻は、結婚前にそのあたりを察している・・・
(だから、ふたりの間に子どもがいないのだ)
妻ムムターズも察しているが、家に縛られずに、一個人として認めてくれるハイダルを選んだのだが、ハイダルの就職で家に縛られてしまう。
さらに、女性性としての歓びも得られず煩悶し、さらなる悲劇の芽を作ってしまう・・・
悲劇の芽は、ムムターズのお腹の子なのだが、不義姦通の結果の義兄との間の子・・・
煩悶としているムムターズをみた義兄は、そのとき・・・
偶発的・衝動的に関係を結んでしまった(とみた。映画では具体的に描かれないが)。
イスラム社会での不義姦通は西洋社会のそれよりも罪が重い。
特に、女性側への罪が重い。
この悲劇の芽を感じさせるのは、老齢の父と隣家の叔母との関係に、それとなく描かれる。
家族・家を包み込むような不穏で悲劇を生み出すような雰囲気・環境・・・
旧弊な家族観vs.現代的家族観という対立軸からみえる以上に、かなりの生臭さがまとわりついているように感じました。
終盤に重なる悲劇の輪を食い止める役割は、長兄の嫁が担っているのだが、男児を産まないため、因習から逃れる役割を果たせずに、悲劇が続いてしまう。
この重なる悲劇の輪が、ヴィスコンティ映画のよう」と思わせたのでしょう。
すごい映画でした。
監督・脚本(共同)は、サーイム・サーディク。共同脚本は、マギー・ブリッグス。