「スタンダードサイズの画角」ジョイランド わたしの願い TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
スタンダードサイズの画角
今回も評判を聞きつつ、天候が悪かったり条件が合わずにまだ観られていなかった作品から。公開3週目のサービスデイ午前中回、新宿武蔵野館はそれなりの客入りです。
ざっと振り返り、純粋に「パキスタン映画」と言える作品は初めてかもしれない私。パキスタンという国について良く知らないばかりか、むしろインドや欧米によって作られた映像作品から、どちらかと言えば「ネガティブな印象」の方に寄ってしまっていると思います。その背景にあって当然切り離せないのがイスラム教なのですが、そもそもイスラム教は疎か宗教についての理解度が低すぎる自分にとって、それを安易に否定の主旨にすることはできません。
なお、パキスタン映画である本作において、特に宗教が前に出てくることはありません。ですが、物語りで扱われる幾つかの「ジェンダー問題」にイスラム教が根底として影響していることは否めないと思います。では、それが「イスラム教でなければ避けられるのか?」と問われれば間違いなく「否」。なので、これを単に「異国の作品」という目で観るのではなく、同じようなことが現代の日本にだって起き兼ないと思いつつ、その中にパキスタンの方の国民性に触れるべきだと思います。
それを踏まえて、本作の話の中心となる家族、そしてその家族に関わる人たちという小さな世界の中でもいろいろな問題が見えてきます。まず、序盤のやり取りからすぐにわかる「男尊女卑」と「家父長制」ですが、これはあくまで家族の問題。むしろ厄介なのは、「世間体」であり、そこからの「集約と解放」にがっつりジェンダー問題が絡んでくるところが、強い憤りと何もできないやりきれなさを感じます。そして、その状況を象徴的に見せるスタンダードサイズの画角(1.33 : 1)。逃げ場のなさが強く伝わり、観ていてとても息苦しさを感じます。(やはり、ちゃんとカーテンで画角に合わせた調整をしてくれる劇場はいいですな)
はっきり言って、どの立場からも目を背けたくなる辛い作品であることは確かです。ただ、やはり男性は特に心して観るべき内容かと思います。物語中にちょいちょいみられる、男性が気にするメンツは心底どうでもいいと思えて小ささを感じますし、また集まるとすぐに始まるホモソーシャリティから出る言動は本当に醜い。男性陣、ともに気を付けましょう。