「家制度を復活させたい人は必見」ジョイランド わたしの願い おきらくさんの映画レビュー(感想・評価)
家制度を復活させたい人は必見
人妻が望遠鏡で他人の自慰行為を覗き見しながら、ガタついた窓のサッシをゆっくりと左右に押したり引いたりする場面。
「欲求不満描写として面白い見せ方するなあ」と思って観ていたら、それを夫の兄に見られて気まずくなる人妻。
そうなる心情を理解しつつも、最初に観た時はちょっと滑稽に見えた。
しかし、映画を最期まで観終わった後にこの場面のことを思い返すと、切なすぎて胸が張り裂けそうになる。
副題の『わたしの願い』の「わたし」とは誰のことなのか。
映画を観終わった後は明白だと思う。
昔ながらの家制度が今の日本だと崩壊しているが、そうなってて本当に良かったと心から思える作品。
子供好きの夫・ハイダルが主夫をして、仕事好きの妻・ムムターズが家計を支える。
これで十分上手くいっていたのに、三世代家族の家父長制維持のため、何をやらせてもダメダメな夫には無理矢理仕事をさせ、仕事が楽しくなってきた妻からは仕事を奪って家の世話を全部やらせる。
この時点で胸糞悪かったけど、結果あのザマ。
(人によっては)妊娠した瞬間、人生お先真っ暗になる制度、必要?
日本でいまだに家制度を復活させたがってる人に是非観てもらって、感想を聞いてみたいですね。
一方、トランスジェンダー要素はこの映画には無くても良かったように感じた。
同性婚のニュースでのヤフコメの書き込みで「男みたいな見た目をしたやつが女子トイレに入ってきて気持ち悪いから反対」という意見をよく見かけるが(この意見自体は幼稚な話のすり替えだと思う)、そういうことを言ってくる人がこの映画の結末を観たら、「同性愛者なんて認めるからこうなるんだ」と言いかねないと思った。
トランスジェンダーの場面自体は素晴らしいと思ったけど(特に陰口叩いていた奴らを言い負かす場面は最高)、この映画の主題とは直接関係無い気がした。
ハイダルがダンスの練習をする場面で、志村けんの「変なおじさん」を超久しぶりに思い出した。