「期待度○観賞後の満足度○ 上映時間は差程変わらないのには前作は時間の長さなど少しも感じなかった。でも本作は長く感じた。それが前作と本作との一番大きな違い。」グラディエーターII 英雄を呼ぶ声 もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
期待度○観賞後の満足度○ 上映時間は差程変わらないのには前作は時間の長さなど少しも感じなかった。でも本作は長く感じた。それが前作と本作との一番大きな違い。
①駄作『エクソダス』から私の中のリドリー・スコットへの評価は一気に下落してしまった。1970~80年代に『エイリアン』『ブレードランナー』『ブラック・レイン』『グラディエーター』等の佳作・秀作・傑作で楽しませて貰った身としては実に悲しいけれども仕方がない。
『プロメテウス』もダメ、『エイリアン・コヴェナント』もダメ、『オデッセイ』は珍しく面白かったけれども、『グッチ』も『ナポレオン』も長いだけ。
だから本作も期待と不安と綯交ぜ状態で鑑賞に臨んだが…
②恐れたほど悪くはなかったけれども、やはり演出の切れが鈍っているのは否めない。『グラディエーター』における演出のシャーブさは影を潜めてしまっている。
御年86歳にしては頑張ってはる、と言うべきなのかもしれないけれども、最後の四分の一ほどは息切れして大雑把な印象。
③ハリウッド黄金期に作られた『聖衣』や『ベン・ハー』、『クレオパトラ』『エル・シド』等の史劇は映画の出来はともかく豪華絢爛、金かけてます、という感じだったけれども、最近の映画は未来世界とかコミックスの映画化にばかり金を掛けているので、こういう豪華な史劇をいま作ると言う点では評価されるべきなのかもしれない。
④前作も本作も史実に忠実かと云えば全くそうではないのだが、物語世界としてはアウレウス⇒マキシマス⇒ルシアスと「理想のローマ」への回帰という夢のリレーが本作で完結したという点では感慨深いものはあった。
⑤ただ、本作がやや締まりがなく散漫な印象なのはリドリー・スコットの演出力の衰えにも原因はあるものの、敵役(皇帝兄弟)が弱い(前作のホキアン・フェニックスの憎々しさが懐かしくさえある)のに加え、何より前作におけるマキシマスというカリスマ的キャラクターに匹敵するキャラクターがいないのが一番の要因だろう。
だから随所にマキシマスの面影を出すことでその弱点をカバーしようとしている。
⑥『アフターサン』『異人たち』が印象深いポール・メスカルは演技力がある有望な若手俳優だし本作でもいままでになくマッチョな役で頑張っているけれども、話の展開が雑(特に後半)で役の深掘りが出来ず結局マキシマスの影の中から出られなかった印象。
⑦個人的にはアカシウス将軍に安定感のある演技で貫禄とカリスマ性をもたらしたペドロ・パスカルが一番魅力的だった。初めてペドロ・パスカルの良さが分かった次第。
⑧デンゼル・ワシントンはマクリヌスという最後まで腹の底が見えない人物を演じて流石に上手いが、ローマ(というかアウリウス帝が目指した理想のローマ)を崩壊させる或いはその回帰を阻む執念を持って権謀術数を張り巡らせた人間にしては最後のジタバタがお粗末過ぎて興醒め。
⑨ローマ帝国の退廃的な面の描写も、フェリーニの映画で描かれた退廃的なローマに比べれば学芸会レベルの甘っちょろさ。
⑩映画で一番大切なのは投入された金の額でもなく物量の多さでもなく進化・発達したテクノロジーでもなく観るものを驚かす仕掛けでもなく(映画がある意味見世物である点これは大事かな…)、演出の力と脚本の巧みさと編集の上手さ…