「圧倒的駄作!もうリドリー・スコットの才能は枯れたかも。」グラディエーターII 英雄を呼ぶ声 Teruさんの映画レビュー(感想・評価)
圧倒的駄作!もうリドリー・スコットの才能は枯れたかも。
【総論】
全く引き込まれなかった。前作と比較し、最初から最後まで悪いところが目に付くだけの映画だった。すべてが二番煎じ。再度前作を確認しようと家に帰って15年ぶりぐらいに前作を鑑賞し、さらに映画館で感じた以上に全く同じ展開が低いレベルの完成度で繰り返されているだけなことを改めて確認し、よく映画会社も大枚をはたいてこの作品にOK出したな、と感じてしまった。。。
【仔細気になったところ】
まず、前作は「匂いを感じられる」映画だった。それは主人公がシグネチャームーブである砂を確認する動作の描写の前から感じられた。ゲルマニア人との戦いの際には黒い土が顔や体についていてその土から森の匂いなどが感じられた。そのあとのローマ帝国辺境の地で奴隷になるときなども、土煙で埃っぽいという、その場の空気を吸っているような感覚がちゃんと得られた。だが本作(Ⅱ)ではすべてがきれいすぎて「僕たち映画の撮影やってます!」というようにしか見えなかった。なぜこの違いすらリドリー・スコットは分からなくなってしまったのだろうか。それとも当時は有能な右腕がいて、今回はいなかったのだろうか。また、本作のCGのサイよりも前作のリアルのトラの方がよっぽど迫力があった。今は当時よりも動物愛護の観点で難しいのかもしれないが、それならばいっそいらないシーンだったのではと思う。特にサメは昨今のCGでもチープな部類だった。
次にストーリー。本当に全くの焼き直し。本作鑑賞後に同じ日に家で前作を見直すと、驚愕するほどに全く同じ。そして役者、セリフ、全てにおいて前作が勝っているという、なんのための2作目だったのかというレベル。リドリー・スコット、もう映画を撮るのは老後の余暇活動的な感じで「仕事をしていること自体が楽しい」だけなのではないかと感じた。もう何か革新的なもの、圧倒的なものを作る気がそもそもないのではないかとも感じられた。
主人公の境遇。前作は妻と子がいる年齢で本当は故郷に帰りたいのに何年も戦地でローマ帝国繁栄のために人生を捧げ、皇帝からも寵愛を受けていた国の英雄が奴隷に落ちたところから始まるからのだが、そういうバックグラウンドも本作は希薄。ただの敵国捕虜からのグラディエーターなので国の英雄がその国の奴隷になってしまう転落というドラマがない。また、一見すると愛する人を殺されたという前作と似た境遇を持っているように見えても本作の主人公に共感できないのは、前作のマキシマスは故郷を離れてローマのために各地で奮闘する中、毎日妻と子のために祈りをささげたり、何日故郷から離れているかを2年と2百何十日と数えるような家族思いの描写があってからのコモドゥスの悪しき謀略で妻子が焼き殺され吊るされたのに対して、本作は若い妻のシンプルな戦場での戦死。それに対して突然個人的な怒りを爆発させているだけなので、それは別に鑑賞者は気持ちが乗らないよね、ということすら分からなかったのだろうか。。。戦場に出ているならお互い死ぬかもしれないことは覚悟しているのではないか。。。農家で夫の帰りを待っていて普通にしていれば死なない人がコモドゥスの命令によって焼き殺され吊るされたのと、自ら殺し合いの場である戦場へ赴き、そこで飛んできた矢で殺されるという戦場では至極まっとうな死に方をしたのとでは恨みのレベルが全然違う。なのでシンプルに前作と比較して浅い(ごくまともな、当人もそのリスクを認識していたであろう)死に対する怒りに対して観客はノリきれない。弓矢を放ったのが敵将だったから敵将を恨んでいるだけ。それ、映画の主人公の復讐の動機にするような死因ではないのでは。。。
俳優陣。特に主演。魅力が全くない。そこまで著名になったわけでもない割に最近「映画をコンテンツと呼ぶな」「汚らわしい言葉だ」などと発言していることもさらに冷めた。こんなレベルの映画で主演やっただけで結構な発言をするんだなと。映画は結局のところは多くの人にとっては余暇時間に消費するコンテンツの一つに過ぎない。なぜそんな喧嘩を売るような発言ができるのか。多くの映画に関わる人や大御所も、名作、傑作はあれど映画は娯楽という認識があるのではないか。そして前作を見て思ったが、ルシウス、あのブルネットのサラサラヘアーがどう成長してもこの主人公にはならないだろ。。。キャスティングの時点でミスしていると思う。すべての演技にオーラがなかった。それに比べラッセル・クロウは年齢も適役であるだけでなく、この役のための表情ができていた。ゲルマニア戦(奴隷前)からビューティフルマインドなどとは全く別の戦地で疲れた哀愁を帯びた表情ができていた。このドラマにはある程度長く人生を生きてきた疲れや哀愁、妻子がいるといった要素がとてもフィットしていたと思う。それに比べると本作は若い男が逆上しているだけに見えてしまう。途中から「ローマは」とか言い出していたがそれもなんとなく浮いて聞こえた。(最初の怒りと違うから)
それともう一つ。しゃべっているセリフは英語でもちろん構わないけど、なんで壁に刻まれた言葉が英語なんですか!!!そこはラテン語にしておかないと締まらないでしょ!それは流石におかしいでしょ!!衣装とかに気合いを入れるならまずはそこでは?!
以上もろもろ、全く見る必要がない、むしろ前作グラディエーターの美しい終わり方にいらない尾ひれ、マイナスのイメージがつくから見ない方がいい映画とすら言えるかもしれない。(ジェイソン・ボーンやボーン・レガシーと同様)
逆に、同じぐらい時間が経ってから第2作目をうまく作り上げたトップガンはすごいなと感じてしまった。
>そういうバックグラウンドも本作は希薄。
昔から前作好きだった私も非常に同感しました。
妻戦死後の船内でユーモアを出す描写からの違和感が拭えず、ストーリー、世界観、各キャストのセリフ回し、音楽などの1つ1つが焼き増し感じてしまいました。
せめて全く違うストーリーラインであった欲しかったです。、