「圧巻のラストはシンシアの歌声だけで泣ける。」ウィキッド ふたりの魔女 キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
圧巻のラストはシンシアの歌声だけで泣ける。
最近の洋画としてはかなりの大作ということで、あえて109シネマズの「SCREEN X」を選択。スクリーンが正面だけでなく、劇場内の側面まで広がるアレだ。
「ふしぎの国のアリス」と並んで、私にはよく分からない童話「オズの魔法使」。
今回の「ウィキッド」はその前日譚らしいので、ひとまずジュディ・ガーランド主演の「オズの魔法使い」を予習で観賞して準備。
冒頭、アリアナ・グランデ演ずるグリンダの歌に感心していると、このグリンダがかなりコメディ寄りのキャラクターで、何だかとってもキュート。
自分本位で外ヅラが良く、打算的でワガママに見える彼女だが、社交的で仲間も多く、可愛げがあって憎めない。
そして、シンシア・エリボ演ずる西の魔女エルファバが登場すると、これがアリアナ・グランデを上回る歌の上手さでびっくり。
グリンダに対し、彼女の性格は陰気で引っ込み思案で内向的。
対極の二人だが、どちらも人間の中にある二面性を象徴している様に見える。 決して対立しない、誰の中にもそんな部分ってあるよね、こういうところ羨ましいよね、っていう親近感に近い。
多様性の否定や人種による分断、権力者の圧力による支配やデマの流布、ルッキズムも連想させながら、人間のエゴから恋愛や友情も視野にいれた「山盛り」の構成は、放っておくと散らかってしまうところを、随所で歌が整理してくれる。
だから、物語全体がよくできているかというとそうでもないけど、歌唱シーンの素晴らしさでまとめあげている感じ。
曲が最高に活かされるような衣装・セットそしてダンスと歌。
これこそ「ミュージカル」。
ここぞというところでは大物俳優が登場したり、「オズの魔法使い」にゆかりのある俳優がカメオ出演したりと、ファンサービスもある。
そして圧巻のクライマックス。
ちょうど先週、劇団四季で観たこともあって、「アナ雪」の「LET IT GO」を思い出した。
あの内気なエルファバが、自分の意思で立ち上がり、能力を解放する。最後はもうシンシア・エリボの歌声だけで泣けてくる状態。
ラストはあの絶唱で劇場の床が振動してた。
2時間40分という上映時間は私には決して長くない。
予習はなくても楽しめるけど、しておいたほうが物語には入りやすいかな。
是非、音響重視の環境で観賞してほしい。
※今回利用した「SCREEN X」は、確かに没入感すごくて悪くないけど、正面スクリーンだけのシーンと、左右の壁を使うシーンとが切り替わるので、ちょっと気になった。
初見の映画で行くよりは、一回普通に観てから「SCREEN X向きだな」と判断して使うくらいがいいかな。
「ウィキッド」の2回目以降、SCREEN Xで観賞するなら、間違いなくオススメ。