「ブレイキンのための102分」ザ・ブレイキン うぐいすさんの映画レビュー(感想・評価)
ブレイキンのための102分
長期喧嘩中の高校生ブレイカー兄弟が、ブレイキン世界大会に挑む中でブレイカーとして・人として成長する物語。
…とは書いたものの、率直に言って兄弟のドラマのプロットはブレイキンでなければ成立しないようなものではない。
ブレイカーとしてのパートも、スポーツものの定番のルーキーや伸び悩む選手が急速に成長するパターンではなく、最初からトップクラスのパフォーマー揃いの環境で、ルールや登場人物達がどうすごいか等の説明は一切ない。強いて言えば、初顔合わせの面々とチームを組み、絶対的な相手にコーチングされる経験が無かった若者達が、自分の苦手な部分を認めて克服する自分との戦いである。が、観客が成長を実感できるようなわかりやすいエピソードはない。
そういう構成のため、スポーツを題材にした人間ドラマや、競技の面白さを伝えるタイプの作品を予想していた自分は戸惑った。この映画の目的はドラマや競技の魅力を伝えることではなく、トップブレイカーのパフォーマンスを収めることなのだと思う。
ミュージカル作品がエピソードではなく歌やダンスによって感情を表現し物語を動かすように、本作はブレイキンのダンスパートが物語を動かしている。
パフォーマンスを収録した部分からは相当な熱量を感じた。競技中は演出目的のシーンを挟まず、パフォーマンスを真摯に撮り続けており、プレイを劇中のアクションとしてドラマチックに撮ることよりも、正確に撮ることに重点を置いている印象だった。
五輪のブレイキンは個人戦だったが本作は団体戦がメインで、複数人でのパフォーマンスやダンスバトルらしい煽り合いが観られたのは良かった。ストリートカルチャーへのリスペクトが感じられる場所選びも面白かった。
実際の代表クラスのブレイカーが多数参加していることからも、本作はブレイキンを撮る本気のプロジェクトだったのだろう。良い意味でブレイキンという競技のPVだった。