「人と人との「ご縁」に胸が熱くなる」アイミタガイ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
人と人との「ご縁」に胸が熱くなる
何でも相談できた親友を事故で失い、恋人との結婚に踏み切れないでいる主人公、亡くなった娘が児童養護施設との関係を深めていたことを知る親友の両親、自分のピアノで若者を戦争に送り出してしまったと後悔している老婦人の物語などが、同時並行で描かれる。
主人公の祖母が「アイミタガイ」の意味を説明したところで、この後、AさんがBさんを助け、BさんがCさんを助け、CさんがAさんを助けるといった展開になるのかと思ったのだが、結局、そんな「情けは人の為ならず」みたいな説教臭い話にはならなかったので、少しホッとしてしまった。
ここで描かれるのは、「ご縁」とでも解釈できるような人と人との繋がりの奇遇さで、主人公と親友が中学時代に聞いていたピアノの演奏者が老婦人だったり、親友の両親が児童養護施設に向かう時に乗ったタクシー運転手が、親友(娘)のことを知っていたり、主人公が親友と別れた駅で、主人公の恋人が親友の父親を助けていたり、主人公と恋人が結婚指輪を注文しようとした宝飾店の店主が、老婦人がピアノを演奏した式に出席していたりといったエピソードで、そうした「ご縁」が明らかになって行く。
何気なくすれ違った人が、実は「知り合いの知り合い」なのではないか、みたいなことを想像するのは楽しいが、それは、「神の視点」でしか分かり得ないことだろう。
そうした人と人との繋がりを物語として具現化できるのが小説や映画の醍醐味であり、本作の面白さも、そうした点に尽きるのだと思う。
その他にも、親友が死んだ後も、彼女のスマホにメッセージを送り続ける主人公と、それを読むのを楽しみにしている親友の母親との繋がりや、トイレに娘の写真が展示されている児童養護施設に娘の保険金を寄付する両親のエピソードなどにも、胸が熱くなるものがあった。
劇中、親友の父親が「善人しか出て来ない小説は信用できなかったが、今はそういう物語を信じたくなった」と言うシーンがあるが、その台詞をそっくりそのまま「お返し」したくなるような、何だか優しい気持ちになれる映画だった。