「【”行っちゃえ!”不器用だが善なる心を持つ、多くの人達の不思議な縁を描いた見事なる群像劇。今作は、脚本が絶妙に上手く、観賞中に心がドンドン浄化されて行く人間性肯定映画であると私は思います。】」アイミタガイ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”行っちゃえ!”不器用だが善なる心を持つ、多くの人達の不思議な縁を描いた見事なる群像劇。今作は、脚本が絶妙に上手く、観賞中に心がドンドン浄化されて行く人間性肯定映画であると私は思います。】
ー 今作は、繋がりのある掌編を集めた連作短編集を基に一本の映画にしたものだそうである。
それは、ムズカシイ作業ではないかと思うのであるが、今作は、見事に心に沁みる作品になっており、鑑賞後に優しい気持ちになり、明日からも前向きに生きよう!と言う気持ちになる作品でもあるのである。-
◆感想<Caution!内容に触れています。>
■今作では、
1.高校時代に苛められていた梓(黒木華)と親友である写真家の叶海(藤間爽子)との関係を中心にして
2.両親が離婚した事がトラウマで結婚願望が薄い梓と、ちょっと頼りないが、人間味あふれる男澄人(中村蒼)との恋の行方
3.車の事故で叶海を亡くし、悲嘆に暮れる両親(田口トモロヲ&西田尚美)が、娘が行っていた児童養護施設への崇高な行為を知り、再生していく姿
4.ウエディングプランナーの梓が、金婚式のピアノ演奏者を探す過程で出会った93歳の品のあるご婦人(草笛光子)との出会いで、苛められていた時の事を思い出し、彼女を助けた叶海と二人で聞いたご婦人のピアノの話をしたり
5.澄人が電車通勤の際に、寝過ごしそうになっていた初老の男との関係性や
6.澄人が梓との一歩を踏み出す理由になった梓の叔母(風見じゅん)の家を訪ねるシーン
等々が、物語が進むにつれてドンドン連関していく脚本の素晴らしさと、役者さん達の姿の素晴らしさに魅入られる作品である。
■特に沁みたのは、叶海を亡くした両親が、彼女が毎年節目節目にケーキなどを差し入れしていた児童養護施設を訪れるシーンである。
二人は、叶海の死により得た保険金一千万を、固辞する院長(松本利夫)に寄贈し、娘が遺したトイレに貼られた多数の写真を見ながら、涙を流す姿である。
■又、叶海の死を知りながらもそれを受け入れられずに、彼女のラインに日々の出来事を送る梓の姿と、叶海のスマホを見ている母の姿。
そして、ある梓からのラインメッセージ”叶海がいないと未来に進めないよ。”を読んで、澄人からプロポーズされた事を知った梓の母の決断と、送ったラインのメッセージが次々に既読になって驚く梓の表情及び、送られて来た、
”行っちゃえ!”
というメッセージは、実に沁みたな。
何故ならば、あのラインで、梓の時間は未来に向けて、動き始めたと思ったからである。
<今作は、不器用だが真面目に生きる多くの人達の不思議な縁を描いた群像劇である。そして、その素晴らしき脚本と、黒木華さんを筆頭とした、出演俳優さん達の素晴らしい演技(特に、草笛光子さんのお姿は、後光が刺しているように見えたよ。)引き込まれた作品でもある。>