「論文が書けそう」ブラッド・スウェット&ティアーズに何が起こったのか? ゆみありさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0論文が書けそう

2024年11月2日
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鑑賞方法:映画館

知的

難しい

ロック、ブラスロック、米ソ冷戦、社会主義国家、鉄のカーテン、ユーゴスラビア、ルーマニア、ポーランド、チャウシェスク、ニクソン、ベトナム戦争、イッピー、反体制運動、キャンセルカルチャー…。論文が書ける。
ロックとジャズの融合を図り1968年にレコードデビュー。その斬新さを売りにしたBS&Tは二枚目のアルバムからデヴィッド・クレイトン・トーマスをボーカルに迎え大ブレイクした。代表曲のスピニングホイールは日本でもヒット。ロック少年だった僕もシカゴとBS&Tをブラスロックの二大バンドとして認識していた。人気絶頂の最中の1970年、BS&Tは東ヨーロッパツアーを敢行。なぜ東欧に行ったのかという裏話も興味深い(好き好んで行ったわけじゃないんだよ)。そして、彼らのロックに社会主義国家の若者はどう反応したのか、それに対して政府はどう反応したのか。ユーゴスラビア、ルーマニア、ポーランドそれぞれに異なり、とても興味深い。さらにそれに対してBS&Tはどう対処したのか。これもまた面白い。そして帰国。彼らに対してアメリカ合衆国はどう対応(予め用意されたもの)し、またそれに対してアメリカの若者はどう反応したのか。とりわけ反体制の代表とも言える過激な若者の集団であるイッピーの反応、発言と行動。そしてBS&Tは人気の頂点から奈落の底に(シカゴがトップのバンドとしてミュージックシーンに君臨し続けたのとは対照的)。何もかもが興味深く面白い。そして気の毒なBS&T。音楽好きな僕としては、ロックって心を開放してくれるものなんだなと改めて痛感し、またそこに政治的なものを絡めてみることに強い違和感を覚えた。
*BS&Tのロックをスクリーンで楽しむことができる素晴らしい映画です。

ゆみあり