劇場公開日 2024年9月27日

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「カッコよさに痺れる」ブラッド・スウェット&ティアーズに何が起こったのか? LSさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5カッコよさに痺れる

2024年10月13日
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鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

難しい

西側がソフトパワーで冷戦に勝利したという言説はよく聞くが、東の人々の禁じられた西側文化への傾倒が実際はどうだったのかを知りたくて鑑賞。

BS&Tというバンドも楽曲のことも知らなかったが、挿入される東欧ツアーライブ映像の、音と歌の迫力にただただ圧倒された。このパフォーマンスにぶん殴られたら、そりゃあ感化されずにいられないだろうと思う。実際、観客の反応も、ルーマニアの会場では熱狂した聴衆に当局が警備犬をけしかけて追い出しを図るほどで、国によって違いはあるにせよ(アングラの音源で聴いていた人もいただろう)、多くの人の心に今までにない強い印象を残し、影響を与えただろう。

だが、西側文化(とそれが含意する自由)への憧れと、同等の価値を提供できない自国体制への幻滅が、結果としてパワーになったというのは納得だが、そのために文化を「武器」に使おうとするとどうなるか。その一つの帰結が、BS&Tの悲劇だったといえる。米国の政策としては成果があったかもしれないが(ロックは彼らが初だが、音楽家の派遣自体は50年代から続いていた事業だという)、彼らに関する限り、それはバンドの将来の成功を犠牲に成り立つものだった。
ベトナム戦争下の米国社会の分断という状況のせいでもあるが、政府のプロジェクトとして不可避的に政治の介入を受ける、という点は、(すでに1回失敗している)クールナントカを進めたい向きにはぜひ教訓にしてほしいところ。

メンバーや関係者へのインタビュー、公電など外交記録に加えて、ライブの素晴らしいフィルムとサウンドトラックがふんだんに使われているのはこのツアーを映画にする予定だったからで(ツアースポンサーの米国務省が許可を出さず素材も回収された)、冷戦史、BS&Tの活動史のドキュメンタリーとしても、音楽映画としても楽しめる。

LS
ノーキッキングさんのコメント
2024年10月16日

何回聴いたかなあ、“レコード”がすり切れるまで。BTSなんてややこしい!

ノーキッキング