「音楽好きなら是非。音楽と政治が混同されるとろくでもない結末にしかならない好例」ブラッド・スウェット&ティアーズに何が起こったのか? yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0音楽好きなら是非。音楽と政治が混同されるとろくでもない結末にしかならない好例

2024年10月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

今年351本目(合計1,443本目/今月(2024年10月度)2本目)。
※ (前期)今年237本目(合計1,329本目/今月(2024年6月度)37本目)。

 いわゆる冷戦時代に、アメリカの政府によって「利用された」バンドが当時の共産主義国(ポーランド、チェコ等)に行く一種のドキュメンタリー映画です。フィルムも一部は残っていたのか(このことは示唆される)、いくつか当時の映像であろう点もあります。

 今でこそ2023~2024年で考えれば、特に音楽等芸能文化というものは政治と切り離す国のほうが多く、むしろ国際的に孤立している北朝鮮やシリア、あるいは多くの国が制裁をかけているキューバ、イランほかを除けば、一部の国で歌詞に規制がかかるのであろう国(主にイスラム系の国があたるが、イスラム系の国でも政教分離が進んで世俗化している国もある)を除けば、「音楽活動が国の思惑で妨害されることもなく入国手続きが適正である限り自由だし、また国の思惑で事実上も実際上も強制されることはない」ということは当然の理ですが、当時がそうでなかったことはこの映画が示す通りです。

 実質的にドキュメンタリー映画で、映画に娯楽性を求めるのであればこの作品が良いのかという点は確かに気になりますが、実際にアメリカという(当時の水準でみても)先進国においてこのような音楽バンドの政治活動があったこと等はあまり知られておらず、この映画がかなり細かく描いていたのは好印象でした。

 こうした過去があることも踏まえて、音楽であっても映画であっても、いわゆる「芸術活動」が政治の道具として使われることがないことを祈るのみです。

 なお、放映している映画館自体は多いもののどうしても観客が見込めないのかパンフレットが扱いなしになっていたのが残念でした。

 採点に関しては以下まで考慮していますがフルスコアです。

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 (減点0.2/「社会主義」と「共産主義」が混同されて出てくる)

 この映画が扱うのは当時の冷戦時代であり、民主主義と共産主義の扱いであったことは常識扱いで、映画の字幕の大半は「共産主義」ですが、同じ英語の聞き取りなのに「社会主義」の字幕のところがあります。

 ただ、共産主義か社会主義かの議論の映画でもないし、この2つは(映画で扱う範囲では)実質的に同義語であるし(厳密には異なる)、字幕ミスかなとは思ったのですが、特にそれによって理解が妨げられることはないので採点幅は考慮しています。
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yukispica