劇場公開日 2024年9月20日

「水滴の音が地球の心音に聞こえた」SONG OF EARTH ソング・オブ・アース humさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0水滴の音が地球の心音に聞こえた

2024年10月22日
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鑑賞方法:映画館

ドローンでみせるノルウェーの山岳地帯の雄大な四季。
切り立つ断崖に鋭く沿う視線、圧倒的な樹木のざわめきの上を滑る感覚、美しさと厳しさを重ねるフィヨルドの神々しいオーラ。
まるで鳥になった気分だ。

その景色の一部のような高齢夫婦の暮らしぶりがある。
彼らの言葉や行動は常に淡々として自然からはみでることをせず自分たちらしい豊かさで過ごす。
生かされている動物の一つとしての存在をそっとその場におくことを知りつくし自分以外の全てへの敬意に満ちている。

地球の温暖化が危惧されてからそのスピードは緩まずむしろ加速しあらゆる場所での信じ難い事象を見聞きすることが当たり前のようになってきた。
このドキュメンタリーの撮影中にもある瞬間がダイナミックにカメラに収まった。
その時、目の前の出来事をじっと見る二人の後ろ姿が印象的だったのは、人間がしてきたことの積み重ねの結果が加担していることを他の動植物や山や川などに対して心の深くで詫びているようにみえたから。

あの大地の全てに大切な仲間として認められているだろう彼らが。

厳かに日々を繰り返し畏れずに森羅万象に対処してきた彼らが。

曽祖父が植えたという針葉樹が聳え立つ荘厳な景色はどう思うのだろう。
澄んだ美味い空気を画面越しに吸いながら感じる私のこの何かうしろめたい気持ちを。

慣れてはいるが決して若くはない足取りの彼がまた山奥を歩み、そう遠くない将来を見つめる年輪のみえる手で必要なだけの土を掘り挿し木する。
その仕上げに山野草の白い花をふたつそっと置いた。
彼がトウヒの大木に「そろそろこの土地をあなたとともに見守る番がきましたよ」とささやいたのだと思った。

生き様を象徴しているようなその様子は、このドキュメンタリーを記録した娘の一生の宝物でもあり、便利を追い求めすぎる私達への深い警鐘であろう。

hum
もりのいぶきさんのコメント
2024年11月3日

humさん、コメントありがとうございます。・_・

>澄んだ美味い空気を画面越しに吸いながら感じる私の
>この何かうしろめたい気持ち

地球温暖化を筆頭に、環境のいろいろな変化が問題になって
いるのは分かっているつもりなのですが、この作品を観ている
最中、氷河の崩落シーン等をみても地球温暖化の方向にも後ろ
めたさにも考えが至りませんでした。 ・-・; うーん

humさん以外にも、同様に温暖化の問題を上げられている方が
いらっしゃいました。感性が…などと自分のレビュータイトル
に書いたのですが、自分には無かった観点からのレビューを読
んで刺激を得ています。・_・

良いレビュー読ませて頂きました。
ありがとうございます。

もりのいぶき