「(オンライン試写会は内容に関係せずネタバレ扱い)デンマークが歩んだ歴史など」ぼくの家族と祖国の戦争 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
(オンライン試写会は内容に関係せずネタバレ扱い)デンマークが歩んだ歴史など
今年282本目(合計1,374本目/今月(2024年8月度)7本目)。
※ (前期)今年237本目(合計1,329本目/今月(2024年6月度)37本目)。
(前の作品 「幸せのイタリアーノ」→この作品「ぼくの家族と祖国の戦争」→次の作品「時々、私は考える」)
第二次世界大戦を扱った映画で、8月や12月には多く放映される傾向がありますね。その中でも、デンマークを占領したドイツによる、占領されたデンマークの立場としてのドイツの難民受け入れといった問題を扱っています。
この部分は実は結構難しいところがあって、デンマークの歴史や当時置かれていた事情を知らないとちょっと難しいところがあります(後述)。映画内では明確にその部分が抜けているので知識を補う必要がありますが、一般的に「誰であっても難民であり緊急の状況にあるものを助ける行為」がたとえもたらした国が敵国であっても理解はしうるわけであり、この点はどちらが良い悪いを明確に描くことなく(実際、公式サイトでもよい悪いについては何も触れないということを明確にしている)平等に扱っていた点については良かったです。
採点にあたっては特に気になる点はありませんが、デンマークの歩んだ歴史やこの当時の第二次世界大戦(デンマーク、ドイツほか)に関する知識が裏で動いていますのでそれらがあると便利です。
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(減点なし/参考/デンマークの歩んだ歴史)
デンマークは中世こそ「カルマル同盟」で一時は大国となりましたが、その後解消されてしまい、三十年戦争が勃発するとデンマークは出兵しますがここで大敗してしまいます。その後も北方戦争などでロシアからの侵略を経たこともあり、国としては一応当時の世界水準で考えれば上のほうでしたが、第一次世界大戦の当時にはとてもどうにもできるものではなく、第一次のときには完全中立を保っていました。しかし第二次世界大戦がはじまる直前のデンマークはさらに弱体化していたのです。
(減点なし/参考/ドイツとデンマーク、フランスなどとの関係)
、一方で第二次世界大戦においては、ナチスドイツの真の狙いはデンマークではなくノルウェーであったため(ノルウェーを占領してこそイギリスに圧力がかけられる)、単に「通過国」に過ぎない(ドイツとデンマークは接しています)デンマークはわずか6時間で侵略に対して降伏してしまいます。このため、形式的には占領された形になりますが、デンマーク国内での自治がかなり認められる等、ドイツが他の国にとった政策とは明らかに異なるもので、そのためにデンマーク側にもドイツの事情について考えをある程度理解するもの(真に悪いのはヒトラーやその側近であり一般市民は何ら罪はないということ)もいました。一方で、ドイツに対して最後まで戦ったフランスは完全に占領されいわゆる傀儡政権ができてしまったように、ドイツが占領した国においてその扱いに差が見られ、デンマークとフランスはその最たる極端な例です。
このように、形式的には占領されてもデンマーク側もまた農業ほかでドイツに頼らざるを得なかった事情があったこともあり、仲良しとは言わないものの比較的「ドイツの罪のない人々は救う」という、「ドイツは絶対に許さない」みたいな国とは異なる考え方も一般市民には一定数存在しており、それがこの映画にも表れています。こうした部分を知っていると有利かな…というところです。