「しっかりとオマージュ」テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
しっかりとオマージュ
古くからのファンも多く、「劇場」としての人気が高いTOHOシネマズシャンテ。今日も「テルマ」とまではいかないものの、お元気なお姉さま方が多くご来場されています。そして大変にリラックスされているようで、上映中も思わず出てしまう独り言に納まらず、同行のご友人との(短めの)会話などもあって、序盤こそは「ちょっとちょっと」と思いながら鑑賞していましたが、まぁそれも(ある程度は)許されるような楽しい作品であり、笑い声の絶えない「いい空間」を味わえるような素敵な作品でした。
まず、本作のトレーラーでは「おばあちゃん版ミッション・インポッシブル始動!?」なんて宣伝文句が使われていますが、これは誇大広告なんかじゃなくてしっかりとオマージュです。劇中では序盤から、テルマ(ジューン・スキッブ)と孫のダニエル(フレッド・ヘッキンジャー)が『フォールアウト(イーサンがジョン・ラーク追跡のために疾走するシーン)』を鑑賞してたり、小道具としてトム・クルーズの顔がデカデカと1面にある新聞が扱われたりのフリに始まり、オレオレ詐欺に遭った犯人から1万ドルを取り返すため、トムに感化されたテルマが「遂行不可能な作戦」に挑みます。テルマ=イーサンを中心に、旧友・ベン(リチャード・ラウンドトゥリー)=ルーサー、そしてダニエル=ベンジーがチームとなって進んでいくサスペンスな展開は、案外ハラハラでまた知恵が絞られており、その上ウィットに富んだやり取り進む「作戦」は思いのほか興奮して大変に楽しめます。
そして、「老人=弱者」と決めつけてアンコンシャスバイアスしがちな家族、そして周囲の想像力の欠如を見事に逆手に取った展開の巧みさは天晴れ。更には、実は「世代なんて関係なく」人は誰しも自分の弱みや自身のなさに悩み、そしてそれが足かせで踏み出せないことが往々にしてあるもの。本作のテルマはそういうことを気づかせくれ、そして彼女の勇敢さに俄然勇気がもらえます。
必ずしも劇場必須な作品性ではありませんが、結局は劇場で感じた雰囲気も混みで「可笑しくて温かい」と思えた良い鑑賞体験でした。お気が向くようでしたら是非。良作です。