「昭和っぽい青春映画が好きならOKだけど、抗争シーンは意外と淡白でしたよ」オアシス Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
昭和っぽい青春映画が好きならOKだけど、抗争シーンは意外と淡白でしたよ
2024.11.20 アップリンク京都
2024年の日本映画(93分、R15+)
幼馴染3人がアウトローの世界で生き抜く様子を描いた青春映画
監督&脚本は岩屋拓郎
物語の舞台は、愛知県名古屋近辺(ロケ地は名古屋市&一宮市)
地元の暴力団・菅原組の構成員としてモグリの売人を始末している富井ヒロト(清水尋也、学生時代:深澤幸也)は、地元の半グレ集団と複雑な関係にあった
木村(松浦慎一郎)が率いるその集団には、幼馴染の金森マサト(高杉真宙、学生時代:永原諒人)がいて、それでも組の命令を忠実に守って摘発を繰り返していた
ある日のこと、学生時代の事件が原因で疎遠になっていた幼馴染の紅花(伊藤万理華、学生時代:美音)を見つけたヒロトは、彼女を追って居場所を突き止めた
彼女はレストランで働きながら一人暮らしをしていて、時折街のコインランドリーに来ていた
ヒロトは彼女に声を掛けるものの、紅花は一切ヒロトのことを覚えてはいない
それは、事件が原因で、それによって紅花の記憶は封印されていたのである
映画は、組長(小木茂光)の息子タケル(青柳翔)が紅花を見つけ、母親(新井郁)の借金があると言って、組が面倒を見ているクラブで働かせるところから動き出す
それを知ったヒロトは激昂するものの、タケルに手を出したことで、組から厳重注意を受けてしまう
そんな折、半グレ集団の若者・三井(林裕太)が暴走し、タケルを刺すという事件が勃発する
三井の不始末のために金森はタケルに呼び出され、「俺の下で働くなら」という条件を出される
だが、金森はそれを拒み、三井はあっさりと殺されてしまった
そこに連絡を受けたヒロトと、たまたま一緒にいた紅花がやってきてしまう
タケルは紅花を連れてどこかへ行くものの、そこで紅花はタケルを刺し殺してしまった
ヒロトと金森はその場の構成員を殺して逃げるものの、兄貴分の若杉(窪塚俊介)からの連絡を無視することができず、金森と紅花を差し出せば、ヒロトは許されると条件を提示されてしまうのである
映画は、記憶を失くした紅花がこの地に帰ってきたことによって因縁が再発し、取り返しのつかない事件が起こる様子が描かれている
行き場を失くした彼らが思い出の場所に戻るのだが、おそらくはヒロトか金森の家のなのだと思う
そこには彼らの青春時代がそのまま残っていて、ビデオに収められた映像などもあった
ひとときの安らぎを得ることができ、これがタイトルのオアシスに繋がっているのだが、そんな時間も長くは続かず、彼らは覚悟を決めることになったのである
映画は、あまり物語性がなく、偶発的に事件が起きて、その収拾のために決戦があるという感じになっていた
だが、決戦になってしまう動機がイマイチわからず、組長の護衛的な人たちは何をしていたのかよくわからない
タケルもあっさりと紅花に殺されてしまうのだが、「襲われたので殺された」では無理があるように思う
おそらくは、記憶が戻ったからこの街に戻ってきていて、それで機会を窺っていたという方が自然で、タケルと二人きりになった時に殺す準備をしていたのではないだろうか
また、ヒロトの言う「お前が俺のことを好きだったんだよ」は記憶がないのを良いことに言った告白のようなものだが、この時点で紅花の方は記憶を取り戻していると思う
なので、直前の「私のことを好きだった?」と言うセリフは、彼の本心を聞き出すためのブラフで、ヒロトと紅花の間に恋愛感情があったことを金森は知っていた、と言うことなんだろうと思った
いずれにせよ、テンポがかなり緩めの作品で、路上を歩いていて売人を見つけてお仕置きの件でも、アクションに入るまでの長回しは好みが分かれるように思えた
半グレ集団が強すぎるのかヤクザが弱すぎるのかはわからないが、木村とアンナ(杏花)の二人にやられてしまう構成員とか、観賞用の首まで持ってかれるのは無茶だと思う
物語の世界観が好きな人には良いと思うけど、清水尋也の雰囲気と演技力で保っているところがあるので、それがフィットすればOKなのだろう
パンフレットは寄稿にインタビューなどが満載なので、気に入った人は購入しても損はしないのではないだろうか