劇場公開日 2025年8月22日

「倉敷ファンにはお待ちかね。期待通りの概ね良作。」蔵のある街 ひぐまさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 倉敷ファンにはお待ちかね。期待通りの概ね良作。

2025年10月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

癒される

 個人的に倉敷は好きな街だ。今年も2月と5月に足を運んだ。5月にJR倉敷駅でこの映画のPRイベントが行われており、以来鑑賞を楽しみにしていた。
 「えっ?倉敷の、あの美観地区で花火の撮影を?」と尋ねるとさすがにそれは無理だったらしく、映画でも本編終了後に字幕でタネは明かされる。挿入されていた本当の花火のシーンは、おそらく同じ倉敷市内でも玉島地区か高梁川河口付近で撮影されたものだろう。詳細を知る人がいたら教えていただきたい。
 映画の舞台となった美観地区は恐らくすべての倉敷市民の誇れる場所だろう。商店街を抜け倉敷公民館。左に進めば鶴形山、右に折れれば突き当りに大原美術館。このあたりはすっかり憶えてしまった。そこを主たる舞台として、平松監督はカメラを回した。

 映画の感想としては細部に少々いい加減な描写がある。が、やはり長年山田洋次組でもまれてきた平松恵美子監督(倉敷市出身)の演出とホンは、「あの日のオルガン」(2019年)もそうだったが一定の手ごたえは担保されている。日曜のお昼、横浜市内唯一の上映場所とあって、お客さんはご年配を主に9割方入っており、クライマックスでは鼻をすする音も聞こえてきた。
 惜しいと思える点は多々あった。が、最後の最後にこの映画の製作の主意が字幕で出た途端、いつ終わるか知れなかったコロナ禍の頃を思い「まぁいいか」と、拙い点はさっぱり忘れることとした。今回だけなw。
 逆に意外とヤルじゃん!と感心したのが同じくご当地組の高橋大輔である。普通にセリフもうまいし視線の移し方もわかっている。映画は初出演ゆえ、彼は今年の新人賞候補に入れてもいいと思う。主演女優の中島瑠菜も美人過ぎず意志の強さを感じさせる表情をしている。いい。ただ、彼女のようなタイプはなかなか大成できない。良い役を射止めて可能性を広げてほしい。

 ご当地映画という、映画ファン的には軽んじられがちな分野ではあるが、倉敷同様に、あの暗い時代に全国各地で打ちあがった花火に、明日の希望を見て、生きる力をもらった人々がいる。そうを思うと胸が熱くなる。僕はさすがに泣きはしなかったけれど(^^;;、この映画を待ち望んでいた数カ月は価値のある時間だったと胸を張れる。また倉敷に行ってみたい。なぜか水鉄には乗ったことがなかったので、今度こそ乗りたいと思っている。
 星は3.5でいいところ、倉敷が好きなので+0.5。倉敷市民の皆さん、お疲れさまでした。

ひぐまさん