「花火大会の開催に向けて奮闘する高校生の姿を描いたというだけでは無く、バラバラになった家族が花火大会を通じて再び絆を作り上げるまでを描いた家族再生のお話でもありました。秀作です。」蔵のある街 もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
花火大会の開催に向けて奮闘する高校生の姿を描いたというだけでは無く、バラバラになった家族が花火大会を通じて再び絆を作り上げるまでを描いた家族再生のお話でもありました。秀作です。
予告を観て気になった作品です。そして地域発作品です。
観るしかないと、上映されるのを待っておりました。
" 上映開始、まだかな? " ∂△∂/☆
2週間遅れでのスタート。地方ではよくあること。
ようやく観られる~とスケジュールを見たら、上映期間が
1週間オンリー。しかも一日に一枠のみ…。
きゃー。急げ急げ。
というわけで。こちらでの上映初日にさっそく観てきました。
(モタモタしているとあっと言う間に終わりそう…)
さて、内容。
主な登場人物は
美術部の女子高生。 白神紅子。美大進学希望だったが。
その兄きょんくん。 白神恭介。自閉スペクトラム。
高校のクラスメイトA。難波蒼。 紅子に気があるようだ。
高校のクラスメイトB。亀山祈一。地元の神社の息子。
他にも彼らの両親とか良い味出してました。
紅子の家は、兄妹と父の三人暮らし。
どうやら過去に両親の間で不和が発生したらしく、
母は一緒には暮らしていない。
父は…飲んだくれているようだ。
ぞのため、発達障害の兄の面倒をみているのが紅子。
部活の時間も早めに切り上げ、兄を迎えに行く毎日。
こんな状態では、美大進学なんてとても…。
美術部の顧問は進学を勧めてくれるのだが、閉塞感得漂う日々。
そんなある日、学校の帰り道。
風船の束を持った爺さんの後を兄が追っていき、行方不明に。
紅子や友人二人も探す中、高い木の上に登っているのがみつかった。
" バーン バーン "
母がまだいた頃、親子4人で見た花火を思い出したかのように
花火の打ち上がる音を、大きな声で叫んでいた。
紅子が制しても止めようとしない。何度も繰り返す。バーン。
見かねた蒼と祈一が、つい声をかけてしまう。
" 今度、本物の花火を上げるから "
" だから今日は、もう降りてきて "
それを聞き、降りてきた ” きょんくん ” 。
一安心する蒼と祈一だが、そんな二人に紅子は声を荒らげる。
" あんなことを口約束して! "
自閉スペクトラム症候群。
色々と出来ないことがある。その代わりに、
飛び抜けて優れた能力を発揮する分野もある。
たとえば、記憶力。
たとえば、執着心。
一度交わした約束は、忘れない。
約束した一方の当事者がすぐに忘れてしまっても
きょんくんは忘れない。その約束の実現がいつなのか
問われ続けるのは、いつも紅子だ。
きょんくんは問いかけてくる。" 花火はいつ?” と。
紅子の怒りと涙。
それを目にした蒼と祈一。(特に、紅子に気がある蒼のほう)
何とか花火の打ち上げを実現しなければ、と考え始めるのだが…。
◇
冒頭から少しの間は、現状の話と過去の出来事とが、余り上手には
リンクしていない感じがし、場面の展開もどこかチグハグな感じの
印象もあった気がします。・-・
花火の打ち上げを蒼が安請け合いし、紅子がそれを責める辺りから
色々な人物にも光が当たり、各人の行動の理由や想いなどが次第に
分かるようになってきた、そんな風に思えます。
謎の風船爺さん(橋爪功さん♡)の度重なる登場とか、ややファン
タジーな要素も感じられ、作品を柔らかくしていたように思いました。
あ。あと 元レディス(?)のママさんも良いです ・▽・♪
花火大会までのステップに、紅子の母と父との確執が氷解していく過程
を上手に編み込んで仕上がった作品と思います。
高校生がイベント開催をやりとげるお話 …なだけでは無く
一度バラバラになった家族が再び絆で結びつく過程を描いた
街と家族の、再生の物語でした。秀作です。
観て良かった。
(こっそり)
コロナ禍で開催された花火大会うんぬんは、あまりストーリーの骨格に
絡んでいなかったような気がします。 やや付け足した感じが…。
けれど2022年~2023年当時、まだまだコロナは流行中。
大々的なイベントなんて出来なかったですからねぇ。と、しみじみ。
◇あれこれ
■ヒロインの子
中島瑠菜さん。
初めて見たと思うのですがとても自然な演技に魅了されました。
どこにでもいそうな、悩みを抱えた女子高校生に見えました。
今後の活躍も楽しみです。
■謎の老人
誰かと思ったら橋爪功さん。
風船を持って町中を歩き回り、それにつられて行方不明になった兄が
高い木の上に登って大声を出して騒いでしまい、それを妹たちに発見
され…
良く考えたら、今回の騒動の原因を作ったのはこの爺さんなのでは。
ハメルンの笛吹か 的な雰囲気を醸しだしていましたが、最後の方では
「倉敷の街の守り神サマ」
的な存在だった気がしています。ファンタジック爺さん。
なんとかして、街を活気づけたい。そのための一歩目を、兄に踏み出させた。
という所なのでしょうか。
■しょんた?
蒼の母にそう声をかけられ、みるみる顔が青ざめていった市役所職員。
昔馴染みらしく、蒼ママは彼の過去をlc色と知ってそう…@▼@
で、しょんたの名前の由来はなんだろう と、余計なことを考察。
” しょん(べん)た(れ)のしょんた " ← うん、ありそう
小学校時に学校でおもらしでもしたのかな。(と、勝手な想像)
幼なじみは、有り難いです。
敵に回すと、恐ろしいデス。 合掌。
特に相手が元レディス(と思われマス)では…。
花火大会以降も、市民のために粉骨砕身で働いてくれる事でしょう。
◇最後に
倉敷の町並みは戦時中、空襲に遭わなかったそうです。
その代わりというか、近くの呉とか広島とかは散々な目にあって
しまった訳ですが、作中で出てきた以下のようなセリフが印象に
残りました。
「上空を素通りして行くB29は、他のどこかに爆弾落とす」
「ここが無傷だったと、ただ喜ぶ気持ちにはなれんかった」
うろ覚えですが、こんな感じのセリフ。
毎年のように、どこかが台風・洪水の被害(つい先日は竜巻)に
あっているニュースを見るにつけ、心が痛みます。
被害の救済活動などで助け合い、励まし合うのももちろん大事で
すが、この作品の花火打ち上げ活動のように、見る人の心を明るく
するための支援・助け合いというのも大切なことだと、改めて
思います。
人災はもちろんのこと、天災の起きない(少ない)世の中で
ありますように。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。

